アイデア出し

FAB 3D CONTEST2019のテーマである、「ファブのあるまちづくり」を踏まえながら、町の課題を考えていたところ、思い浮かんだのが、ポイ捨ての多さであった。このまま大量のポイ捨てが続けられると、極端な話かもしれないが、まちが汚れ、居住するのに苦痛が伴う程になる可能性も否定できない。
そこで、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」に関連して、ポイ捨てを制限するような装置の開発ができないかと考えた。

アイデアを実現するために

このアイデアを実現するために、まずは、ポイ捨てされたごみを自動で集める装置を考えていた。
しかし、実際に作ろうとすると、ごみの位置を特定したり、ごみを集めてある一定の位置に集めるためのアームなどの収集機構を作成したりする必要があり、実現するにはハードルが高すぎると思われた。
そこで、ごみを集める機構は諦め、ポイ捨てを警告する装置を作ることとした。

設計

ポイ捨てしたことを検知し、また警告を発するためのシステムを設計した。
ポイ捨てを検知するシステムとして、MESHの人感タグと明るさタグを利用することにした。
MESHとは、小さな便利を形にできる電子ブロックで、パソコンと接続し、プログラムを組むことができる。今回は、明るさタグの、タグの前がもので塞がれているかを検知できる性質を利用することにした。
また、ポイ捨てをする人の検知用に、人感タグも利用することとした。
さらに、MESHを配置するための台も設計した。
地面に落ちたごみが検知できるよう、明るさタグは地面の高さに配置し、人感タグは、前を通る人を検知できるように、斜め上方向に配置できるような台とした。

Tinkercadでモデリング

Tinkercadを用いて、MESHの人感タグと明るさタグを配置するための台をモデリングした。
台の下のほうのくぼみに明るさタグを配置し、上のほうに人感タグを配置するようにした。

問題発生!

MESHを配置する用の台をモデリングしたが、人感タグを真横に配置すると、通る人を上手く検知できない可能性があることに気が付いた。
そこで、人感タグを、80°の角度で配置できるようにモデリングし直すことにした。

MESHのプログラミング

MESHのアプリを利用し、ごみ捨てが検知されたら警告を表示するシステムのプログラムを組んだ。
プログラムの仕組みは以下の通りである。
①人感タグと明るさタグが同時に検知されるまで待機
②人感タグでの検知がなくなっても、明るさタグが反応しているかの確認(ゴミが明るさタグに反応しているか)
③反応していた場合、「ポイ捨てされた」との警告を発する。

MESHタグのペアリングに苦戦

MESHは、タグをBluetoothでペアリングして使う。 今回利用するときも、タグの追加でペアリングをしたのだが、周囲で他の人が使っているタグが誤ってペアリングされるという事態が起きた。
また、実際に自分が利用したいタグが認識されないことも多くあり、ペアリングには非常に苦戦した。

再設計


再度モデリング

先程の問題点を踏まえて、モデリングをやり直した。
上部を80°に傾けるのが難しかった。特に、上部を傾けたときに下部できた隙間をきれいに埋める作業には苦戦した。

3Dプリンタで印刷

Tinkercadでのモデリングが終わり、ついに3Dプリンタでの印刷の段階まで来た。

Afinia Studioで3Dデータを読み込む

完成した3Dモデルのデータを、印刷用のソフト「Afinia Studio」で読み込んだ。
無事に、思い通りの形になっていたので、あとは印刷するのみである。
印刷の所要時間は、1.4時間と表示された。無事に最後まで印刷されてほしい…

印刷トラブル1ーノズルが詰まる

印刷を開始して、プリンタが動き始めたが、…ノズルから何も出ていない… どうやら、プリンタのノズルが詰まったようだ
仕方がないので、一旦印刷をやめて、メンテナンスをすることに。 Afinia Studioで、メンテナンス項目を開き、フィラメントを除去する「extrude」、 そして、再度フィラメントを挿入する「withdraw」を数回繰り返し、やっとノズルの詰まりが解消された。

印刷トラブル2-ノズルのオフセット設定

先ほどの作業で、無事にノズルの詰まりは解消されたが、どうも上手く印刷されていない。 原因を考えていたところ、思いついたのが、「ノズルのオフセット設定」だった。
しかし、設定の仕方が良くわからなかったので、とりあえず設定画面を開き、「AUTO」を選択。 ところが、「Nozzle temperature is too high」とのエラーが。 ノズルの温度が下がるまで待つ必要があった。

印刷トラブル3-台に上手くのらない

やっと印刷が始まったと思ったら、またトラブルが。 印刷中に印刷物の一部が台から外れ、ノズル部分に引っかかったのである。 印刷中止にはしたくなかったので、一時停止をして該当部分をニッパーで除去したが… 結果その部分が不安定になり、結局印刷を中止して、最初からやり直すことになった。

印刷中…

3つのトラブルを乗り越え、何とか大きな問題なく印刷できる状態になった。 少し、台から浮いている部分があるような気がするが、時間も迫っているので仕方がない。
あとは、エラーが出ないで、無事に印刷が終わるのを待つのみである。

印刷完了! しかし…

ついに印刷が完了した! しかし、実際にMESHを入れてみると、全然入らない… 寸法を測って作ったつもりだったが、余裕をもって設計しておくべきだった。
もう印刷し直す時間はなかったので、やむを得ず、上下の枠を切って、無理やりMESHを入れるように改造することにした。

機能の追加

これまでのシステムでは、不十分な点が多くあったので、機能を追加することとした。

警告の強化

これまで、ポイ捨て時の警告としては、通知のみを利用していた。
しかし、それだけでは警告力が弱いと思われたので、
「音声」「光」の2要素を新たに警告として利用することにした。
MESHのプログラムを組みなおし、ゴミを検知した後に、
「通知」「音声」「光」の3通りの方法で、警告を発するように改良した。

使ってみる

ここまでで、一通りの機能が完成したので、実際に使ってみた。
結果は…
  • パソコンとMESHタグとのペアリングに時間がかかる。
  • それぞれのタグのセンサーの検知範囲の都合上、誤動作が多い。
  • 警告が弱い

という、なんとも使いにくいシステムである。

感想・今後の課題

最後に、作品を作った感想と、今後の課題をまとめる。

甘かった見通し

今回の作品の反省点は、見通しが甘かったということである。 特に、MESHについては、すぐに使えるだろうと考えていたが、ペアリングに手間取るなどして、かなりの時間を費やした。 また、3Dプリンタでも、1つの印刷時間が1.4時間と長かったことに加えて、ノズルが詰まったり、オフセット設定を忘れたりなど、様々なトラブルに見舞われた。 さらに、設計自体も甘く、MESHが入らないという事態まで発生した。 そのため、最後には時間が無くなり、MESHが入るものをモデリング・印刷し直すことまではできなかった。

誤動作するセンサー

このシステムは、設計当初から、センサーが誤動作するということは想定していた。 そのため、MESHのタグを配置する角度を工夫したり、2つのセンサーを組み合わせたりして、誤動作を防ごうと慎重に設計したつもりだった。 しかしながら、実際に使用してみると、誤動作が多く、実際に検知するよりも誤動作のほうが多いのではないかと思う程であった。

意味のない警告

このシステムでは、ポイ捨てを検知すると、「音声」「光」「メッセージ」の3通りの方法で警告が与えられる。しかし、これらで警告を与えられても、ほとんど効果がないということが、実際に使ってみて改めて分かった。

今後の課題

今後の課題としては、まず、見通しをしっかりと立てるということがあげられる。 今回も、それなりには考えたつもりであったが、それでも締め切り間近になって、急ぐこととなった。 そこで、今後はしっかりと計画を練ったうえで物事に取り組みたいと思う。
それから、今回の作品についてだが、この作品ではほとんど意味がないことは、これまで述べてきたとおりである。 そこで、この作品をより意味のあるものにするために、今後は、冒頭にもあるように、ゴミ捨てまで自動でできるシステムを開発しようと考えている。 そうすれば、ポイ捨てをする人に警告を与えながら、ゴミ捨てまでできるというシステムができるのではないだろうか。