きっかけ

 発達障害の子供たちが通う施設で働いている時に、送迎時の安全確保に問題があり、こんなグッズがあったらいいなと思い調べてみたけれど、市販品を見つけられなかったので作ってみました。
  ちょっとしたグッズで安全性が高まったり、日々命を預かるスタッフも安心で働きやすい環境が作れると思うので、発表することによって関心を持つ人、作る人が増えて欲しいと思い応募しました。

IDEA SKETCH シートベルトカバー

Who シートベルトを外してしまう子供やお年寄り、その介助者
When 車に乗るとき
Where 車内
What シートベルトの上から被せるカバー
Why 既存の止め方ではシートベルトを外してしまって安全を確保できない子がいるから(市販品がない)

ロック部分を考える
・介助者がはめ易く子供には気が付かれにくい構造
・いざという時はすぐに外せる様に
・色々なチャイルドロックを見てみる
・強度が必要な部分はアクリルでレーザーカッターを使うor金属
・シートベルト金具部分を用意する
・ベルト部分にカバーが取り付け可能か確認(ロック位置を決める)

モデリング

本体部分モデリング


【失敗・解決ポイント】

「押し出しが斜めになってしまう」
・押し出し用のスケッチする面を斜辺の側面に沿ってしまったから。
・斜辺でないスケッチを中心に。対称に押し出しをする。

試作3Dプリント

・上面を下にしてプリント。形にはなったけれど斜面にサポートが足らず。
・Rが小さ過ぎて本体にはめてみたら少し割れた。その他はピッタリ。
・ピッタリはまるとロックの必要がないかもしれない。


失敗部分をモデリングし直してもう一度出力する。
       
           







試作を見ながら検討

試作にロックを付けるとしたら?
他のやり方はないかFabLabスタッフさんと検討
  
・ロック、上面について  
 *上面をスライド式に?
 *PEZの様に開く?
 *座っている位置から開けにくく(ロックが見えないように)介助者から開けやすい様に



元の課題からもう一度考える

・シートベルトを外してしまう子もいるが、子供によって課題は違う
・シートベルトを着けることを嫌がって着けないまま乗車している子もいる
・外してしまうと警告音などで知らせるものはすでにあるけれど、シートベルトを着けることで良いことがある、着けることが楽しい装置はどうか(好きな音楽が鳴るなど)
→別プロジェクトも開始

               

モデリング修正

カバーモデリングの修正、上面の斜辺にサポート材を付ける

履歴で最初の押し出しに戻り修正
 上面のRを大きく、
 高さ3㎜増、
 下面縁にRを付ける


【失敗・解決ポイント】

「Fusion360挿入データを編集できない」 
・コンポーネントを挿入した直後にリンクを解除し、その他のコンポーネントの作成をする。

「サポート材の付け方が分からない」
・UPのmoreからsupportを選ぶ

修正、もう一度出力

上面の斜きにサポート材を設定して出力(出力時間Quality:fast 1.9時間)


【失敗・解決ポイント】
「サポート材をニッパーで30分以上かけて剥がしたけれど綺麗にならず・・」
・サポート材低い部分は密度が濃くなるのでは
・出力する向きを変えてみる

「シートベルトにはめてみたら前回と同じ角が割れた・・」
・上面と底面を同じ寸法にモデリングしたけれど、よく見たら角度が付いている
 ノギスで寸法を測ってみる
・斜面の部分まで必要ないかも?

出力向きを変えてみる

FabLabでアドバイスを頂いて、斜辺がキレイに出力出来る様に縦て出力してみる。
中側に沢山のサポート材になったけれど底辺の他は気持ちよいほどキレイに外れた。

「バックルの存在感をなくすカバー」完成

修正と出力を繰り返し出来上がり!

存在感をなくすためフィラメントは黒で出力

反り防止の為に、底辺が少ない面積になるように方向を変えて出力
大きさがピッタリすぎて何度も付け外しをすると割れそう
全体を1.02倍にして出力
まだ少しきつい部分があり少し修正が必要
見た目はほぼ完成!

【失敗・解決ポイント】
修正データと出力した試作がいっぱいになり、試作品がどのデータか分からなくなった
出来上がりに印かメモが必要

カバー大きさ修正

【失敗・解決ポイント】
「一部分だけ拡大したいが、尺度でエンティティが選択できない」

鎖マークのリンクを解除する

カバー幅のみ拡大・出力

UPで横巾のみ拡大

感想

ずっとあったらいいのに、作りたいなぁと思っていたところ、FabLab鎌倉でPROJECT LABの募集があり参加してFabLabと自宅で作りました。
作り始めてみたらかなりすぐ出来上がり、なぜもっと早く作らなかったのだろう?と思うほどでした。

作り始めた時にはすでに施設での仕事を辞めており、実際に必要としたお子さんに試すことが出来ませんでした。
必要に感じた子供の状況も日に日に変わって行き、あったらいいなと思うものも変わります。


感想続き

自分で必要に感じた時にすぐに作れると良かったのですが、足りなかったのは作る環境ではなく(3Dプリンタは持っているので)、「提案してみること」と、「実際に作り始めること」でした。
「提案してみること」に勇気が必要ない環境作りも大事だと思い、まずは自分からやってみようと作り始めました。

その後、調べてみるとこの様なグッズを必要としている方も多くいると知りました。
どんな形のシートベルトにも合うカバーを考えて改良したいです。

障害がある子もない子も、子供一人ひとりにとって必要なものも違うので、このような機会を通して、沢山の人が提案したり作ってみることが当たり前になるといいなと思います。