はじめに
私達の班は、はじめ、ジェンダー問題を解決する班として、活動してきた。
ジェンダー問題は、鎌倉特有のものではないうえ、大きな問題なので、解決方法がなかなか見つからず、何度も話し合いを行った。
最後に行き着いたテーマは「well-being」だった。
well-beingとは、個人や社会の良い状態、精神的、肉体的、社会的にすべてが満たされた状態のことをいう。(世界保健機関(WHO)より)
well-beingな世界にするための、第一歩が私達のプロダクト「COCORO ME」である。
1stアイディア
テーマを「男女間での教育の差」と設定した。
固定概念のせいで女性の社会進出が妨げられていることを解決するために、上の世代の方々が情報を得やすくする必要性があると考えた。そこで、ブレストをし、新人が上司に向けて、「逆新人研修」を行うアイディアが出た。
断念理由
プロトタイプにおとせないという理由から断念。
2ndアイディア
次に、私達は、「ジェンダー不平等」をテーマとして、高齢者と若者をつなぐ、ゲームを考えた。
きっかけ
ジェンダー不平等が起こる理由の一つとして、話し合いの中で、固定観念が挙げられた。 固定観念がある理由として、世代間での認識の違いが挙げられ、それが起こる理由は、若者、高齢者間での交流の機会の少なさだと考えた。なぜ、地域交流の減少が起きているかというと、だるい、めんどくさい、つまらないからという理由が挙げられた。 だるい、めんどくさい、つまらないという状況を改善するプロダクトには、
・ゲーム性がある
・気軽にできる
・わざわざ出向かなくて良い
・気を使わなくて良い
・時間がかからない
・インセンティブがある
・競争性がある
・利益がある
という必要性があるのではないかと考えた。
利点
ゲームを通じて、地域交流を増やし、世代間での認識の違いをなくし、固定観念をなくせるのではないか。
断念理由
ゲームだとプロダクトにおとしづらいという理由から、制作を断念。
3rdアイディア
2ndアイディアでは、プロトタイプにおとしにくいと思い、私達は、次に、「家族間のジェンダー格差」を解消するために、子供も、親も家事をやる気になる、ガチャガチャを考えた。
きっかけ
私達の周りでの、ジェンダー問題を考えたときに、家庭によって、父親の家事の時間の多さが異なったから。父親がよく家事をする人は、子供の頃、たくさん家事をしていたということが分かったから。
どんなプロトタイプか
対象:余裕がある家庭・小学生低学年(物事の善し悪しが分かるようになってから。)
①保護者と決まった家事をする。
②ガチャガチャのボタンを押せる。
③お菓子などの景品が落ちてくる。
④液晶に何日継続しているか表示、スマホに通知。
問題点
家事をする目的が、お菓子をもらうためとなってしまっていて、本来の目的からズレている。
4thアイディア
ジェンダーバイアスは5歳までに形成されるということを知り、幼稚園生にアプローチできる、多様性をテーマとした「人間すごろく」を作りたいとなった。
すごろくは、実は鎌倉時代にとても流行していたものだったということも、このアイデアが出た理由の一つである。
断念理由
幼稚園生と一緒に遊んでみて、私達が思っていたよりも、彼らが幼いことを知り、幼稚園生にアプローチするプロダクトを作ることを断念。
5thアイディア
ジェンダー教育をテーマとして、「実は〇〇な人」(〇〇をした人は女性だった、〇〇は実はバイセクシャルだったなど)を紹介するゲームを作りたいとなり、ブレストを行った。ブレストにより、裏にQRコードをつけた巨大かるたを作りたいとなった。
その後のミーティングで、庶民の女性における差別(?)を人生ゲームで体感しようというゲームを作りたいとなった。
対象:小学校5〜6年生、中高生
目的:女性の「社会進出」はまだだが、「社会貢献」はたくさんしていることを認知してほしい。
断念理由
サポーターの方からアドバイス(以下2点)を頂いたため。
・課題を解決しようとする意志が弱くなり、モノづくりをすることが、目的となってしまっている。
・女性差別という「問題全体」を一気に解決しようとするより、女性差別に困っている〇〇さんの「困りごと」 を解決しようとした方がいいのではないか。
6thアイディア
私達は、なかなか課題解決をできる制作物を見つけられず、オープンラボで、サポーターのみなさんとの話し合いを行った。その時に、メンバーの中の一人がやりたいと言った哲学対話を行った。
そこで、自分たちの経験を話しているときに、メンバーのうちの一人が自分の意見を小さい頃に、言えない事が多かったという話が出た。その経験談から、相手の気持ちを考えすぎずに、意見を言えるようにするための何かを作れないかとなった。
エピソード
私はチームで2週間以内にプログラミング作品を作るワークショップに、もともと仲の良い女子校に通っているAさん、Bさんと参加した。その際Aさんから他2人が話したこともない男子高校生の加入を申し込み3日前に提案された。私は女子高に通っているため男子高校生と話す機会が少ないうえ、0から信用を築かなければいけない人を加入させることに反対だったので、私はAさんに反対であることとその理由を伝えた。しかしそれが十分に伝わらず、Aさんは私が反対ではないと勘違いして、私は申込期限の4時間前に明確に反対意見を伝えなおすことになった。後から聞いたのですが、Aさんはその時どうしようもなくなり数時間泣いてしまったそうだ。
想い
このような経験を2度と体験したくないと思った。そのため相手の理解度を可視化することで、理解されない原因を特定し改善したいという想いが生まれた。 この想いから今回私たちは相手の理解度を可視化するまでをプロダクトにしました。
裏付け
本音を言えなかった経験がある人は88.9%(27人中24人)という結果に。
そんな人に私達のプロダクト、「COCORO ME」が必要なのではないかと仮説を立てた。
鎌倉が目指しているもの
世界一well-beingが高いまちKamakuraを目指している。
アイデア整理
改めてどのようなものを作りたいのか、何をどうやって解決したいのかを話し合った。
そこで新たに決まったのは
・赤のライト、青のライトの1セット対スイッチ複数⇨ライトと操作するスイッチを一対一対応
理由:一対一だと光がどれくらい光っているのかがわかりづらい
・ライトの光り方を赤、青それぞれ強弱の五段階で表現⇨一本のライトで上昇・下降をして色が変わる
理由:強弱よりもバーでみれる方がわかりやすい
感情の起伏をより表現しやすい
ここで疑問に上がったことは、光は何段階が一番感情表現がしやすいのかということである。
1stモデリング
「COCOROME」(1枚目)ポジティブな感情を匿名で表す道具。
「DOKILA」(2枚目)ネガティブな感情を匿名で表す道具。
モデリングには、
ティンカーキャド
を利用した。
感情表現のために
microbit
を用いてLEDを光らせ、可視化できるようにした。(3枚目)
赤と青の光を用い、赤でCOCOROMEが、青でDOKILAが光るように設定し、それぞれ5段階ずつの光の強さを設定した。親機と子機を一対多の関係にし、二台の子機から得た押された回数によって光の強さが変わる。
断念理由
実際に3Dプリンターで印刷してみたところ、壁が分厚すぎたことやライトを光らせるところまでしっかり話し合いをできていなかったため、実現可能性が低く、制作物を変える必要がでできた。
2ndプロトタイプ
上部でモデリングした筒の中にマスキングテープを貼り、粘着テープを貼った状態のLEDテープを筒の中に挿入し、接着した。
2ndプロトタイプの懸念点
2ndモデリングを製作してわかったこととして、改善すべきことが5個上がった。
1.ライトの色が赤と青では少し色が強い印象になってしまう
2.ボタンを押してからライトが反映されるまでに少しラグがある
3.ライトが10粒あるのは多すぎるのでは
4.下の箱が大きく、見た目が不恰好
5.子機でのリセットができないため操作が面倒となってしまう。
6.中のLEDライトが浮いてしまい、光がうまく拡散されず、LEDGERの粒が見えてしまってきれいに見えない。
7.筒が箱から直接生えているような感じがある。また、グラつきがある。
これらを改善すべく再考した。
プロトタイプの目標分け
そこで、どんな形のプロダクトにしたいか、なにの設備が一番大事かを、松竹梅に場合分けした。
LEDテープは棒状、円状のものがあり、それぞれを図に表し整理した。
LEDが入るサイズの覆うようなものを3Dプリンターで制作し、それを支えるための下の部分には親機やバッテリーなどが入るサイズの箱をレーザーカッターで製作することにした。
3rdモデリング
1.rgbからhsl色表現に変え、理解できるの感情を表す色を赤(1枚目)⇨ピンク(2枚目)に変えた。
2.送受信がうまく行っているのかを確認するために、親機、子機のmicrobitのLED部分に表示させていたものを消すことよって、ラグがなくなり、接続が早くなった。
3.実証実験より、ライトは10粒必要とわかった。
4.下の箱の大きさを再度考えモデリングした。箱の中にバッテリーを収めないことで箱の高さを半減し、また、幅と奥行きも少し小さくした。(3枚目)
5.今まで親機のみでリセットできたところ、子機のAボタンBボタンの同時押しでリセットという機能をつけた。
3rdモデリング 続き
6.筒を六角形にティンカーキャドでモデリングし、中のLEDライトを貼り付けやすくした。(1枚目)
7.ソケットを土管型から台形寄りの形にすることで箱から筒への違和感を軽減した。また、箱に挿さる部分を短くしたことで箱も変更できた。(2枚目)
と改善した。
3rdモデリングの懸念点
3rdモデリングを製作してわかったこととして、改善すべきことが3個上がった。
1.ボタンを一回一回押すことが難点
2.スイッチが相手に見えてしまう。
3.ただの筒で面白みがない。
4.下の箱のフォルムはきれいだが、物足りない。
プロトタイプのデザインについて
仕組みが完成したのでさらに良いプロダクトにするために私たちはデザイン性について考えた。その結果well-beingと関係のある木をモチーフとすることにした。ライトの部分を木の幹としうえに葉の部分に見立てた円形の飾りをつけることで、木を再現している。
ライトの頭部分制作
1.風船を約15cmに膨らます
2.紙または布を縦横約7cmにちぎる
3.ボンドを水にとろみが出てくるぐらいまで溶かす
4.風船に3の液体を塗る
5.1の風船に刷毛を使いながら紙を3の液体で全面に貼り付けていく(1枚目)
6.1日ほど乾かす
7.刺繡糸を3の液体に浸す
8.全面に貼り付けた紙の上から5の刺繡糸を風船の結び目に巻きつけてからバランス良く全体に巻いていく(2枚目)
9.巻いた糸の上からさらに3の液体を塗る
10.1日ほど乾かす
11.完全に乾いていたら中の風船を割る
12.形を調整する
13.完成(3枚目)
飾り完成までの苦労した点
飾りを作っていくうえで苦労した点は3つある。
1.私たちは最初紙を和紙ではなくすき紙にしていたのだが、すき紙はもともとの素材自体が薄いうえにボンド液に 浸してしまうため作業時間が長引くほど破れやすかったこと。またうまく風船に固定されなかったため貼り付け作業が大変だったこと。
2.ボンド液の濃度の調整が難しかったこと。
3.使用した糸がボンド液を含みにくかったためうまく風船に貼り付かなかったこと。
飾り部分と本体の接続
風船を割り、飾り部分には風船を結んでいた部分の大きさの穴が開く。その穴に本体のライトを挿入する形で接続した。
初めは、制作に使った紙や布を活用してタコの脚のようにライトとつなげることを試みたが重さなどによりうまく接続できなかった。
そのため接続パーツとなるものを3Dプリンターで印刷し、パーツと飾りをグルーガンで接着。
接着したものを本体に差し込む形で安定させることができた。
実証実験
実証実験は、合計三回行い、鎌倉ヘイセイズの方々、FABQUESTサポーターの方々にご協力いただいた。
この実証実験では、話し手と聞き手を交代で行い、話してはテーマに合わせて1人1分間話していただき、聞き手は話の理解度をCOCOROMEを活用して可視化させていただいた。
この実証実験の目的は、COCOROMEを活用し、自分が理解された/されなかった瞬間に立ち会うということだ。
1st実証実験
3/9に行われた実証実験ではお題を「最近あった嬉しかったこと」とした。
この時は、赤が多くつく結果となった。この理由として、理解ではないところで赤が押されたことがある。例えば、岡山の話で岡山に行きたいと思ったから押す人が多かったことがこれにあたる。
オペレーションで、「ポジティブ」「ネガティブ」と表現してしまったことがこれにつながってしまった。
ここで得た気づきとして、ボタンを押すことに気を取られて話に集中しづらいこと、ライトが20段階もいるかどうかということが上がった。
これの改善として、「言っている意味が分かった」時に押してもらうことを考えた。
2nd実証実験
3/10に、二回目の実証実験を行った。
ここでのお題は「コンビニ論争」「物語の好きなエンディング」だ。
ここで条件として、押せるライトの個数を制限して取り組んでいただいた。赤:青を10:10,3:10,0:1,3:3で制限した。
その結果として、ライトは20段階必要だということがわかった。
発見は、長押しの方が良いのではないかということ、「共感」で押すことが多いことがある。
その改善として、長押しを可にすること、さらに条件を厳しく、「共感」では押さないように制限をするということが挙げられた。
3rd実証実験
3/16には、「好きな季節」「目玉焼きに何をかけるか」のお題で行った。
今回は、共感では押さないを条件とした。
結果は、赤、青、どちらも10までいかないということが分かった。
実証実験を通してわかったこと
話を理解した/理解していないを表すためのプロトタイプなら、ライトは1粒でいいということがわかった。
理解した/理解していないが分かればよかったのだが、いつしか理解度を表すプロトタイプになってしまった。(目的が本来のものではなくなってしまった)
4thモデリング
3rdモデリングの懸念点より、
1.長押しできる機能を追加。
2.
3Dプリンター
で、microbitのボタンだけ押せるような箱をモデリング。(1枚目)
3.筒の上に和紙をつけ、木のようにした。
(プロトタイプのデザインについて、ライトの頭部分制作)
4.高さは前回と同じにし、横と奥行きを大きくすることにより、バッテリーが箱の中に入るようになった。(全体を木のようなフォルムにするため)
5.筒の形状を円柱⇨六角形
と改善。
2ndモデリング
上図の松を2ndモデリングとし、ティンカーキャドでモデリング(1枚目)
感情という複雑なものを表現するにはどれくらいの段階があるべきなのかを検討した結果、計20段階のものを制作することとなったため、LEDの粒が10個入るような長さに設定した。
下の箱は
MakerCase
と
Illustrator
を活用し、レーザーカッターで製作した(2枚目)
箱にはバッテリーと親機のmicrobitと回路が入るように設計し、大きさは高さ80幅90奥行き70である。
箱と筒を繋ぐための土管型ソケットもモデリングした。(3枚目)
箱の上部にある円形の穴に差し込むことで筒が自立する。
あとがき
なりたい姿
私達のこのプロダクト、「COCORO ME」でなりたい姿は、自分の考えを筋道を通して話せるようになることである。そのために、理解された/されない瞬間を可視化し、立ち会い、原因を特定し改善、経験を積んでいく必要がある。
今後の展望
相手に理解されない理由を特定するために「COCORO ME」にマイクを搭載して、リアルタイムで反応を記録できるようにしたい。
感想
私達のチームは、このように、何度もアイディアを出しては、行き詰まり、断念してきた。また、途中でメンバーが一人辞退したり、セッションに全員が集まれなかったり、大変なことがたくさんあった。また、私達自身、作るものがギリギリまで決まらず、毎回のセッションがとても苦しかった。その中で、ラストに「COCOROME」という最高のプロダクトを作ることができたと思う。
最後に
このプロダクトを使って、本音が言えるようになる人が増えることを願っている。
well-beingを構成する要素の一つ、コミュニティの幸福を高めて、もっと「well-being」にーもっと自分自身も社会自体も良くなっていってほしいと思う。