基本構造

卵のサイズと形状にバリエーションがあっても対応できるようにテーパーを設けた筒を内筒として採用し、卵を落とし込んで詰まった場所を卵の保持ポジションとするようにした。

最初の実験

最初のバージョンは底の内部がフラットだったので外筒が衝撃で割れてしまいエアクッションは機能しなかった。
内部を丸くデザインしたものは2メートル程度の落下で卵を割らなかった。

材料の変更

耐衝撃性を考慮してプリント材料をPolymaker社のPOLYPLUS PLAから同POLYMAX PLAに変更。

フランジ追加

縦に長いプロファイルの装置なので、着地後に横転する可能性が高い 。 この装置は側方からの衝撃を処理できるものではないため装置上端をぐるりと囲むショックアブソーバを設け、横転時に卵保持エリアが地面に接触しないようにした。
さらに、内筒を二重構造にデザイン、卵への接触をソフトにする試み。

フランジデザイン変更

積層方向による強度分布とデザインが両立しないためフランジデザインを変更。
洒落で「放物線」形状を盛り込んだデザインとした。

プリントアウト、実験、プリントアウト、実験

室内では2.7メートルをクリア。
勤務先のビルディングの立体駐車場で警備の目を盗んで実験、5メートルをクリア。
8メートルで2回続けて失敗。

失敗分析

8メートル実験では内筒に卵がはまり込んで先端部は無事に見えるのに後端が破損する様が観察された。
めり込んで押し潰れているいるのならコンセプトのエアクッションではなく卵と内筒が押し合う空気バネという事になる。
それでも先端部が無事なのは、卵の中身の運動エネルギーで先端部が破裂するのを圧縮空気が拮抗して防いだと考えていいのではないか。

クリアランス調整、襞追加

内外筒の間のクリアランスを狭くして空気バネの効果を強くしてみる。
内筒内側に襞を設けてエアクッション噴出のきっかけとすべくモデリング。

襞、仕様変更

プリント中の観察で、襞の凹凸の凹部が薄くなって強度が低下する恐れがあったためデザインを変更、二重構造壁の内部側にも内筒内側とシンクロした凹凸を設けて蛇腹となるようにモデリング。
ソフトな接触というコンセプトに蛇腹の伸縮が加味されると期待される。

プリント失敗、だが

二回続けて同じ場所でプリントに失敗。
内壁の蛇腹をプリントするのにフィラメントのリトラクト動作が小刻みにおこなわれるためにフィーダーホイールでフィラメントが削られて脱調をまねくらしい。

内筒内壁のソフト化にはこちらの方が都合がいい事に思い至る。高さで足りないのは2mm程度でありクリティカルではない。

このまま最終実験をむかえることとする。

締め切り前日の実験 8m

木場公園の木場公園大橋が、途中の階段のしつらえなど実験に適しているとGoogleストリートビューであたりをつけて日曜に実験。
新しいプリントでの5mテスト成功をふまえ、8mの成功を撮影。

動画はすべて鼻息が荒い

ガラケーに取り付けるマウスピースを3Dプリントして、口で咥えて撮影しているから。
(両手が使えるFPS視点にするため)
恥ずかしいので音量は絞っていただきたい。

締め切り前日の実験 10m

10mでも卵は割れなかった。

締め切り前日の実験 10m 卵の取出し失敗

10mの落下によって割れなかった卵だが、内筒内壁にめり込んで外れなくなってしまった。

プリント失敗によって下側の支えがなくなった内筒内壁は卵より上のところでクラックが入っていた。

クラックを拡げて内筒内壁を分離して取り出し、ニッパーで内筒内壁を壊していったところ、ニッパーで卵にダメージを与えてしまった。

次の機会があれば、回転ヤスリや超音波カッターもしくは半田ごてを使って除去する心づもり。

2016年本戦

大会の運営に作品を送付して投下を依頼するにあたって取り扱い説明を作成
https://fabble.cc/101110101010/instructionxforxreacushionx

本戦には参加できなかったが13mの記録となり優秀賞、部門横断の最優秀賞にも選定いただく

ファブ3Dコンテスト2017年参加

ものづくりのコンテストなので昨年と同じデザインというわけにいかない
改良の余地を検討

2017年の他の参加者のFabbleドキュメントを見ると空気抵抗で減速するコンセプトのもので10m越えしているものが多い
しかしReacushionの外筒にフィンの追加をおこなうとせっかく伸ばして投下した装置を落下中に縮めてしまう恐れがある
内筒にフィンを追加すると地面に衝突した時に要求される高速の縮退動作を阻害する恐れがある
両方に中途半端なフィンを追加するデコレーションでお茶を濁すのは本意ではない
フィンの追加は諦めることとした

改良試作

さらなる高みを目指すにあたって、外筒の地面衝突時破損を避けるための改良をおこなうこととした

ゴムの質感をもつRecreus社のFilaFlexフィラメントでダンパーを作成、外筒下端もはめ込み式のデザインに変更

外筒に属していたフックを下向きかつ内筒に属するようにして外筒上端周囲にフックが引っかかるように設計変更

試作品の不都合


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投下試験をしないまでもダンパーの反射が強すぎることが予想される仕上がり
まるでスーパボール

外筒の地面反射は加速した内筒と卵の質量で抑圧されるぐらいのイメージだったが、昨年の本戦動画を見ると思ったより地面から跳ね上がっている
この傾向を助長するのは避けたいところ

ダンパーの肉厚を変更するなどしたが思わしくない

ダンパー形状変更

先端が吸盤になったダーツが思い浮かぶ

凹部の空気が抜けるまでショックアブソーバーとなり、次に凹部に空気が流入するまで反射を抑制する作用が期待できないだろうか
地面のテクスチャーが多少荒くても空気の粘性が取り沙汰されるような短い瞬間の話であれば有効な構造と言えるのではないか

投下実験


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2m程度の試験では効果が立証されたのでかろうじて機会を得た実験環境(奇しくも16.5m)で投下実験を実施

結果は2回の失敗であった

失敗分析

内筒内壁の破損もしくは破断が発生

2016年の10mでの装置破損状況を踏まえると、ストロークが足りないことを表している

内筒がスライドアウトしているが、このセッションでは内筒が外筒から分離して1〜2mの位置に落ちた
フックにも破損が見られる

縮退状態では内筒内壁がこれだけスライドアウトする空間がないことから、内筒が縮退する前に内筒の破断に続く卵の破損が発生していると考えられる
その後も縮退せず逆方向の伸長方向に内筒が動きフックを破壊して外筒から飛び出している

縮退動作を阻害しているのは外筒の(吸盤で抑制された)地面反射ストロークが装置のキンクを招いているのではないかと想像

別の方法

吸盤ダンパーの追加による質量増大や力学的振る舞いのカオス化は望ましくない
ゴム状材料の弾力は有効利用しつつ反発力をキャンセルする方法を模索

メカニカルペンシルの芯の保持機構が思い浮かぶ

スプリングは保持爪を介して芯を保持しているが、芯が無理に動いても芯のストローク方向の反発作用はない

外筒にスリットつきスリーブを追加してラバーバンドで圧力を加えればゴム状材料の弾力でスリーブのスライドにブレーキがかかり、かつブレーキの作用するベクトルへの反発はない

しかし、強い弾性バンドのかかった場所が変形して内筒外筒のスライドを阻害する恐れがあるのでスリーブのスリット部分を弾性材料で締めるように作用させる構造をデザイン

プロジェクタイル製作

失敗分析の知見から、内筒外筒のストロークをプラス1センチ追加

ブレーキスリーブの追加によりフックの取り付け場所がなくなった
外筒上端内壁にフックを配置して着脱のためのスプリング機能のスリットを付与
内筒外壁のフックを避けるオフセット部にフックに接触しないリブ構造を付与

リブ構造は外筒内壁への接触抵抗を減ずる効果があると考えられる
空気の粘性がガスケットになっていた(リニアエアベアリングとでもいうか)かもしれない部分については目をつぶるしかない

投下試験のチャンスなし

このまま本戦を迎えることに

新規追加のブレーキスリーブはパフォーマンスが不明
使用するかしないかは現場で判断するものとする