3Dプリンターを使用するきっかけ
山形県鶴岡市にあるSoraiという児童教育施設で小学生の息子が3Dプリンターで遊んだことがきっかけで、家族で3Dプリンターを始めました。子供に論理的な思考を身に着けてほしいと常々考えていましたが、なかなか集中力が続かず、どのように取り組めばよいか迷っていました。そんな中、fab3Dコンテストのことを知り、成長の機会になれば良いと考え応募することにしました。今回は、家族でチームHihatsubaとして応募します。
KIDS DOME SORAI
https://www.sorai.yamagata-design.com/
進め方
チームで相談し以下の様な進め方をすることにしました。
1.アイデア出し
2.アイデアの絞り込み、プレゼン
3.テーマの決定
1.アイデア出し
チームでアイデア出しをしました。
ポストイットにアイデアを文字で書き出し、
その中で良さそうなものをホワイトボードに書き出しました。
2.アイデアの絞り込み、プレゼン
メンバーそれぞれが作りたいと思ったものを書き出しました。
なぜそれを選んだか、どこが面白いか、プレゼンをしました。
質疑応答でよりよいアイデアになるように、お互いのアイデアについて議論しました。
3.テーマの決定
最終的にメンバー1人当たり3つのアイテムを選び、それについて投票してつくるアイテムを選びました。
最終的に以下の3つが選ばれました。
1.魚の隠れ家
2.グリーンカーテン用のネット
3.亀の形の小物入れ
このプロジェクトでは魚の隠れ家を作成します。
テーマ選定理由
魚の隠れ家は、市販のものでは、自然にあるもの(流木や石等)や、人工物(樹脂や陶器で作られたもの)です。生分解性プラスチックを用いて骨格を作り、表面を苔(ウィローモス)で覆うことができれば、水槽に調和した隠れ家ができるのではないかと考えました。
Material&Tools
Material
1. polymer filament; Forzeas™DF9003
2. Masking tape; 3M
3. Aquatic plants; Moss/Fontinalis antipyretica, Hornwort/Ceratophyllum demersum
4. Sea glass
5. Driftwood
6. Fish; Loach, Japanese killifish
Tools
1.3D printer ; ANYCUBIC Mega S
2.3D CAD modeling soft ware; Tinkercad
https://www.tinkercad.com/
3. 3D print software; Ultimaker Cure
https://github.com/Ultimaker/Cura/releases/tag/5.1.0
Making
1st test(2022.8.20)
フィラメントの材質は、これまではPLAを使用していた。今回は新素材Forzeas™の推奨条件を確認し、ノズル温度200℃、ステージ温度60℃で実施した。結果は途中でエラーとなった。印刷中にステージから樹脂が剥がれてしまったことがエラーの原因であることがわかった。PLAもステージ温度を60℃で印刷しているが、これまで剥がれたことはなかった。
2nd test(2022.8.21)
今回は、家族でチームHihatsubaとして応募します。1st test では、部屋のエアコンをつけた状態であった。エアコンの吹出口の向きは3Dプリンターのステージの方向を向いていた。そのため、エアコンの送風で印刷された樹脂が冷えてしまい、ステージから剥がれたと考えた。2nd test では他の条件は同じでエアコンをOFFにして印刷してみたが、やはり途中でステージから剥がれてしまった。
3rd test(2022.8.21)
ステージから剥がれた原因を考えた。原因として①ノズルとステージの位置②ノズル、ステージ温度④印刷速度⑤樹脂の特性が考えられる。①はPLAで問題ないなく印刷できることから除外した。②〜④は新素材でも途中まで印刷は問題なくできることから除外した。⑤樹脂の特性が問題と考え対策を検討した。樹脂の問題の場合、樹脂の収縮力が強いまたは樹脂のステージとの接着力が弱いことが理由と推定した。剥離したものは収縮によるそりは無かった。そのため樹脂とステージの接着力が弱いことが原因と考え、3rd testではマスキングテープをステージに貼ってその上に印刷した。その結果、最後までステージから樹脂が剥がれずに印刷できた。
基本形状について
隠れ家の基本形状はドカンを3つ重ねたものにした。この形状であれば魚の種類に合わせて長さ、直径を変えるだけでその魚に合わせたデザインに調整することができる。プラスチックスで作成したので水に沈むか不安だったが、テストで作成したもので沈むことを確認できた。素材の魚への毒性について、Fab3D事務局に問い合わせたところ、この樹脂では試験はされていないということであったが、類似品での調査では問題は見られないとの回答であった。念の為整形した製品を水で洗浄したあとに60℃のお湯に数時間浸した後、乾燥して使用することにした。
試作品の設計思想
通常、流木の表面などに苔(ウィローモス)を固着させるためにテグスなどで苔を固定している。
3Dプリンターの特性を利用して、ドカンの表面を苔が固着しやすいように工夫した。
ver1. 特に表面には形状なし。(ただし印刷の工程で多少の凹凸はできる)
ver2. 表面に凸凹を形成。
ver3. 表面の凹凸の上にリングを形成し、縦と横の溝を形成。(溝の中に苔が入る事ができるようにする)
試作品
3DモデリングはTinkercadで作成した。
サイズは、どじょうやメダカを想定し、一つのドカンの直径30mm×長さ45mmとした。
設計した3DイメージをソフトCureで3Dプリンター用にモデリングした。
実験
2022.10.11
Cureでプログラムしたモデルを3rd test と同じ条件で印刷した。
設計どおり印刷できた。マスキングテープを使用することでステージから剥がれる不具合は発生しなかった。
得られた試作品3つを水道水で洗浄したあとに、お湯(約60℃)に4時間浸漬した。
取り出して水洗した後に乾燥した。
その後表面に苔(ウィローモス)を押し付けて、アクリルの水槽に水を入れて、試作品3つを沈めた。
2022.10.24
水槽を約2週間、直射日光の当たる環境に静置した。
取り出して苔の固着具合を確認した。
ver1、ver2は苔が固着していなかった。ver3は苔が固着していた。
まとめ
2022.11.6
Forzeas™を使用して、魚の隠れ家を作成した。
基本形状を汎用性のあるドカン形状とした。
水槽に調和するために、表面に苔を固着させたいと考え、表面の形状を最適化した。
アクリス水槽の底に海で採取したシーグラス(洗浄済み)を敷き詰め、得られた試作品、松藻、流木を配置した。
水槽にマドジョウ、メダカをいれて飼育した。
約2週間経過し、隠れ家を使用していること、生存していることを確認した。
今後について
今回は、ドカン形状で隠れ家を作成した。
ドジョウなどは土に潜る性質があるので、ドカンを半分に割ったような形状で底砂に埋めた形状も作ってみたい。
メダカは浮草に産卵するので、浮くような設計にして、産卵床を作りたい。
他の種類の魚についても、魚の性質に合わせて最適な形状を検討していきたい。