電動車いすについて
電動車いすはとても便利な移動補助具です。特に最新の電動車いすは走破性のみならずデザイン性にもすぐれています。
その一方で、操作性においては、利用者の多種多様なニーズにこたえるために、利用者の使い方に応じた工夫が必要ということが判りました。
電源ボタンが押しにくい
このモデルの電動車いすの電源スイッチは肘掛の根本側にちかいところに位置しています。我々がお話をした利用者さんは、両手の握力が入りづらいというコンディションをもっていらっしゃるため、このスイッチの位置ではかなりの努力をしないとオンオフができないという苦労をされていました。
ソリューションの検討
電源ボタンを押しやすくするアイデアを検討。
(パターン1)突起つきリストバンドでボタンを押す
(パターン2)ボタンにむかってスライドする突起物を肘掛に装着
(パターン3)足ふみペダルで電源ボタンを押す
(パターン4)ボタンカバーでもとのボタンを拡大する
利用者さんのコンディションや要望、そして実現可能性から、パターン4で行くことに決定しました。
設計について
電源ボタンを押すCOOLな手段をいろいろ考えたものの、
(1)誰でもかんたんに脱着できること
(2)車いす本体に大幅な加工をしないこと
(3)シンプルな車いすのデザイン性を阻害しないこと
(4)分解できるという車いすの携帯性を阻害しないこと
…という要件を満たすため、手元にあったマジックテープつきナイロンベルトで装着するボタンカバーに着地しました。
写真はホワイトボードを使っての意思疎通3回目。グループワークをするためにホワイトボード(もしくは模造紙)はなくてはならないアイテム。
まずは1つ作って試行錯誤
まずは45mm×45mm×19mmの立方体に30mmのスリットとへそがついたシンプルなものをプロトタイプとしました。デザインしたものが現実に機能するのか、やってみなければわからないので、まずはコンセプトモデルをサクッと出力する。
実際に出力してみると、角がはりすぎていて手のひらが痛い。こういうことも現物を触ってみないと判らない。
現物とフィードバックで現場が盛り上がる
実際に出力したものを電動車いすに装着して利用者さんのフィードバックを頂きました。お想定よりもゆっくり押さないと反応しないものの、おおむね良い感じ。フィードバックがもらえると、チームが俄然盛り上がります。
フィードバックをもとにVer2を作成
Ver2では電動車いすとの密着度をあげるために形状を変更し、利用者さんがけがをしないように面とりを実施。また『福祉用具は(機能性重視で)かわいらしくないものが多い』というフィードバックをもとに花柄を追加してみました。
最後の仕上げにバリ取り
最後の仕上げとして、利用者の喜ぶ姿を想像しながらバリ取りします。写真では見えませんが、最高の笑顔でバリを取っています。いいモノづくりをした証(^^)
データ共有
今回作った電動車いすの電源ボタンカバーの3Dデザインはtinkercadで見つけることができます。
https://www.tinkercad.com/things/5tjqIeSoks2