取り組みの概要と目的
大学に合格するための高校生活ではなく,
高校で何をしたのか・何ができるようになったのかを生徒に実感してもらえるような取り組みにしていきたい.
活動主体:普通科1年生
活動期間:夏休み(7月28日〜8月9日),2学期(9月11日〜10月17日)
時間帯:夏休み → 補習の1コマ,2学期 → 放課後17時〜18時30分
諸条件:スクールバスにて遠方から通学している生徒もおり,授業のある平日だけで3Dプリンタを活用した製作活動を行うことになりました.
ファブをテーマにした課外活動の目的は以下の4つになります.
① 課題発見力や課題解決力,発信力を養う.
普通科1,2年生全員がiPadを持っており,いつでもインターネットにつながることができます.この環境を利用して収集した情報に対して生徒が感じたことを形にできる場をつくりたいと考えました.
具体的にはグループワークを通じて考えたアイデアをまとめ,それを発表する活動をおこないました.
② アイデアをアウトプットする力を養う.
①で考えたアイデアを形にする手段としてファブ3Dコンテスト事務局から貸与していただいた3Dプリンタを活用しました.
ここでは以下の3つのことが必要だったため,苦戦しました.
1 設計をするためのパソコン(使用するソフトに対応するパソコンが学校内に存在しなかった‥)
2 設計するためのソフト(今回はAutodesk Fusion 360を使用)を使いこなすための期間
3 データ出力における,3Dプリンタの特性の把握
③ アウトプットの過程で,試行錯誤を繰り返す力を養う.
生徒が設計をする中で,そもそもどのように設計すればいいのか分からないという問題が発生しました.これを解決するために,連携しているファブ施設「ダイナミック・ラボ」のテンダー氏にご協力をいただきました.
④ 自ら取り組んだ活動を順序よくまとめる力を養う.
Fabbleを活用して,生徒に作品制作過程を記録させました.
本校においてもポートフォリオを活用した授業などを展開しており,生徒には自らおこなった活動を記録することの重要性は指導していく必要があります.
しかし今回は,Fabbleの活用について十分に指導することができませんでした.
課題発見力や課題解決力,発信力を養う
グループワークを通じてアイデアをかたちにして,
それを他の人たちにわかりやすく発表する時間を以下の時間で設定しました.
7/28 オリエンテーション
7/30 グループワーク @各教室
7/31 グループワーク @各教室
8/ 1 プレゼン発表Ⅰ @各教室
8/ 3 グループワーク @各教室
8/ 6 グループワーク @各教室
8/ 9プレゼン発表Ⅱ @視聴覚教室
オリエンテーション
この時間の目的やファブ3Dコンテストの概要,ツールとしての3Dプリンタの活用についてなどを説明しました.すでに3Dプリンタを使用して,作品を作成している3年生の生徒にも1年生へ意気込みを語ってもらいました.
まずはアイデアだ! グループワーク①
グループに分かれ,「こんなのあったらいいな」というテーマで話し合いをおこないました.iPadを活用して情報を収集して,その情報を通じた自らのアイデアをグループの仲間と共有させました.はじめは何を話せば良いのか?と迷っていた生徒も,情報を調べるうちにグループの仲間とアイデアを共有して意見交換をする姿勢が見られるようになっていきました.しかし,生徒の主体性に任せる部分が大きくなってしまいました.今後は意見交換の方法などを工夫する必要性があると感じました.
アイデアをある程度かたちにできたグループから,教員への簡単なプレゼンも実施しました.
発表会①
グループでまとまったアイデアをプレゼンテーションにまとめ,他のグループに対して発表しました.発表は1グループ3分で,発表後,質疑応答の時間を取りました.
もっと具体的にわかりやすく… グループワーク②
発表会①で,それぞれのグループがアイデアや発表方法にもっと工夫が必要だと感じたようでした.
それを踏まえて,再度グループワークを通して各グループに改善を求めました.
発表会②
改善した内容をまとめ,再度発表会を実施しました.
前回の発表会の内容よりも,アイデアの具体性や見せ方などを工夫していたようでした.
今回も発表した内容に対して,質疑応答をおこないました.その質疑応答を踏まえ,最終的な改善点や反省をFabbleにまとめさせました.
アイデアをアウトプットする力を養う
さあ,早速アイデアをかたちにしよう!ということで取り掛かりたかったのですが,課題が…
一つ目は,指導者不足です.初めての試みということで学校内に3Dプリンタや関連するソフトをまともに扱える教員がいない.そこで,すでに連携ファブ施設で3Dプリンタを使用して作品を制作していた3年生に協力をもらうことにしました.
二つ目は,設備不足です.3Dプリンタはファブ3Dコンテスト事務局の方から1台貸し出しをいただいておりましたが,ソフトを動かすパソコン(OSがWindows10であり,64ビットである)がない.そこで,教員所有のパソコンを2台,生徒所有のパソコンを2台を使用することになりました.
アイデアをかたちにするべく,ソフトで設計
すでに3Dプリンタを使用している生徒に,ソフトの使い方を教わりながらアイデアをかたちにすることに...
そのため,一度に指導できる生徒の数が限られることになりました.
今年度はファブ3Dコンテスト作品応募メンバーとして1年生2名に頑張ってもらいました.
この2名の取り組みが1年生全体に波及することを祈るばかりです.
何をどのように作るか…
グループワークのアイデアをもとに製作に移ろうとしましたが,理想と現実との間に大きな差があることに気づいてしまった.
音楽を学べ! テンダーさん来校①
生徒が製作の方向性を見失いつつあったため,本校との連携ファブ施設「ダイナミック・ラボ」よりテンダーさんに来校していただくことに…
ファブ3Dコンテストの高校生部門のテーマとなっている「音楽」について,音楽の多様性やなぜ音が鳴るのか?などアドバイスを踏まえて教えていただきました.
音楽は,我々が考えているよりももっと自由なものであると教えられた生徒たちは,再度自分の作品を見つめなおすことに.
アウトプットの過程で,試行錯誤を繰り返す力を養う
テンダーさんからのアドバイスを踏まえ,再度作品を作り直します.
まずは音を鳴らそう
音楽は考えているよりも簡単に作ることができる.
まずは音が鳴るしくみを調べ,音が鳴るように設計を繰り返しました.
それでも音が鳴らない テンダーさん来校②
いろいろ調べて設計するも,音が鳴らない…
再度,テンダーさんに来校していただき,今度は具体的な楽器の作り方のアドバイスをもらいました.
毎回プリントアウトして音が鳴るのを試すのではなく,プラスチックの加工しやすいという特性を生かし,自分で穴を開けて調整を行う方法も学びました.
試作,試作,試作…
ファブ3Dコンテストの応募締め切りまで時間がない…
時間をつくって土日も活動.
お,音が鳴った…
試行錯誤の末,やっと音が鳴りました!
MESHも活用
もう一人はMESHを活用して,IoT×FABをテーマに作品を作成
自ら取り組んだ活動を順序よくまとめる力を養う
制作も終盤.
作品の作成過程をFabbleにまとめるために,これまでの写真や動画を整理しました.
3Dプリンタの活用はまだまだこれから
ファブ3Dコンテストが終わっても,3Dプリンタを活用していきたいと考えています.
今回の反省を踏まえて,明日からの改善点を考えました.
① 指導者不足の解消
今回の取り組みで教員側も学ぶ機会を多くいただきました.教員も新たな分野に関して,学んでいかなければならないといけないと思います.
授業や課外活動での活用を目指して,定期的に職員が集まる場を作りたいと思います.
② 時間の確保
時間が必要でした.
やることが全て初めてのことばかり.この経験を通じて生徒も教員も多くのことを学びました.
現在の時間割の中には課題研究等の時間が設けられていないため,これから時間をどのように確保していくかが鍵になると思います.
③ 取り組みのプロジェクト化
1年を通じた活動の体系化が必要であると感じました.
たとえば,アイデアを出すためにも,生徒は世界で起こっていることや求められていること,どのような技術があるのかを知る必要があります.
また,今回のように楽器はなぜ音が出るのか?という基本的なことについて知らなければ音楽をテーマにした製作はできません.
これらを解決するためには,生徒一人一人の興味を徹底的につき詰める活動の時間を設ける必要があります.
まずは教員がチームを組んで,事例研究をおこなっていきたいと思います.
さいごに
ファブ3Dコンテストへの取り組みに関して,
事務局の方々には機材の貸し出しをいただき,
連携ファブ施設のテンダーさんには生徒への指導をいただきました.
この場を借りて,お礼を申し上げます.
今後も,このような取り組みを継続・発展するべく,我々教員も試行錯誤を繰り返していきたいと思います.
おまけ
3Dプリンタを設置するにあたって
他校の先生が見学に
3Dプリンタはまだまだ学校現場にとっては目新しいもの.
近隣の学校の先生が放課後の時間帯に見学に来ました.
中学生を巻き込め!!
ファブを近隣の中学生にも広めたい!という思いから,3Dプリンタの講習会を企画しました.
全3回の講習会を実施する予定で,10月13日に1回目を実施.
はじめて見る3Dプリンタと設計ソフトにも関わらず,基本操作をマスターしました.
今後も周辺の子どもたちを巻き込んでいきたいと思います.