制作にいたった理由

私たちは、普段から、「組み合わせる」ことによって生まれる様々な雰囲気を楽しんでいる。
例えば、日々のファッション。ごはんの献立。花束作り。

あと、私たちは昔から無類の「交換」好きだと思う。
小学生はペンのフタを違うペンと交換して遊び(時代は変わっているかもしれないが)、
高校生は色違いのシーブリーズのフタを交換して青春を謳歌して、
大学生はスマホの写真アプリで顔交換して、爆笑している。

つまり、組み合わせるたり、交換したりする行為は老若男女が楽しめるのである!

そこで、今までCGでしか楽しまれることのなかった
キメラ動物に注目して、手に取って組み合わせを楽しめるフィギュアを制作することにした。

フィギュア化する動物選び

フィギュア化する動物選定のポイントは、ずばりフィギュアにしておもしろいかどうか、である。
  • なるべく似ていない動物の方がおもしろい。
  • 頭だけ、体だけで元の動物が分かる特徴のある動物がよい。
  • 色がバラバラだと組み合わせたときに、一体感がないだろう。

色々と考えた結果、私の選んだ動物がこちら。
  1. ハト(絶対おもしろい)
  2. ウマ(ちょっとカッコいい担当)
  3. ネコ(狙い過ぎない動物も必要)
  4. アルパカ(顔がずるい)
  5. ウサギ(かわいらしい担当)
  6. ワニ(他の動物が平和過ぎるから)

おおまかな形を作り出す

Fusion360でおおまかな形を作った。 頭と体の境界を一直線にしてしまうと、境界の違和感が強調されてしまう。

そこで、なるべく頭と体の境界を感じさせない工夫として、 頭を少し体に被せるように形を作った(手書きイラスト参照)

  1. 首(頭と重なる部分)となる円柱を作る
  2. 円柱に合わせて、体と頭をスカルプトモードで作る
    最初はミラーを使って、左右対称の状態でモデリングし、
    あらかたできた時点でミラーを解除し、ポーズをつけた
  3. マグネットをつけるための穴をあける

    ●本作品のポイント「組み合わせ」を実現するために、首の太さ、頭部の首がはまる穴の寸法をすべての動物で統一した。数値で寸法がとれるところはCADのよいところだ。

ディテールを作りこむ


Fusion360で作ったおおまかな形をSTL形式で保存し、
Meshmixerに読み込む。 顔などの細かい部分をsculptやselect>transformを使って、リアルな感じに仕上げていく。
ここで、頭と被さる首は大きさを変えないように注意した。

色を付ける

いよいよ色付けである。
色付けのリアリティがこのフィギュアのおもしろさを左右すると言っても過言ではない。
特に表情は大事である! 色付けはMeshlabで行った。

  • 動物ごとにホワイト、ブラウン、グレーの3色で
    バリエーションを作った
  • 同じ動物でも様々な雰囲気を味わえるよう、模様や表情を変えるように工夫した
  • 同じ色の頭と体を組み合わせたときに色がぴったりになるように
    それぞれの色のRGB値を決めてから色塗りをした。

●同じ形の複製が容易に行えるというデジタルデータの利点を活かして、 多くのバリエーションを生み出すことができた。

3Dプリントする

インクジェット粉末積層方式(Zprinter650)でプリントした

デパウダ

3Dプリントし終わったフィギュアたちを、石膏のパウダーの中から掘り出した。
表面にはパウダーが残っており、全体的に白っぽい。
これではせっかくの色付けが残念なことに・・・

ブラシやピンを使って表面についたパウダーを念入りに落した。
歯間ブラシは細かい積層の溝に入ったパウダーもよく取れる。
ワニの歯もしっかり磨いてあげた。

それにしても数が多く、根気が必要だった。

含浸


表面のパウダーをよく落とした後は、専用のボンド(Z-bond)で含浸をした。
含浸を行うことで、強度があがり、色が鮮やかになる。

マグネットを貼り付ける

頭と体にそれぞれマグネット(ネオジウム、直径6mm)を、充填接着剤で貼り付けた。
接着剤が乾く前にフィギュア同士を近づけると、
マグネットがくっついてしまうため、適度な距離をあけて乾かした。

乾かしているときの写真(2枚目)の 謎のメッセージ性が強い。
早く頭をつけてあげたい。

完成!

全部で20種類(体20種、頭19種)のキメラニマルフィギュアがついに完成! かなりの量のデータを作ったと思う。
なんと400通り近い組み合わせが楽しめるぞ!

さらに、頭と体はマグネットでくっつくので、首を好きな向きにすることができます。 少し首をかしげるとおもしろさ倍増。