Title : タイトル 普段使いのお気に入りの帽子を保護帽に!3Dプリント製緩衝材
For whom:対象者
てんかんなどによる突然の意識消失や発作等によって転倒する可能性があり、転倒時の頭部への衝撃を軽減したい方を対象とする。また、下肢や歩行機能に制限があり、転倒しやすい方や、ふらつきなどにより転倒リスクのある方も対象とする。
Why : なぜ作ろうと思ったのか
今年に入り、私は突然の意識消失による転倒を8回経験した。転倒する瞬間には手を出して身体を支えることができず、頭から床に倒れることもあった。また、障害物との距離を適切に把握できず、壁に真正面から衝突して額にあざを作ったこともある。「次に倒れたとき、頭を強く打ったらどうなるのだろう」という不安を抱え、主治医に相談したところ、「将来的には保護帽を使用する必要が出てくるかもしれない」と説明された。 そこで福祉用品のカタログを調べたが、掲載されていた保護帽を見て、私は着用することに心理的な抵抗を感じた。
Why : なぜ作ろうと思ったのか 続き
安全のために必要なものであっても、好きな服や帽子を選んで外出するという当たり前の楽しみまで失いたくなかった。「安全を守るためには、おしゃれを諦めなければならないのか」「お気に入りの帽子を、そのまま安全のための道具にできないか」。そんな疑問から発想を転換し、普段使いのキャップや帽子そのものを「保護帽」に変えられる3Dプリント製の緩衝材を作ることにした。
材料
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1.Bambu Lab A1 mini (Bambu Lab社)
2.Flex TPU TPU-AIR Green (SIRAYA Tech社)
3.3D CADソフト : Shaper 3D
4.デジタルノギス (ダイソー社)
How:どのように作成したか
普段使用しているツバ付きキャップの裏側を観察したところ、8枚の三角錐状の生地を縫い合わせることで立体構造が形成されていることに着目した。そこで各部の寸法を測定し、CADソフト「Shapr3D」を用いて、8枚の三角錐を放射状に配置した緩衝材の3Dデータを設計した。設計したモデルは使用する3Dプリンターの最大造形サイズを超えたため、スライサーソフトの「パーツ分割」機能を用いて複数のパーツに分割し、3Dプリント後に接着剤で結合することで、一体型の緩衝材として完成させた。
STLファイル
試行錯誤のプロセス
頭部を転倒時の衝撃から保護する緩衝材として、「クッション性」は不可欠な条件であった。当初、自宅の3Dプリンター「A1 mini」で使用可能なTPU90AおよびTPE83Aを試したが、緩衝材としては硬く、求める柔軟性を十分に得られなかった。そこで素材と造形条件の検討を重ね、最終的に発泡TPUを採用した。発泡条件を調整してショア硬度65A相当とし、さらに充填密度15%、充填パターンをジャイロイド、厚さ1cmに設定することで、必要な柔軟性とクッション性を備えた緩衝材を実現した。
Outcome:対象者の何がどのように変化する道具なのか
本作品は、
転倒時の頭部保護と「好きな帽子を身につけたい」という思いを両立させる
、3Dプリント製の緩衝材である。保護帽への心理的抵抗を抱える転倒リスクのある方が、普段使いのお気に入りの帽子を継続して使用できることで、安全性だけでなく外出時の
自己表現や生活の楽しみも守ること
を目指した。帽子の立体構造を基に設計したオリジナル形状と発泡TPUによるクッション性を組み合わせ、
実用性・機能性を追求する
とともに、
帽子本来のデザインを損なわない美しさ
にも配慮した。
Outcome:対象者の何がどのように変化する道具なのか 続き
また、CADデータから同一形状を再現できるため、
帽子のサイズや形状に合わせた調整・複製が可能
である。「安全のためにおしゃれを諦める」のではなく、安全と自分らしさを両立させることが本作品の
独自性
である。
今後の展望と課題
実際に医療・福祉の現場で保護帽が必要と判断された場合は、安全性が検証された既製の保護帽を使用することが最も重要である。
本作品は既製品に代わるものを提案することを目的としたものではなく、「3Dプリンターを活用することで、このような生活補助具も個人のニーズに合わせて作ることができる」という可能性を示すことを目的として開発した。
今後の課題は、転倒時の衝撃をどの程度軽減できるのかを客観的に評価し、材料、形状、厚さ、内部構造等を検討することで、安全性と耐久性をさらに高めることである。また、帽子の形状やサイズに応じた設計データの展開を進め、個々の使用者に適合した緩衝材を製作できる仕組みの構築を目指したい。
謝辞
本生活補助用品ないし福祉用品(自助具)は3Dプリンターを⽤いた個⼈による発明であり、本成果が、同様の課題を抱える当事者や福祉⼯学に携わる開発者の⼀助になることを切に願います。最後に⽇々、家族を始め、私の⽇常⽣活を⽀えてくださっている訪問介護⼠、訪問看護師、訪問診療医、訪問薬剤師の皆様に⼼より感謝申し上げます。