自然にあるものを3Dプリンティングしてみる

Created Date: 2016-10-31/ updated date: 2018-03-13
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    Summary
    CTスキャナを使用して、自然に存在する複雑な構造のもののデータを取得し、そっくりそのまま3Dプリントすることに挑戦してみました。

    Materials

      Tools

        Blueprints

          Making

          • 私の父は、若い頃から昆虫標本を集めたり、大きなマツボックリを探しに行ったりするほど、自然が大好きです。最近は歳をとり、アクティブに行動することは少なくなってしまいましたが、庭にビオトーブを作ったり、いろいろな植物を植えて育てたりしています。

            そんな父親の姿が私に与えた影響は大きく、私の自然・生物好きは父親譲りで間違いありません。そのことが今大学で学んでいることにつながっています。

            父親への感謝の思いと、大学でデジタルファブリケーションの技術をしっかり学んでいるよという報告を含め、父親のために「自然物の模型」を3Dプリンタで作ることにしました。
            • まず、こちらの複雑な形をした木に挑戦してみることにしました。
          • 実物のものを3Dモデルにするには、SenseやNextEngineに代表される「3Dスキャナ」を用います。

            今回は3Dスキャナの中でも、簡単・早い・高精細なCTスキャナを用いて、3Dデータを取得することにしました。
            使用したCTスキャナは、X線産業コンピュータ断層撮影装置NAOMi-CTです。
            • dicomデータという多数の断層画像を、3Dスキャナで取得します。

              このdaicomデータを3Dモデルに変換する処理は、Roipaintというソフトウェアを用いました。
              (参考)https://fabble.cc/sakihokato/ctxxxxxxxxxxxx
            • Roipaintをつかって、stlファイルで保存。
              meshlabでできあがったデータをチェック。

              綺麗にスキャンすることができました。
          • 7時間ほどかかって完成。
            スケールを変えなかったため、瓜二つのものができあがりました。
            複雑な構造をしていましたが、その構造ごと綺麗に複製できました。

            実物と並べてみると、
            素材が異なる同じ形のものが隣同士で不思議な感じ。
            • 次に、トビケラという昆虫の巣を、3Dプリントで出力することにしました。
              トビケラは小さな水生の昆虫で、幼虫の頃に自分で小枝を集め、服を纏うように巣をつくります。
              水生版ミノムシといったところです。

              先ほどと同様に、
              CTスキャンを用いてdaicomデータを取得
              →RoiPaintで処理、stlデータに変換
              →スライスソフトでgcodeを作成

              トビケラの巣は構造が複雑で、
              RepetierHost、Slic3rでは上手くスライスできなかったため、Simplify3Dを使用しました。
              • 上手く3Dプリントできるように、いろいろな向きでモデルを置き、一番いいスライスの仕方を探してみました。

                結果、
                サポート材の付き方も考慮して、横向きにし半分切り、片方ずつ出力することにしました。

                見えにくいですが、灰色でサポート材が表示されています。
            • トビケラの巣は元々が小さいため、300%にスケールして出力してみました。
              ですが、それでもまだ小さすぎ、複雑な構造をしているために、ぐちゃぐちゃになってしまいました。

              30分ほど動かして、中断。
              • 15時間ほどしてまず片方完成!
                サポート材も上手くついているようです。

                こんなに複雑な形のものが、無事出力されたことに感動。
                机から生えてきているようです。
              • 半分にしたもう片方も、同じように800%の大きさで、出力しました。
                こちらも15時間ほどかかりました。
              • 枝一本一本が折れないように、慎重にサポート材を除去していきます。
                細かなところは超音波カッターを使用して取り除きました。

                途中経過が、いかのおつまみみたい。
            • 片方ずつ出力したものを、同じ向きにくっつけ合わせ、ついに完成!

              元々のトビケラの巣はとても小さく扱いづらいため、
              今回800%で複製したことにより、その構造がよくわかります。

              また、実物と違い全体が単色であり、色や模様の情報がないため、よりその構造に着目することができました。
            • 茨城県にある実家に、今回作ったふたつを持ち帰り、父にプレゼントしました。

              作っていることを何も知らせず、サプライズで渡したので驚いていました。

              お父さんは3Dプリンタ自体見たことがなく、3Dプリンタで作られたものも見るのが初めてだったため、とても関心していました。
              特にトビケラの巣には、「一本一本の枝の組み合わさり方がすごい」「トビケラがこんな芸術的な巣を作るなんて驚きだ」と興味津々でした。
              • CTスキャンを使用しての作業はわからないことも多く、RoiPaintの使用も初めてだったため、失敗の繰り返しでした。
                ですが、成功しないんじゃないかと思っても、あきらめずにいろいろな方法を試してみることで、結果的に作品も完成し、自分のスキルも向上しました。

                自然物をデータとして扱うことで、じっくりと向き合い、「この植物・昆虫はどういった生物なんだろう」「この構造はどうしてこんな形をしているのだろう」と疑問も生まれ、それについて考えたり調べたりすることで、それらについてとても深く理解することができました。

                父親に喜んでもらうこともできて、自分も多くを学ぶこともできて、取り組んでよかったです。


                • 今回の製作過程の中で理解した自然物の構造を、
                  今後はデザインに還元し、Bio-inspired Designとして応用していきたいです。
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