アイデア出し

レゴブロックに代表されるブロック玩具の特徴は、形状がある程度規格化されたピースを集合して新しい物品を作成する点にあり、ある程度の自由度と制約がある。
今回アイデア出しを行うにあたっては、知育玩具や作業療法用具としての有用性が見込めることはもちろん、特に発想の自由度を向上させるための一歩となりえるものを念頭に置いた。
本Block Chainは、ブロックという要素を、固定用の円環と形状を作る立方体とに分割し、立方体(Block)を円環(Chain)がつなぐというイメージのもと、考案したものである。

注記

「発想の自由度を向上させるための一歩」の意味合いとしては、シンプルな一体型のブロックという発想をやめ、Chain部とBlockの組み合わせをつくることでブロックができるという発想を導入することで、一からモノを作っている感を向上するということである。
現状、第一歩としてはシンプルな立方体状のBlock部のデザインだが、より複雑な形状へと発展させることもできると考えている。穴の多い複雑な形状になると、Chain部の設置位置など考える要素が増え、物を作っている感が向上すると考える。

アイデアスケッチ

もともと、Block Chainは6面に穴の開いた立方体を半円環状のChain部によってつなぎ合わせるようなイメージを考えていた。しかし、当然ながら半円環では組付ける際に干渉が発生することが予想されたため、円環を1/4にしたような形状によって、ほかのブロックとの固定部分およびChain部の立方体への確実な固定を考案した。

設計その1

アイデアスケッチをもとに、九州工業大学柴田研究室のAutodesk Inventor Professional 2018を用いて一辺20mm、穴径12mmのBlock部と、径12mmの円環を1/4にしたChain部を設計した。
ここで、2つの部材を組み合わせた際の部材同士の干渉がないようにし、また、しっかりと固定できるようにChain部がBlock部から突き出るように考慮した。
画像は初期設計時のBlock部およびChain部と組み合わせたブロックである。

制作その1

スマートライフケア共創工房の3DプリンタStratasys Objet500 を使用し、透明ゴムライクマテリアルであるAgilus30樹脂および硬質不透明マテリアルであるVeroCyanを材料として設計その1で作成した.stlファイルを印刷した。
この際、各マテリアルの配合設定は、Objet StudioにてShore 95とする。
印刷した結果Chain部の突起の長さが足りず、またBlock部の肉厚の問題でChain部と接触する面積が少なすぎた(画像の青丸部)ためにBlock Chainを結合した際に外れやすかった。
また、画像のブロックの赤丸部分が外れやすいという問題もあった。

注記

Shore95としてゴムライクマテリアルを混入することで、印刷物品にある程度の弾性をもたせて扱いやすくする。

設計その2

最初の試作の結果を考慮して、まずChain部の突起を2mm延長、Block部の肉厚を約2mm増加して接触面積を増やし、結合時のかみ合いを向上した。また突起の根元に高さ1mmの段を設けてChain部の抜けを防止した。
画像は再設計したBlock Chainである。

制作その2

スマートライフケア共創工房の3Dプリンタ、Stratasys Objet500を使用して、設計その2で作成した.stlファイルを印刷した。
熱の影響などによるゆがみが一部で発生したが、おおむね使用可能なものが仕上がった。
画像は印刷したBlock_Chainである。白い粉のようなものはサポート材である。
Block部の.stlファイル
Chain部の.stlファイル

結果

制作その2で作成したBlockおよびChainは、ある程度の結合時のかみ合わせ向上に成功した。
また、設けた段差によってChainの抜けやずれが防止された。これらの改善により、Block Chainを用いたオブジェの制作が可能になった。(画像は作成したロボット型の簡単なオブジェ)
Block部とChain部の分解と再結合はについては、ゴムライク素材の弾性変形のためにある程度容易ではあるが、熱変形でゆがみがあるものでは力が必要になる。

問題点

結果で述べた、分解再結合に力が必要になるという点を除いた問題点は、以下のようになる。
・Block Chain同士のかみあわせは、改善したとはいえ完全に固定できるほどのものではなく、外れやすい。
・本作はあくまでテストベッドであり形状にバリエーションがなく、作成できるオブジェが制限される。

まとめ

本プロジェクトにおいては、ブロックの要素を分割し、2種類のパーツに分けることによって発想の自由度、物をつくる楽しさを向上させ、知育玩具や巧緻運動の作業療法にも役立つ新しいブロックのシンプルな試作を提案した。
作成したブロックはある程度組み上げてオブジェを作ることが可能であり、多少の問題はあれど、今後の改良次第ではより複雑なオブジェを作成できるような発展が期待できるものであった。
知育玩具や作業療法用具としては、分解再結合に力が必要という点やBlock Chainを2個以上組んだ際に外れやすい点は問題であるが、設計の改善によって解消されると考えられる。