課題(なぜ作ろうと思ったのか)
ひとりでつめが切れない
拘縮がある方の、つめきりをサポートする自助具制作の依頼がありました。現状は自分でつめきりができず、介助者に依頼しているそうです。
指をのばしたまま維持できない
拘縮が強いと、指をのばしたまま維持するのが難しいためです。介助者がきる場合も、指をのばして維持するのに力が必要で、時間と手間がかかっています。
解決できる自助具がない
これらを解決できる自助具はありません。片手でつめをきる既存の自助具では、指をのばしたまま維持することができません。
対象者・解決できること
対象者
・拘縮でつめきりが難しい方、指をのばしたまま維持できない方
解決できること
・ひとりでつめ切りができるようになる
・拘縮がある手でも、つめ切りがしやすくなる
制作プロセス
課題から必要な機能を検討しました。
▼ 必要な機能
・指の第1,2関節を伸ばして維持できること
・指に装着できること
・机上において、つめが切れること
・丈夫で壊れにくいこと
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改善点と検証結果をまとめました。
・❶❷ … 試作の改善点
・○△×☆ … 検証結果/気づき(○よい, △微妙, ×わるい, ☆アイデア)
1. 初期案
❶ 初期案の課題・気づき
○ 指をのばして維持できる
○ 指に装着できる
× 指先の幅が広く、フィット感がない
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2. 先端を細くした
❶指穴の先端幅を細くした
○ 前回より遊びが少なく、フィット感がある
☆ 台に傾斜をつけると、爪が切りやすくなりそう
☆ 指穴の断面が正円だと、より安定しそう
❷のぞき穴を2つ減らした
○ のぞき穴を減らしても、十分確認できた
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3. 傾斜をつけた
❶台に傾斜をつけた
○ 傾斜がついて、爪が切りやすくなった
❷指穴の断面を正円にした
○ 指によりフィットし、安定感が増した
× 指が曲がると、上部の皮膚が、内壁に当たって痛い
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4. 入口の壁をとりのぞいた
❶入口側の壁をとりのぞいた
○ 指へのフィット感は、あまり変わらなかった
○ 指上部があたらなくなった
☆ 入口側を薄くし、靴べらのようにすることで、
拘縮した指をテコの原理で開きやすくできないか
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5. 靴べら型にした(失敗)
❶入口を靴べらのような形状にした
× テコの原理で、指を広げることができない
☆全長を伸ばして、作用点の距離を広げて対応できないか
❷全長を伸ばした(60mm→100mm)
○ 長い分、装着時の安定感が増した
× 長い分、指を入れにくい
☆ 指が当たっていない、出口寄りの壁もとり除けそう
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6.リングで装着する形にした
❶さらに全長を長くした(100mm→120mm)
× テコの原理で、指を広げることができない
× 長い分、さらに指を入れにくい
❷出口側の壁をとりのぞき、リング型にした
○ フィット感は減らず、指に装着するのに充分だった
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7. 安定性・装着性のバランスをとった
❶靴べら型はやめ、全長を短くした(120mm→85mm)
○ 指を入れやすくなった
○ 装着しやすさと、装着時の安定性のバランスが取れた
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8. 作業療法士の先生からアドバイスをいただいた
ここで作業療法士の先生にアドバイスをいただきました。
☆ 拘縮が強い方ように、第1関節をベルトで固定したい
☆ 5本指が1つの製品で対応できるように
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9. 延長パーツ追加で5本指対応とした
❶ 延長パーツを制作
○ 5本の指に装着して、つめきりができるようになった
☆ パーツは上下どちら向きでも着脱できると使いやすそう
❷ 延長パーツをネオジウム磁石で着脱
○ワンタッチに着脱でき、使用感がよかった
× ペースメーカー等と磁石の相性がよくなかった
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10.3Dデータ完成
❶ 樹脂のたわみで着脱できる延長パーツへ変更
○ ワンタッチで着脱でき、使用感がよかった
○ 上下どちら向きでも着脱でき、使用感がよかった
完成品.stl
完成品
3Dプリンターで出力したものに、面ファスナーを接着剤で固定して完成。
--------- 使った道具 ---------
・3Dプリンター
・ラジペン/ニッパー
・はさみ
・接着材
------------ 材料 ------------
・PLAフィラメント
・面ファスナー
寸法を変更し、カスタマイズもできます。
▶︎リングの径 → 指の太さ
▶︎長さ → 指の長さ