ニードノウアについて
【基本情報】
中上一二三さん(85歳)女性
15年前からパーキンソン病を患っている
ニード:大好きなうどんを思いっきり食べたい
【課題】
箸でうどんを口に運ぶのに時間がかかる
途中で落としてしまう
箸の長さはこだわらないが、短いと掴みにくい
【こだわり】
1本ずつ噛むより複数口に入れたほうがうどんらしい
幼少期に母が手打ちしており、太いうどんの方が好き
短く切れば食べやすいのかもしれないけど、うどんはすすって食べたい
暖かいのも冷たいのも
うどんをうどんとして食べたい
課題・要求 (Good / Bad ストーリー) (1:00~)
【現在使っている箸の課題】
うどんを食べる時 「つかみにくい」「つかむのに時間がかかる」「口に運ぶ時うどんを落とす」
うどんを落とす 「箸の間から、うどんが滑り落ちてしまう」「2〜3本のうどんのうち手元側のうどんが落ちやすい」「箸の先端側から落ちることはない」
箸は塗り箸を使用している「短いと使いにくい」「スプーンなどは使いたくない」
※動画を撮っていたためか、いつもよりも上手に食べています。ただ、1:00~くらいでも顕著なように箸が滑って持ちづらい、複数本のうどんを掴むのが困難な様子が見受けられる。
Good ストーリー
大好きなうどんを思いっきり食べることができる
その姿を見て家族もうれしい気持ちになる
Bad ストーリー
だいすきなうどんをうどんとして食べることを諦めなければならない
解決策・アイデアスケッチ
阿部邦彦
【うどんを上手に食べれる箸】
角のある箸
滑り止めとなる切り込み
→うどんは箸に対して垂直方向に滑り落ちるので切り込みは箸と同じ方向が良い
うどんを数本掴んで口まで運びやすくする
うどんを掴んだ時に2本の箸が平行になるようにヒンジをつける
→ニードノウアの箸の持ち方から、通常時もほとんど平行になっているためナシ。
中上知子
【うどんを掴みやすいうどん箸】
納豆箸から着想を得て、先端に凹凸を付けた
納豆箸は先端に行くほど太いが、その逆をイメージ
岡﨑優子
【取り付け可能うどん箸】
普段使っている箸の先端部分に取り付けることができる
角型(1枚目)と丸型(2枚目)の凹凸でうどんを掴みやすくする
プロトタイピング1周目
モデリング(阿部邦彦)
箸先端を星形の多角形にし、エッジでうどんを掴み、落としにくくすることを狙った。
箸多角形2v1
モデリング(岡﨑優子)
①箸の先端に滑り止めの凹凸をつけ、箸の上部に箸同士を固定するバンドをつけて、うどんを掴みやすくすることを狙った。
②いつも使っている箸の先端に凹凸をキャップ上につけて、馴染みのある箸を使いながら、うどんを落としにくくすることを狙った。
フィッテイングのようす①(0:40~)
good
長さ・重さともに持ちやすい
先端が多角形になっており、滑り落ちを防いでいる
more
もう少し太いほうが持ちやすい
多角形の凹凸が深いほうがよりよい
フィッテイングのようす②(0:20~)
good
上部分が固定されているので少しの力でうどんを掴める
more
全体的に短くて持ちにくい
先端が細すぎてうどんを掴みにくい
フィッテイングのようす③(1:00~)
good
縦横両方に凹凸があるのでうどんを掴みやすい
普段の箸に取り付けることができる
more
掴みやすすぎて逆に箸から離れない
先端が太くて口に入れづらい
プロトタイピング2周目
ニードノウアにとって1番使いやすかった「阿部さんモデル」をもとに改良を重ねる
【課題】
安全性・耐久性の追求:フィラメントの素材を食具に使えるものにする
好み・快適さの追求:口当たりの良い木材での作成も検討する
改良案
ニードノウアの要望に合わせ、箸の太さを修正し、従来使用している箸と同じように丸みを持たせ、先端部の溝を深く変更した。
また各部のエッジを適度に丸め、手触り、口当たりが心地よくなるように形状を整えた。
箸丸v1
中間発表
メンバーで分担し、これまでの、アイディアスケッチ、プロトタイピング、プロトタイプのフィッティングを紹介。
従来の箸と、プロトタイプのフィッティングでうどんを食べる様子の動画紹介により、プロトタイプによる効果を確認ができた。
今後の課題となったこと
「好み・快適さ」と「安全性・耐久性」の追求
「安全性」に関しては「食具用フィラメントでの出力」を行うこととした
「好み・快適さ」については、木や竹などでの制作も検討することとなった
=CNCは小さくて不可? 箸を自作するキットがありました。(写真)
「好み・快適さ」「耐久性」に関して、質疑応答で話題になったこと
3Dプリンター出力品に食具用塗料で塗装してみることはできないか?
食具用塗料にはカシューや漆などがある
3Dプリンター出力品に食具用の塗装を行うことについては調べてみよう
プロトタイピング2周目出力されたが・・・
どうやら、モデリングの際にサイズを間違えたらしく、だいぶ細い箸が出力されてしまう・・・。
※メンバーは3Dモデリングは初心者で、このメイカソンで、初めて自分でモデリングしたものを出力されるという経験をしました。
プロトタイピングに激似の既製品があった・・・💦
既製品の箸をベースに加工することを考え、ベースになる箸を探していたら、「うどん箸」という商品を発見・・・。プロトタイピングに形状が酷似していた。
運営スタッフ・サポーターから「一週間経たないうちにこのメーカーが販売している商品のソリューションにたどり着いているのは逆にすごいことかと」「もっとニードノウアの既存の製品では叶えられない一二三さんご本人の幸福にフィットするものは何か、さらに尖らせられないかを追究してみてください!」との励ましをいただく😅
プロトタイピング3周目
ニードノウアの「箸が細い」との感想、従来使っている箸より1mmも太さが違うことが確認されたため、箸の太さを変更した。
さらに、フィッティング場面で数本のうどんを掴めている反面、箸の先端からうどんを落としてしまう場面があったので、「箸からうどんを落とさない」ことを狙いとして、「箸の先端をわずかに太くし、うどんを落とさない」様に再モデリングを行った。
出力=ニードノウアのもとへデリバリー
運営側で「食具用フィラメント」で出力された、箸はニードノウアのもとへ、デリバリーされた
食具対応フィラメントでの出力
カナダのNefilaTekのPETG(クリア)を使用し、出力された。
https://nefilatek.com/produit/nefila-petg-clear/
出力後の処理による違い
食具用フィラメントで出力された箸は、サンドペーパーをかける前後でこの様に変化した。
3Dプリンター出力品への塗装について
3Dプリンターでの出力品に対する塗装については、いくつかのサイトから情報を得た。
また、食具用塗料での塗装について、塗料販売会社に問い合わせたが、回答を得られていない。
3Dプリント出力物への塗装について
熱溶解積層方式(FDM)の出力物への塗装については、積層痕の除去を行うこと、フィラメントの材質により塗装方法の選択や下地処理が必要となる。
現在、JMC(https://www.3d-printout.com/manufacturing/)に塗装について問い合わせ中。
食具用塗料
中間発表時に「カシュー」「漆」「ウレタン」などの食具用塗料について紹介を受けた。
それぞれ3Dプリンター出力品への塗装について、ネットを検索した。
「カシュー」は、記事が見当たらなかった。
「漆」は、塗装を行なっている例がいくつかあった。
「ウレタン」は、塗装方法を含め記事が多く紹介されていた。
フィッティング
再びフィッティングを行なった。
フィッティングでは、「箸を持つところから」「介助なし」で行なっていただいた。
結果
プロトタイピング1周目のフィッティングでは、箸の先から落とすなどの課題が見られていたが、うどんの先端付近を掴んで持ち上げた時を除き、うどんが箸から落ちることはなかった。
かまぼこやワカメなどの具も、掴むまで時間がかかるが、しっかり掴めていた。
残された課題
口にうどんを入れた直後、うどん・具が口に取り込まれず落ちてしまうことが2度記録された。(動画1:06ごろ・1:50ごろ・3:00ごろ)
口へ取り込むことが、上手くいかない原因を探る必要がある。
ニードノウアからの感想
9月25日 夕食でうどんを食べていただき、その時の感想をいただいた。
「とても食べやすかった。箸を手に持った感触も良かった。」
まとめ
【成果】
うどんが掴みやすくフィット感のある箸を作成できた
ニードノウアや家族にとって、「こんなものがあったらいいな」を実現させるきっかけになった
【今後の課題】
日常生活で今後も使っていく道具として、好みや快適さを追求する必要がある
【ネクストアクション】
塗装についてそれぞれ問合わせ中の企業から回答をもらい次第、塗装依頼をする