構想

前作のMagicTreeLightでは機械的な接触点でカラーチェンジを実現したが、このプロダクトの欠点として、コネクタの位置にしかブロックを置けないという点が上げられう。
つまり、予め決められた場所でないと電力を供給できない。
それらの欠点を補う為に、今回はスマホの無線受電にも使われる磁気送電を行うことで、ある空間内であればどこでも電力を送電できるシステムを構築して、新たなプロダクトを制作しようと考えた。

磁気送電技術

ワイヤレスで電力を送電する技術にはいくつかあるが、
スマホの無線給電に使われるのは、いわゆる電磁誘導方式である。
電磁誘導方式は、大きな電力を送電するのに優れており送電効率的に最も実用的な方法である。しかし、電磁誘導方式は送電側と受電側のコイルのズレが送電効率に大きく影響し、数センチでもずれると途端に送電量が減少してしまう。

そこで今回は磁気共鳴方式の磁気送電を行う。
これはコイルとコンデンサの組み合わせで、共振周波数が一致したときの共振現象を利用して長距離の送電を可能にした送電方法である。
これにより約10cm程離れていても送電可能になる。

磁気共鳴伝送の実験

発振回路(マイコン)

磁気共鳴伝送を実現するために高周波の矩形波(PWM)を出力できる必要がある。
今回は共振周波数が確定していないので、プログラムで簡単に可変できるようにマイコンを使ってPWMを出力する。
使用するマイコンはLPC1768を利用した。
mbed開発環境でオンラインでコーディングできるのが魅力だ。

最終スペック

共振周波数 160kH

コンデンサ   :0.01uF
コイル   :100uH

Driver

マイコンから発振される矩形波から、FETを使ったドライバー回路を組む。

FETのドライブにはIR2302PBFというゲートドライバを用いた。主にモーター制御に使われるドライバーだが、今回は片側で利用する。

また、マイコンとドライバー部分でアイソレーションするのが好ましいので、TLP250を用いて絶縁処理を行っている。

コイル制作

オヤイデ電気で購入できるリッツ線 30/0.08 10mボビン巻きをα巻してコイルを自作する
ゆっくり時間をかけて丁寧に巻いたつもりだがなかなか綺麗には巻けなかった。

受電側回路

磁気共鳴送電では
コイルとコンデンサの容量によって決まる共振周波数を送電側と受電側で合わせることで、共振現象を利用して送電する。

今回は送電側も受電側も同じ容量のコイルとコンデンサを利用する。

受電側部品
コイル   :インダクタ
コンデンサ :絶縁ラジアルリード型積層セラミックコンデンサー
LED    :ELEGOO 3mmと5mm 透明LEDセット
これらを並列に接続する。(スペース的な問題で空中配線)

送電実験

色々と調整した結果
実用的なレベルで送電できるようになった。
伝送距離は最長で100mmほど

伝送回路 コイル制作


回路制作

実験でブレッドボード上で制作した回路をユニバーサル基板上で実装する。
また、熱処理を考えてFETにヒートシンクも取り付けてある。

コイル制作

100uHの直径280mmの巨大コイルを制作する

計算上では直径280mmで10回巻くと100uH近くになる

外装


Panel

磁気送電は送電側のコイルと受電側コイルは平行状態にないと送電されない。なので、3次元空間に送電する場合は、3つの送電コイルが必要となる。

さらに、コイルは平面的なのでなるべく平面で構成されてたオブジェクトにしたいと思う。
今回は3枚のパネルを単純につなぎ合わせて、halfcubeにする。

Base

3平面で構成したパネルを立体的に展示したいので、土台が必要である。
今回は以下のようなbaseを制作した。

加工、組み立て

PanelとBaseをMDFからレーザー加工機で切り出して組み立てた。

Ballの制作

LEDをどのようなBodyに収めるのかはかなり重要な点ある。
やはり、おもちゃ感は重要なので今回も3Dプリンタを利用して球形のBodyを造形した

3Dプリンタによる球形の出力

中が空洞のものは基本的に3Dプリンタでは出力できない
よって、球を半分に分けて出力し
LEDを仕込み
最後に接着剤で合体させる方法をとった

Point

LEDはRGBの基本の3色で構成しているが、
少しこだわると秋月電子で手に入るレベルの"パステルカラーLED"というも使うと色合いがまた良くなる。