課題
表裏がある形状の物の型取りは、
裏が平面状の物の型取りよりも工程が多い。
前者は【両面取り】後者は【片面取り】と呼ばれます。
基本的に片面取りを表裏について行うのが両面取りなので、
片面取りを経験しているならそれほど難しくはありません。
目標
ユザワヤに写真のようなキューピー人形が売っていました。
手のひら大で、練習台には丁度よい大きさです。
また、レジンで複製できればなかなかインパクトがありそうです。
と、いうわけで
今回は、この人形をレジンで複製することを目標にします。
実現方法
透明なシリコンで表面・裏面の型取りを行い、レジンを注ぎ込む型を自作します。
揃えるもの
①シリコン
今回使用したのは下記のシリコンになります。
【ボークス造形村 透明シリコン1kg(硬化剤付き)】
※amazonで5000円程度
②油粘土
③電子ばかり
④計量カップ
100均のもので十分です。
⑤中を真空にできる容器
※"おひつ"として販売されています
⑥新聞紙と割り箸
新聞紙はシリコンを扱う際に敷きます。
割り箸は計量カップでシリコンと硬化剤を混ぜるために使用。
⑦レジン
今回はUVレジンではなく、2液を混ぜることで硬化する樹脂を
用います。量販店では2,500円/500g程度の価格です。
⑧シリコーンバリアー
型同士が癒着してしまうことを防ぐために使用します。
型取りの方法
上に書いた通り【fab-002】で解説した片面取りの方法を、
型取りしたいもの(この場合キューピー人形)の表面と裏面に対して行います。
①片面取りを行う
フィギュアの片面を油粘土に埋め込み、周囲を枠で囲みます。
計量カップでシリコンと硬化剤を混ぜた混合液を作り、上から注ぎ込んでください。
※片面取りの詳細は【fab-002】で説明してあります。
※表面と裏面どちらを先にするかはお任せします。
※粘土に"ほぞ穴"を付け、表型と裏型の位置合わせに使う
方法もあります。(今回はほぞ穴を作っていませんが、
あった方が良いでしょう)
②シリコンの硬化を確認する
①で注いだ混合液が固まるまで、半日ほど待ちましょう。
硬化を確認したら(指で触れば分かります)いったん枠から外しましょう。
③油粘土を取り外す
油粘土も取り外してしましょう。
これで、片方の型が完成しました!
④型と人形にシリコーンバリアーを塗る
型と人形を再度、枠で囲みます。
すぐにシリコンを注ぎたいところですが、ここでひと手間!
型と人形に対して、写真の「シリコーンバリアー」を塗って下さい。
上から注いだシリコンが既に固まっている型や人形に癒着し、外れなくなることを防ぐために使います。筆を使い丁寧に、細部まで塗りましょう。
※型の写真に写っている黒いストローと粘土は無視してください。
(後述する、レジンの注ぎ口や空気穴を作ろうとして失敗してしました)
⑤型にシリコンを注ぎ込む
ふたたび、シリコンと硬化剤の混合液を注ぎ込みましょう。
硬化まで半日ほど待ちます。
⑥シリコンの硬化を確認する
さあ、もう片方の型も固まりました!
うまくいけば、メーカーロゴまで綺麗に転写できているはずです。
これだけでも、かなりの満足感を味わえることでしょう。
複製の方法
ここから、複製の方法を説明します。
2液を混合するタイプのレジンを用いますが、硬化時間が極めて短いので、念入りに準備してから始めましょう。(写真のレジンの場合、サラサラの状態から2分で固まります)
また、レジンはこぼれやすいものです(シリコンもそうですが)。
新聞紙を敷く、エプロンを付ける、キッチンペーパーを用意するなど、汚れ対策を徹底しましょう。
①型を加工する
カッターで型を削り、樹脂の注ぎ穴と空気抜き用の穴を作ります。
(樹脂を注いだ分だけ空気を出す必要がある)
②型を準備する
型を合わせ、写真のように板で押さえて輪ゴムできつく縛ります。
クランプ等の保持具を併用してもよいでしょう。
型がズレたり、歪んだりしないように注意してください。
③レジンを注ぎ込む
紙コップと電子ばかりで2液を計量し、所定の比率で混ぜ合わせます。
混合液はすぐに固まるので、手早く作りましょう。
サラサラの液状から、やや粘りが出てきた程度のところで注いでください。
※粘性があるので、一気に注ごうとすると注ぎ口から溢れてしまいます。
注ぎ口の様子を見ながら調整しましょう。
④レジンの硬化を確認する
混合液は発熱しながら硬化します。
硬化は15~20分ほどで終わるので、注ぎ口までレジンを注ぎ込んだら暫く待ちましょう。
硬化が終わったかどうかは、レジンを触ってみれば確認できます。
硬化中はベタベタしており、触った所に指紋が付きますが、硬化後はツルツルで、指紋も付きません。
⑤複製した人形を型から抜く
いよいよ、複製した人形とのご対面です!
押さえ板と輪ゴムを外し、慎重に型から外しましょう。
上手く作れたでしょうか…?
⑥バリ・ランナーを削る
完成まであとひと息です!
バリ、ランナー(注ぎ口や空気抜き穴の跡)を取り除きます。
・注ぎ口の跡等、大きい部分はニッパーでは除去し辛いので、
糸ノコで大まかに切断してしまいましょう。
・写真の矢印の様なバリや、糸ノコで除去した跡の凸凹は、
カッターで削って整えます。(鉛筆を尖らせる要領)
・最後に#600~1000程度の耐水紙ヤスリか、歯磨き粉
(研磨剤の入ったもの)、金属磨き用の洗剤(ピカール)等で
表面を仕上げます。
⑦完成!
失敗例
こちらの写真は失敗例です。
頭の上半分が空っぽの状態でレジンが硬化してしまいました。
輪ゴムの締め付けが緩く、型に隙間がある状態でレジンを注いだため、隙間からレジンが漏れてしまったことが原因です。
今後の課題
ここでは、製作中に感じた課題を書いていきます。
課題1:気泡
写真を見れば分かる通り、複製した人形の中に細かい気泡が残ってしまっています。
この気泡を完全に除去できないでしょうか。
Googleで「キャスト 気泡抜き」と検索すると様々なノウハウが出てきますが
どうやら、下記の様なポイントがあるようです。
・振動を与える
・暖めて粘性を下げる
・水気を取り除く
課題2:表面処理
課題1にも関係してきますが、
原型のキューピー人形の表面がザラザラだと、複製物の表面もザラザラになります(※)。
金属磨き用の洗剤は試していないので、今後の課題とします。
※表面に凹凸があると光が屈折しやすくなるため、透明度も下がる
課題3:LEDの埋め込み、塗装
塗装やLEDの埋め込みなど、2次加工で更なる価値づけを行うことも必要です。
オプションパーツ等も製作して、原型と完全に別物にしてしまうことに挑戦してみたいです。
課題4:展示台の製作
写真では別用途で製作したLED照明を台にしていますが、
専用の展示台も欲しい所です。
・照明の色や明るさ、点消灯のパターンを工夫する
・音を鳴らす
・台座を動かす
など、様々に工夫できることでしょう。
課題5:原型そのものを作る
他の手法と組み合わせることで、
より面白い作品作りが可能になります。
例えば3Dプリンタやミリングマシンで原型を作り、
完全にオリジナルのフィギュアを作れないでしょうか。
デジタルデータの作成が苦手なら、
例えばオーブンレンジで熱を加えると硬化する粘土もあります。
多様な【方法の足し算・掛け算】を楽しみましょう!