はじめに


作成のきっかけ

雨の日、スーパーなどの入り口でいつも置かれているものがある。
使い捨ての傘袋だ。
あれは傘の雫によって店内の床が濡れるのを防ぐこと、 そしてお客様が濡れた傘に気を取られずに買い物ができるようにという、 日本が誇る“おもてなし”の心を感じられるサービスの一つだと言える。 これは世界にも認められており、傘袋を簡単に被せられる装置である“傘ポン”は、
外国に進出し、世界の博物館の入り口に置かれているらしい。
しかし、対に置かれているゴミ箱に、恐らく半刻も使われず捨てられたものを見てふと思ってしまうのだ。

ーー勿体無いと。

SDGs - 12 つくる責任、つかう責任

無駄な消費をしないこと、それをリフューズと言うらしい、 これを実践するべきだと考えた。
リフューズは、世に言う“3R”のリデュース、リユース、リサイクル、 この3つよりも効果的な行動であるとされており、 ものづくりにおいて最も目指すべき目標だと私は思う。

アイデアが生まれるまで


コンセプト

自分用の傘袋を作ろうと考えるまで、時間はかからなかった。
満員電車など、前から傘袋が配られていない場所で使用するため、 自分の傘袋が欲しいと思っていたからだ。
ただ、作ってから気がついたことだが、もうい世の中にあるらしい。 しかし、世の中に広まる事はないだろう、少なくとも、私は欲しいと思わなかった。
何かしら、使い易く、少し笑えるものを作れないだろうか?

具現化する


実際に使う

ベルトに付けるため、いちいちベルトを外さないといけないが、使用時の感覚は悪くない。 ただ、傘が少々入れにくいので入り口に補強も兼ねて輪っかを付けてみるのもいいかもしれない。

使ってみると、溜まった水を捨てる方法がかなり面倒臭い。 全ての水滴を出す事はとてもじゃないが出来ないだろう。 何かしら水を捨てる方法を考えるべきだと感じた。

牛乳パックで作られた鞘尻は、傘袋の寿命をかなり伸ばしている。 作った物がすぐ壊れては、資源を更に無駄にすることになる。

ものづくりにおいて、最も避けるべき事ではないだと私は思う。 これらの事から、製作の際は入り口の輪と鞘尻を3dプリンターで印刷することにした。

プロトタイプ

まず初めに、簡単な試作品を作った。
これはスーパーで配られていた傘袋を頂き、改造を行ったものだ。 これが私が使う最後の使い捨て傘袋になってほしい。
作成の手順は、まず補強のため入れ口部分にテープを巻き、 下分に牛乳パックで作成した“鞘尻のようななにか”を貼り付ける。 傘袋を手に持たなくていいように、ベルトを通せる輪を入り口に付けたテープに貼り付けて、完成だ。

本番作成

右の図をイメージに作成を行った。
長さはおよそ80cm、愛用の傘に合わせて作ることにした。
色は黒を主に白、灰色を添えて少し地味だが、制服に合うようにした。

モデリング

少しおしゃれに作ってみた。
”見た目“というのは侮れない。 どんなに中身が素晴らしくとも外見によって正しい評価がされない事は多い。 だから化粧は大事なのだ。
ちなみに積層型の3dプリンターを使っている。 いつか光造形の3dプリンターに触ってみたいものだ。
使用したモデリングツールは、maya、3dmax

裁縫

試作品でビニールだった部分は、防水加工された布に変える。
必要な型を取り、布を切る。 久しぶりの工作は、かなりしんどいものだった。
生地を二重にすることで内外面共に防水加工の面にすると共に頑丈さも確保できた。

製作

プロトタイプから得た着想を具体化した。
まずはベルトに簡単に取り付けられるよう、ボタンを用いて脱着可能にした。 かなり便利になったのではないだろうか。
次に、水を捨てる方法である。 プロトタイプでは完全接着した”鞘尻のような何か“だが、脱着可能にすることにより、排水をとても簡単に行うことができるようになった。 しかし、3Dプリンターで印刷したものは、水が垂れてしまうので、別で作る事になった。

作ったものを見て


全体の仕上がり

面白い作品ができたのではないだろうか。
使いやすく、少し面白い。
アイデアはとても気に入っている。
しかし、3Dプリンターの精度の調整や、網目が整っていないなど、
技術の拙さが見える作品となってしまった。
けれども、とても頑丈で長持ちする事は間違いないだろう。

振り返り

私が今回、最初に自分が言った目標の“使い易く少し笑えるもの”というのは、きっと果たせたのではないだろうか。
新しいものを作っても、使い辛かったり、印象に残らないものはきっと誰も手にとって貰えないだろう。
“アンブレラシース“是非ご覧あれ。

SDGs-12 解決に向けて

プラゴミを少しでも無くす事を考えて作ったこの作品だが、
ネットでこういった17の目標の解決手段を調べると、どうしても個人規模での解決は難しく、
国家が動かなければ何も変わらないようなものである、と書かれている。私もそう思う。
実はポリ袋の年間消費量は石油に換算すると、日本の消費している石油の0.2%にも満たない。しかも、それらの大半は外国から輸入したものであるため、ほとんど効果がないとのこと。
しかし、私がそう言った事実に気がつく事ができたのも、sdgsに意識を向ける事が出来たのも、今回のものづくりがきっかけである。
解決まではいかないが、素晴らしい経験が出来たと心から思う。