「片手で縛れる髪留め」
・現状と問題点
片手が不自由な人は手間がかからないように髪の毛を短くすることがある
片手で髪を束ねるための汎用性の高い自助具は少ない
布やゴムなどは劣化しやすく、修理を頻繁にする必要がある
・目的
①片手で髪の毛が縛れるようにする
②他のヘアアクセサリーで上から装飾できるようにコンパクトでシンプルなデザインにする
③これまで開発されてきた片手で髪が縛れる髪留めである、くるみボタンや布などの素材を変更することで耐久性をあげる
・ターゲット
片麻痺の方、呼吸器疾患があり両手動作を控える必要がある方、片側の肩関節挙上が困難な方
先行事例〈利点〉
○中柗貴子他.「片手用髪留め具の開発」.大阪河崎リハビリテーション大学紀要 第13巻. 2019. p.46-54.
片手用髪留め具で髪を束ねると緩くならず、髪の毛が長くなり量が増えてもゴムの長さを調整すれば束ねられ、10秒以内で髪を束ねることが可能。材料は百均で購入できる安価なもので持ち運びも可能である。被験者は片手用髪留め具で髪をたばねた後にシュシュを巻いていた様子から、片手用髪留め具をシンプルなデザインにしてヘアアクセサリーなどで装飾することで、おしゃれを楽しむことができる可能性があり、他の道具と併用することでヘアアレンジの幅も広がると推測される。
先行事例〈問題点〉
片手で髪を縛るのに練習量が必要。片手用髪留め具を4年間使用してもらう中で、何度か改良を重ねたが、長期間の使用によりゴムやスナップボタンの劣化、パーツを接続している糸の劣化、布部分の汚れ、指先装着部の拡張などの課題が発生した。誰もが作成やメンテナンスができるように、材料はより強度が高く、安価で簡単に入手できるものにし、劣化する材料の簡単な交換方法の開発や劣化しにくい材料への変更が必要。
アイデアの提案
・3Dプリンターでつくることで強度があがり、修理の必要性もあまりなくなる
・他のヘアアクセサリーで装飾できるように小さくてシンプルなデザイン
【案1】
ボタン部分は3Dプリンターでゴムは劣化しても取り替えやすいように市販のものを使用してつくる。
【案2】
ゴム部分を無くし、ヘアクリップの造形を参考に3Dプリンターで作成する。
片手で髪をまとめながらクリップを閉じることができるように工夫する必要がある。
⇒バナナクリップをとめるための先端の捻れた構造を3Dプリンターで再現するのが難しい
アイデア概要
作成前のスケッチ
試作品1
〈使用方法〉右利き、左片麻痺と仮定
1.長方形部分にあるくぼみにゴムの両サイドを二重にして入れ、端をフックに引っ掛ける(片手でゴムをフックに掛ける動作は困難なため、事前に誰かに準備してもらう必要がある)
2.髪を片側に寄せ集め、母指と示指を自助具の穴に通して持つ
3.髪の毛を母指で下から、示指~小指で上から片手で掴むようにして、自助具の長方形の側面を合わせて固定する
※今回は側面に磁石をテープで固定した
利点
・TPU素材を使用することで先行事例の布やくるみボタンに比べ耐久性は上がったと考えられた。
・動作の練習が必要ではあるが、片手で髪を留める動作自体は可能であった。
改善点
・動作の際に指を入れるところが緩く、回ってしまい磁石をつける面が合わずうまく縛れない
⇒指を入れるところをきつくする
・磁石を付ける部分がない
⇒ピッタリサイズの磁石を入れるスペースをつくる(磁石の厚さは2mmほど)
・ゴムを通す溝が浅く、ゴムを伸ばすと二重にしたゴムが1本抜ける
⇒くぼみを深くしてゴムが抜けにくくする
・髪をまとめる際に、親指に装着した自助具の角が首にあたり、擦れて痛みが出る
⇒自助具の角に丸みを出し、傷つけないようにする
試作品2
〈改善結果〉
角を丸くしたことで肌を傷つけることなく使用できるようになった
磁石を入れるスペースを作ったことで髪を縛れるようになったが、接着力が弱くうまく止めにくい
ゴムを抜けにくくするために溝を深くしたがあまり改善しなかった
指を入れる部分が回転してしまうため、指のサイズにフィットするように装着部分を調整したが、あまり改善が見られなかった
〈改善したところ〉 ・角を丸くした ・磁石を入れるスペースをつくった ・紐を通す溝を深くした ・それぞれの指のサイズにフィットするように調整した
更なる改善点
・指を入れるところが滑って回ってしまう ⇒滑り止めをつける
・ゴムが溝から抜けてしまう ⇒返しをつける
・磁石が弱く止めにくい⇒もっと強い磁石にする、マジックテープなど他の素材も検討する
まとめ
まとめ①
髪を縛ることを諦めて髪を短くしてしまう人がおり、これまでにも片手で髪が縛れる自助具の開発が多数あることから、片手で髪が縛れる髪留めの需要は高いと感じた
まとめ②
作成した自助具を使用して片手で髪を縛る動作が難しく、何度も同じ動作を繰り返すことによって指に負担がかかってしまった。先行事例でもあったように練習量が必要とのことから、今回の作成期間では練習時間の確保が困難であり、そのことも片手で上手く縛ることが出来なかった原因として考えられる。
まとめ③
現時点で作成したものには改善点が多く納得のいくものを完成することが出来なかったが、3Dプリンターで作成可能な片手で髪が縛れる髪留めの開発はこれまでになかったため、これから開発が進められていくことを期待したい