For whom:対象者

片手が不自由な方。

Why : なぜ作ろうと思ったのか

私が所属している福祉ものづくり集団たくみ21のメンバーの原田太郎さん(ニードノア、左片麻痺を患っている)から簡単に読書ができる道具のリクエストをもらいました。今まで既製品の読書台を使っているが、使えないわけではないがもっと楽にやりたいので改善できないか?
具体的には
・ページをめくる時に本が倒れる
・さっとおいてページをめくれないだろうか
・支障はなくストレスなく読書ができる
・下に付いた開閉クリップを使って本を開いて装着する方式だがやりづらい
・ページ止めホルダーも使い難い
・本の置台の角度が何段階かに変えられるがストッパーが止めづらいので使っていない。たまに倒れる。
・収納時には小さくしたい。
 etc

How:どのように作成したか(試行錯誤のプロセスと作成ファイル)


■既製品の調査

ネットを使って既製品や既成自助具を調査。
健常者が片手読みするための道具・方法はいくつかありました。電子ブックで読むという提案もありますが実際の本を読むために片手の不自由な人が使うことのできそうな読書台は以外と少ないことがわかりました。
その中で二つの道具の写真を貼付します。
①テクノエイドの自助具検索から、八王子自助具工房フレンズ開発の読書台
②理学療法士が既製品を使いやすく改造したもの
この①が構造的に片手の不自由な人が使うために配慮されており、さらに本のすべり止めについては②が参考にできるものと思いました。

■初期の構想

八王子自助具工房フレンズ開発の読書台の基本構造を利用させてもらうことにしました。
具体的な基本構造は、開いた本が閉じないように上下にスライドする傾斜板で本を挟む構造でいろいろな大きさの本に対応でき、傾斜板の内側にスポンジを貼ることでページの固定とめくることができる構造です。
基本的にこの構造を踏襲して3Dプリント部品に置き換えて、さらに改善することにしました。
・本をさっとおいてページをめくれ、固定できること
・置台の角度が簡単に変えられて、倒れない
・単行本からからA4版まで対応
・収納時には小さく
なお八王子自助具工房フレンズには商用目的でなく今回のコンテストに応募することの承諾をいただいております。

■Prot 1

参考にする読書台の基本構造の効果性を確認するため3Dプリント部品でPtot1原理試作を行った。
原理確認では既成の読書台に構造のポイントになる最低限の3Dプリント部品を張り付けて確認する方法をとった。ちなみに輪ゴムは本を挟みこむ部品に与圧を掛ける役目をしています。
■モニター結果 実際にニードノウアの原田太郎さんにモニターしてもらいました
・以前使っていたものより簡単に読める!
・ページめくりでスポンジが少し引っ掛かる。
・本の挟み込み部品は一時的に固定できるといい。
・単行本からA4サイズまで対応したい。
・ベースは滑らないようにしたい。現状は重いのでOK
・原理的にはこれをブラシュアップして行こう!

■Prot 2

主な改善変更部分
・主要部品を3Dプリント部品に置換え
・スポンジの引掛かりはスポンジの配置の仕方で改善
・本押さえ部品をゴムで引っ張る方式からカッターナイフの歯出し機構のように数㎜毎に止まる構造にした
・片手で本押さえ部品をスライドできるようにし、動作範囲も増やし多サイズ対応
・ベースの裏にシリコンの足を貼りすべり止めにした
■モニター結果
・ページめくりですべり止めウレタンが削れ落ちる
・ページめくりで上下の本挟みの3Dプリント部品とすべり止めが引っ掛かりやすい
・収納時のコンパクト性より読みかけの本を固定したまま場所の移動ができるように
・腰の強い紙や表裏表紙に厚紙を使った本だと固定できないものがある

■ Latest Prot

主な改善変更部分
・すべり止めの材質変更
 →本を押さえる柔らかさはウレタンスポンジが良いが擦り切れない材質マジックテープの柔らかい側の布に変更
  マジックテープ:隙間止めのウレタンテープ、マジックテープの柔らかい側の布:PP材の繊維を加工したもの
・ページ引っ掛かり改善
 →本の上下を固定する部品の形状変更及びすべり止め部品の形状変更
・開いたA4版の本の端の支え対応で読書台の高さ変更
・本ごと読書台全体を片手で移動できるように台角度時固定機構含め対応
・本のセッティング時のすべり止め対応
■モニター結果
・本のセッティングやページのめくり方に多少コツが必要になるが、以前のものより使い易いものになった。

STLファイル・構成部品

Base4b
BottomHD4
Bracket4
Prop4
Stopper4
TopHD4
・3Dプリント部品の構成は6種類8点
・すべり止め:隙間止めウレタンクッションに25㎜幅マジックテープの柔らかい方
・本押さえ与圧用輪ゴム:サイズNO.14 1~2本ページ固定のし易さで調整

Outcome:対象者の何がどのように変化する道具なのか

・以前使っていたものよりはるかにストレスが軽減
・頁をめくる時のストレスが軽減
・頁を止める操作が楽になり止めやすくなった
・頁が引っ掛かり難くなった
・片手で自助具の移動が楽になった
・台角度固定で組み立てが不要、本を楽に設置できる
さらに、当初の対象者だけでなく手の不自由でない人が読書をするときにも便利。具体的には本を何段階かに傾けられるので読書姿勢が楽になる、さらに寝ながらの読書にも使える。