展鰭固定(ホルマリン固定)

綺麗な標本にするために、魚の鰭(ヒレ)を開いた状態で固めます。ホルマリンに24時間漬けると柔らかかったお魚も硬くなります。
固定(こてい)とは、生物試料を自己分解や腐敗による劣化から保護するための化学処理をいいます。
固定の目的は大きく分けて3つ
1) 生体分子(タンパク質分解酵素など)を不活性化して、勝手に腐り始めたりしないようにすること
2) 外からはいってくる微生物を防いで腐らないようにすること
3) 体がぼろぼろにならないようにすること

魚を開く

発泡スチロールの上にサンプルの魚を乗せ、虫ピンを使って鰭(ヒレ)を開いた状態にする。
この時、開腹して臓器を取り出しても良い。臓器を残すと、標本にした時に臓器もそのまま残ります。
メダカ程の大きさの場合はピンでヒレを傷つけてしまう可能性があるのでピンは使わずに開きます.
この時に鱗を剥ぐと、一緒にヒレを傷つける可能性があるので、あとで剥ぐと良い。

外側を固める

筆を使用して原液ホルマリンを塗布する。5分~10分放置。 

中身も固める

固定されたサンプルを10%濃度ホルマリンに投入し、24時間浸漬する。
10%濃度ホルマリンはホルマリン原液10mlに対し精製水90mlをピペットとビーカーを用いて作成した.
ziplock等のタッパーでも全工程可能である.

一日程漬ける

24時間ホルマリンにサンプルを漬ける.
漬けた後は若干体全体が白っぽくなる.

ホルマリン保存・ホルマリンの廃液処理

ホルマリンは繰り返し使えるので、実験の後も広口瓶などに保存しておく。ホルマリンは、毒劇法により劇物に指定されており、そのままでは廃棄できない。パイプユニッシュ(または水酸化ナトリウム水溶液)などでホルマリンのpHをアルカリ性にし、過酸化水素水を加えて酸化分解し、水で希釈した後、廃棄する方法がある。

脱水

これは、原料内にある水分が、このあとの薬剤の浸透の妨げになってしまうのを防ぐ為に行う。
非常に単純な作業ではあるが、結構重要なプロセスである。

1回目のエタノール脱水

50%エタノールにサンプルを投入。24時間浸漬する。(2日目)
50mlエタノールに50ml精製水を加えた.

2回目のエタノール脱水

95%エタノールにサンプルを投入。24時間浸漬する。(3日目)
95mlエタノールに5mlの精製水を加えた.

3回目のエタノール脱水

100%エタノールにサンプルを投入。24時間浸漬する。(4日目)
100mlのエタノールを使用した.

軟骨染色

軟骨を青色に染める。アルシアンブルー液(pH2.5)という染料を用いて軟骨染色をおこなう。

染色液の作成

95%エタノールと酢酸を混合したものに、アルシアンブルーを溶かした溶液を作る。

サンプルの投入

これにサンプルを投入し、24時間浸漬する。

中和処理

次の反応の為に,酸性の染色液を中和させる.

四ホウ酸ナトリウム水溶液の生成

四ホウ酸ナトリウムをビーカーに多めにいれて、精製水を加える。ガラス棒でひたすらかき混ぜて、底に溶け残った結晶が沈んだものの上澄みが、飽和四ホウ酸ナトリウム水溶液となる。飽和四ホウ酸ナトリウム水溶液を作成し,サンプルを投入する.

タンパク質分解

サンプルのタンパク質を分解する事で肉などを溶かし,完成品の透明度を高める.

水酸化ナトリウム水溶液の生成

10%パイプユニッシュ水溶液を作成する.
パイプユニッシュ内には1.8%,水酸化ナトリウムが含まれている.
10mlのパイプユニッシュと90mlの精製水で生成した.

経過観察

30分程で徐々にアルシアンブルーの青色染色が抜けていく.
その後一時間程でサンプルの肉が溶けていく.
ヒレも溶けていくので注意して欲しい.

メダカ消失事件

参考資料を元に、パイプユニッシュ100%でタンパク質分解を行った所、2時間でメダカが溶けて消失してしまうという悲しい事件がありました。
サンプル個体が小さすぎたことと、パイプユニッシュの濃度が強かったことが要因と思われます。

ポリデントによるタンパク質分解

ポリデントに入っている酵素を使ってタンパク質分解ができる。
150ml40度のお湯にポリデントを一錠、サンプルを投入し、一日経過ごとに溶液を取り替える。
実験では1/20から13日間繰り返した後、3/29までしばらく放置した。
写真の通り、ヒレは縮れてしまったが、内蔵、筋肉の部分に関してはパイプユニッシュよりも透明にすることができた。

硬骨染色

アリザリンレッドを用いて硬骨を染色する.

染色液の作成

精製水100mlアリザリンレッド薬さじ一杯程度,重曹薬さじ2杯を混ぜる.
重曹は水溶液をアルカリ性にする為に用いる.

サンプルの投入

サンプルを投入する.
タンパク質分解によってサンプルが脆くなっているので慎重に行う.
一日程経過すると全体が赤く染まるのが確認できる.
メダカ等の小型の場合は半日程度で良い.

透明化

グリセリンに漬けて透明化させる.
そのまま鑑賞瓶に入れて完成.

グリセリン溶液の作成

精製水とグリセリンを混ぜて30%グリセリン水溶液を作成する.
30mlのグリセリンと70mlの精製水で生成した.

サンプルの投入

かなり脆いので,ある程度溶液を減らした後,薬さじ等ですくったほうが良い.
一日程置く.

50%グリセリン溶液の作成

精製水とグリセリンで50%グリセリンを作成.
サンプルを投入し,1日程待つ.
50mlのグリセリンと精製水50mlで生成した.

サンプルを100%グリセリンに投入する.

鑑賞用の小瓶に100%グリセリンを作成し,サンプルを投入する.
グリセリンは保存液の役目もある.
100mlのグリセリン溶液で生成した.

完成

完成.
パイプユニッシュがヒレを溶かしてしまった為魚らしさが失われてしまった.
小さい魚の場合ホルマリンの際のヒレをピン留めしない方が良いのと,
軟骨染色の際の分量をもう一度確認した方が良い(もっと濃くするか時間をかける)のが改善点.
またタンパク質分解の際にヒレまで溶かしてしまう点が課題点となった.

今後の課題

・サンプル溶ける問題、ボロボロになる問題を解決する。
・薬品高過ぎ問題→パイプユニッシュや酒など、身近なもので代用できないか実験する
・サンプル手に入らない問題→ペットショップの店員さんと仲良くなる?一歩間違えると出禁になりそうなので要検討