発案


これまで出たアイデア

・コードを束ねるための自助具
・ネクタイを片手で結ぶことができる自助具
・杖を立てるための自助具
・ファスナーを操作しやすくするための自助具

→ 「ファスナーを操作しやすくするための自助具」に決定
楽に ”ファスナーを操作するための自助具" は開発されておらず、ADL自立のためにも必要な動作となる

発案理由

片麻痺で前開きの服を利用する方は多いが、片手でファスナーをはめ、上げることはとても難しい作業である。ファスナーをはめる際に歯で噛んではめる方や、上げる際に服ごと引っ張ってしまい時間がかかってしまう方を見て、どちらの作業も片手で行いやすくなる自助具を発案したいと考えた。

先行事例


片手でファスナーを閉める

57秒~
道具を使い、ファスナーをはめる方法

1分38秒~
ファスナーを引き上げるコツ


問題点
ファスナーをはめる際に使用する道具のクリップが硬く、開きにくい
ファスナーを引き上げる際、服が一緒に上がってきてしまう
ファスナーを引き上げるために複雑な指の動きを要する

対象者

・片麻痺の方

・頚損C8レベル以下の方
 →ファスナーをつまむことができるくらいの手指の巧緻性がある方

デザイン案


デザイン案①

使用方法:
フックをズボンのベルト通しにかけ、クリップの部分で前開き服のファスナーが付いている方を挟む

問題点:
ベルト通しの無いズボン、スカートで使用することができない
服とベルト通しの距離が長い場合、フックがベルト通しに届かない可能性がある
ファスナーを上げるときに服ごと引っ張ってしまう対策ができない可能性がある

デザイン案②

デザイン案①のクリップの部分とフックの部分を分ける

使用方法:
フックをズボンのベルト通しにかけ、クリップの部分で前開き服のファスナーが付いている方を挟む

問題点:
ベルト通しの無いズボン、スカートで使用することができない
ファスナーを上げるときに服ごと引っ張ってしまう対策ができない可能性がある

デザイン案③

非麻痺側の大腿部に巻くベルトを作る

使用方法:
ベルトにはデザイン案①のフックを引っかけるリングのようなものを取り付ける
デザイン案①のフックを引っかけ、服にクリップを挟み使用する

改善点:
スカートの場合使用できない
工程が多い

モデリング(クリップ部分)


モデリング案①

洗濯バサミの形を模してモデリングした
クリップの先に磁石を付け、服を挟めるように考えた
丸い穴は糸を通すために開けた

モデリング案②

洗濯バサミの形でなくとも服を挟めるためV字に変更した
モデリング案①と同様にクリップの先に磁石を付けて服を挟めるようにした
丸い穴は糸を通すためのもの

モデリング案③

モデリング案①②ではクリップの先に磁石を1つしか付けられず服を挟むには磁石の強度が弱かったため、クリップの先に磁石を2つつけられるように変更した
モデリング案①②と同様にクリップの先の方に磁石を張り付けることで、服を挟むことができる構造を考えた
丸い穴は糸を通すためのもの

モデリング(フック部分)


モデリング案①

フックが大きすぎると、ベルト通しに引っかけづらいのではないかと考え、小さいサイズでモデリングした
フックの先を丸くすることで、ベルト通しに引っかかりやすくなるよう工夫した

問題点:
プリントしてみると小さすぎたため、ベルト通しに引っかかってもすぐに取れてしまった

改善点:
サイズを大きくし、厚さを増す


モデリング案②

サイズを大きくし、厚くモデリングした
ひもを通すための丸い穴も大きく作成した

問題点:
プリントした後、サポートをはがす際に穴の部分が裂けてしまった

改善点:
穴をもう少し小さくし、位置を下げる

モデリング③

モデリング①と②の改善点を踏まえ、モデリングした

プリント(クリップ部分)


モデリング①のプリント

設定
・レイヤー高さ:0.4mm
・インフィル層の厚さ:0.4mm

素材:TPU

モデリング②のプリント

設定
・レイヤー高さ:0.4mm
・インフィル層の厚さ:0.4mm

素材:TPU

モデリング③のプリント

設定
・レイヤー高さ:0.4mm
・インフィル層の厚さ:0.4mm

素材:TPU

プリント(フック部分)


モデリング①のプリント

素材:PLA

モデリング②のプリント

素材:PLA

モデリング③のプリント

素材:PLA

完成した物


使用方法

①フックをベルト通しに引っかける
②クリップを服に挟む
③ファスナー操作をする

使用した結果

・紐の長さは服の種類によって調節が必要となる
・ベルト通しにしっかりとフックが引っかかり固定された
・クリップをはめる作業は片手で十分可能
・ファスナーをはめる作業は立位でも座位でも片手で可能
・クリップの止まりが甘く、服が少し引っ張られると固定が外れそうになってしまう
・ファスナーを上げようとすると服が一緒に動いてしまう

使用してみた反省

・紐の長さの調整が1人で片手で行うのが難しい
・クリップの止まりが甘く、引っ張る際の固定が不十分
・ファスナーを上げる際、服が動いてしまい上手くあげることができなかった

反省を生かしたモデリング


クリップについて

改善点:
クリップの先を分け、間にファスナーの部分が入る設計にした
→ファスナー部分の片側だけでなく、両側をクリップで固定できることで、ファスナーを上げやすくすることができると考えた