蝉の翅採集
夏も終わりに近づくと蝉の死骸をよく目にする。しかし、そこから
蝉の翅
を摘出するのは忍びないので、翅だけの姿になったものを採集。
意外といい保存状態。
3次元データ取得
【3Dスキャン】
はじめは3Dスキャナで3次元データを取得しようと考えていたが、有識者に相談すると平たい物の3Dスキャンは大変難しいらしく、断念。
【画像解析】
photoshop(Adobe社)で翅の画像の2値化を試みたが、いい塩梅の閾値を見つけられず、断念。
【トレース】
翅の画像を印刷し、
トレーシングペーパー
と
ペン
を使って人力でのトレースに挑戦。その後、
Illustrator(Adobe社)
でsvg形式に変換。それを
Fusion360(Autodesk社)
で読み込み、厚みをつけて、いわゆる2.5次元データの取得に成功。
3Dプリント
ラフトを除去する際に細い翅脈が折れることを危惧して、ラフトをつけない設定で出力。
使用した機種は
Afinia H800+(Microboards Technology社)
。
膜貼り
翅部に
接着剤
を塗布し、極力凹凸の無いように敷いたぷら
ラップフィルム
の上に置き接着。余分なところを
カッター
で切り、取り除く。
強度の確認
翅脈は細いので、あおぐことで折れないか心配。弾性に優れた
ポリカーボネート
を用いて出力し、強度を確認。まったく折れる気配なし。それどころか、絶妙なしなり具合。
謝辞
協力FAB支援施設グッデイファブ大名を活動拠点とする「
大名3Dプリンター部
」の皆様にFusion360の操作方法や3Dプリントのノウハウをご指導頂きました。本当にありがとうございました。
接続部のテスト
柄部と翅部を接続するパーツのテスト。ひとまず
ABS
で出力してみて、問題がなかったのでこのまま柄部と一体化して出力。
おわりに
今回、数多くの蝉の亡骸を観察したが、そのほとんどがクマゼミだった。作者が小学生の頃、虫取りに行って目に留まる蝉は大半がアブラゼミ。クマゼミは出現率が低く、あの黄緑の翅脈と透明な翅をたまに見かけると、大いに喜んでいた記憶がある。
何年も前からクマゼミが台頭してきたのは感じていたが、死骸すら見つからないアブラゼミはいったいどこへ行ってしまったのか。
完成
柄部と翅部をつなげて、蝉の翅型団扇の完成。
結果的にフライ返しのような外観になってしまったが、クマゼミの翅の透明感はよく再現できている。少ない力でしっかり風も起こせるので、団扇としては申し分ない。