どのような対象者なのか
神経難病により手指の筋力低下が生じた方にとって、殺虫スプレーのレバーを握るということが難しくなる。これは、ムカデなどの害虫に対して恐怖を抱いている方にとって、非常に大きな困りごとである。
さらに、このような状況において手指・上肢の運動麻痺を有している方にとって、他の対策がないことがほとんどである。
そこで、安心して暮らしていくために、対象者に残存する力を活かした形で操作ができるような自助具を製作した。
自助具の必要性
神経難病の多くは進行性疾患であり、運動をしたり、訓練をしたりしたとしても問題の解決につながらないことはある。
今回の場合は、残存する力を活かすことで、殺虫スプレーの操作が可能と判断し、対峙する手段があるという安心感の担保するために製作した。
製作過程:作業分析
神経難病により、手指の筋力低下および手指の関節可動域の制限が生じている。
それにより、小さいものをつまむ、押す、把持するということが難しい状態である。
さらに、上肢全体の筋力低下があることで、自助具が重くなるとスプレー自体を持ち上げることができなくなる。
一人で操作ができるということが絶対条件となっている。
トライ&エラー
まずは延長するところから始めたが、単純な延長だと指を大きく伸ばさないと押せないことが分かり、形状を変更していった。
形状を変更すると、レバーを押すための動きが缶本体に当たることで、レバーを押し切れないという課題も生じた。
完成
レバーが本体に当たることを防いだ形状にした。
PLAで製作したことで、重さも軽い状態を維持できた。
延長レバー
生活の中での成果
今回の自助具により自分のタイミングで殺虫スプレーが使用できるようになり、ご本人の安心に繋がっている。また、吹き付けたところはムカデが寄りづらいようになることで、事前対策としてご本人が考えたところに吹き付けることも可能となっている。