なぜ作ろうとおもったか?

職場での短時間の休息をとるのに、
枕を持っていくのは大げさで、かつ、市販品では体に合わないという話が合った。

Makerなら作るしかないでしょ。
棉に囲まれるよりも造形物に囲まれる方が幸せ。

・・・ということで、
オーダーメイドのオフィス用の「お昼寝枕」をつくってみようということにした。

オフィス用のお昼寝枕の工夫


柔らかさ、形を調整できる

やわらかさ、高さは枕にとってもっとも重要。

同じように3Dプリントで枕を作りたいと思ったときに、
自分でやわらかさや高さを再調整をできるように、
スライサーから調整できるパラメーターに絞った。

一般的な3Dプリンタで作ることができる

一般的に購入が可能な3Dプリンタの造形のサイズの中で作成。
自身で3Dプリンタを持っている方や、環境にある方は作ることができる。

印刷が簡単で失敗するリスクが少ない

3Dプリントをするにあたり、印刷トラブルは多々発生する。
自宅で枕を印刷するのであれば、失敗を少なくしたいと考え、
素材や形状についても失敗が少ない方法を考えた。

0.環境

プリンタ:QIDI Tech
モデリング:Rhinoceros
スライサー/ホスト:Simplify 3D
吸着剤:マスキングテープ

1.素材の選定

枕といえば、やわらかい素材なので、
柔らかい素材をいっぱい印刷し、素材と仲良くなることからはじめた。

※フィラメントの説明の写真は、各社ホームページの出展になります。

Ninja Flex

<Temperature>
エクストルーダー:225℃
ヒートベッド:None
<Speed>
15mm/sec
<Feature>
・印刷後もかなり柔らかい
・調整が整うと安定的な印刷が可能

FilaFlex

<Temperature>
エクストルーダー:245℃
ヒートベッド:None
<Speed>
40mm/sec
<Feature>
・印刷後はかなり柔らかい
・フィラメントの引き込む量による屈曲が起こりやすい
・温度と速度の調整が比較的難しい

PolyFlex

<Temperature>
エクストルーダー:230℃
ヒートベッド:None
<Speed>
60mm/sec
<Feature>
・印刷後は比較的柔らかい
・他のFlex素材と比較し、早めに出力しても、安定的に印刷できる。

Fabrial-R

<Temperature>
エクストルーダー:170℃
ヒートベッド:70℃ (吸着剤:シワなしPIT)
<Speed>
45mm/sec
<Feature>
・印刷がやや難しく、吐出率などの調整にが必要
・ソリの発生があるが、ノリ(シワなしPIT)で対処可能
・皮膚刺激性テストをクリアしており、安全性が高い

Willow Flex

<Temperature>
エクストルーダー:200℃
ヒートベッド:None
<Speed>
80mm/sec
<Feature>
・バイオプラスチック男性フィラメント
・PLAとほぼ同様の速度で印刷可能
・フレックス系だが、やや硬め

LinFlex

<Temperature>
エクストルーダー:220℃
ヒートベッド:None
<Speed>
15mm/sec
<Feature>
・積層痕が綺麗
・印刷が比較的簡単
・ABS/PLAとの接着性に優れている

◎使用素材の確定!!「PolyFlex」

・柔らかさ
・印刷の安定性
・積層痕の綺麗さ

の点から、
お昼寝用の枕を作るために適しているとし、
「PolyFlex」を選択した。

2.モデリング

円柱を作成。
横幅を縮めて、枕っぽくモデリング。

フレックス系は、印刷で左右のブレによる印刷ミスが起こりうるため、
吸着をしっかりして、ずれの少ない形を選択した。

3.Infill調整

充填率を調整。
各種スライサーの設定で変更する。

4.充填パターン調整

充填パターンでも柔らかさが変わると考えたため、
比較を行うこととした。
今回は、Rectilinear、HoneyCombを比較。

Rectilinear


Honeycomb


5.印刷

PolyFlexに最適な設定にしていきます。
<Temperature>
エクストルーダー:230℃
ヒートベッド:None (マスキングテープ)
<Speed>
45mm/sec
<充填率>
90%

6.寝てみた、つぶしてみた

作成した枕を比較するために、
「寝た時の様子」と、「潰してみた時の様子」の比較を行った。

① Infill 15%、Retractor

握った感じは悪くないが、寝てみるとやや硬い。
高反発枕といった印象である。
充填率を下げてみることにした。

② Infill7%、Retilinear

半分の充填率にしてみると、寝心地はかなり改善。
寝てみると頭がしずみこみ、安心感がある。

沈み込みを確認できたので、充填率7%のまま、
充填パターンによる比較を行うことにした。

③Infill 7%、Honeycomb

Rectilinearと比較し、やや反発がある。
沈み込みがあり、支えがある形はさしずめ、低反発枕のようであった。

積層パターンの違いによる、沈み込みのちがいはあるようだ。
個人的には、かなり満足のいく安定感。

④-1 半分硬くて、半分やわらかい

積層パターンと充填率を比較しているうちに、
自宅の枕の裏表の反発に違いがあることに気づいたため、
支えを作るような形で充填パターンを変えてみた。

④-2 半分硬くて、半分やわらかい

どれよりも受け止めは良い。
裏表で柔らかさが変えられるので、気分によって変えられるのが良い。

しかし、③の方がふかふかしていて気持ちよかった。

実際に使ってもらった意見

③が一番心地よい。
好みによって、もっと柔らかいのが好きな人もいると思う。

・色が黄色だったので、リラックスにつながる色を検討しても良いかも。
・持ち運びできる良い大きさ。
・3Dプリンタで作ったものが、想像以上に柔らかかった。
 硬いものではなく、柔らかいものが出てくることに驚いた。

7.まとめ

思ったよりも寝やすくて驚きました。
昼寝には最適な大きさと、柔らかさを実現することができた。

③Infill7%,Honeycombが最高!!

④で柔らかさと硬さ、支えの両立を果たそうと思ったが、
③の柔らかさが良いという結果になった。

厚みによって、変わってくると考えられるため、
今後は厚みの調整も行って作ってみたい。

積層パターンのちがい

積層パターンによる感触の違いは想像はしていたが、
体感することで、より実用性を感じた。

おわりに

想像以上に3Dプリントしたものは、
枕やクッションとして使うことができる可能性を感じたため、
今後もトライをしていきたい。

「造形物で寝れるなんて幸せです。」

本物の枕をつくる

造形サイズが自宅プリンターで限られていたため、
実寸サイズの造形が可能なプリンターを用いて、寝る時用の枕を作成する。
頭の形に合わせた枕も作成してみたい。

積層パターンと身体(おでこ)を通して仲良し

3Dプリンタで印刷可能な様々な素材と仲良くなることができた。
さらに、積層パターンも身体(おでこ)を通して体験することで、仲良くなれた気がします。

協力してもらった家族とも、素材の柔らかさに驚きと新たな発見を得て、一緒に楽しむことができた。
これで3Dプリンタも家族の一員です。