Title
ペットボトルを尿瓶に利用できるコネクタ(小児サイズ)
・stlファイル
ペットボトル尿瓶コネクタ(くの字型)
ペットボトル尿瓶コネクタ(ストレート)
ペットボトル尿瓶コネクタ(ストレート型キャップ)
※ストレート型の漏斗を2mm長くした改良版、立てて保管可能。
ペットボトル尿瓶コネクタ(ストレート改良版)
※ストレート型の漏斗を再延長&径サイズアップ、ペットボトルをほぼ水平にしても漏れや逆流が発生しにくい構造を実現。
ペットボトル尿瓶コネクタ(ストレートLONG版)
【制作環境】
PC:Windows11
CAD:Tinkercad
3D Printer:Bambu A1mini
スライサー:Bambu Studio
フィラメント:ELEGOO RAPID PETG(半透明クリア)、SainSmart TPU(青、簡易キャップ用)
※3Dプリンタは2024年10月購入。CADはビギナーレベルで、今回Tinkerで本格的に取り組んだことで経験値が爆上がりしました。
For whom
対象者は、神経難病のために四肢麻痺で全介助の息子(12歳)です。乳児のときに神経難病を発症し、首座りもなく手を動かせないので、排泄はすべて介助が必要となります。
排尿コントロールはできるようになったのですが、子供が利用できるサイズの尿瓶は市販されていないため、幼児の頃からペットボトルを代用してきました。ペットボトルはどこでも入手でき、汚れたら気軽に廃棄できる利便性があります。
しかしペットボトルの飲み口の形状は、尿瓶としては正直使いづらいと感じてきました。
Why
息子の成長や行動半径の広がりに伴い、ペットボトルをそのまま使うのが一層難しくなってきました。ペットボトルの口径よりゆとりがあるサイズで、車椅子に座ったままでも使いやすい(介助しやすい)形状が欲しい、排尿開始を待つ間に介助者が少々手を放しても大丈夫な形が欲しい(仰向けの場合のみ)、と思うようになり、ペットボトルの利便性はそのままにコネクタを開発することにしました。
※一般的な尿瓶は成人向けサイズしか市販されていません。成人男性の外出時、その大きな尿瓶は持参しづらく、我慢してオムツにするしかないとヘルパーさんや訪問看護師さんに聞きました。こういう尿瓶コネクタがあれば問題解決になると思います。
How
ペットボトル接続という前提で
イメージはすぐ湧きました。まずペットボトル接合部を探し、COCRE HUBで見つけた「
ペットボトルダンベラー
」を参考にしました。
上部の管はTinkercadで見つけたパーツを応用。息子に協力してもらい、ベッド(仰向け)と車椅子に座った場合とで適切な角度や長さを割り出しました。試作は30個近く。
特に筒の内側の形状や角度には工夫を重ねました。
フィラメントは最初は白色でしたが、
「少し透けるくらいが良い」
と感じ、半透明PETGに変更。取っ手や簡易キャップも作り、
利用シーンに合わせた
2
パターンに
しました。(簡易キャップはストレート型のみ)
利用シーンを念頭に置く
ストレートはベッドでの仰向け、くの字型は座位での使用
を前提に、ストレート型はよりフィットしやすい細身の仕上がりに。
サイズは2歳~12歳の男児を想定。トイトレにおすすめ。
使用後はコネクタを水で洗い流し、取っ手を引っ掛けて乾燥可能。
洗浄し繰り返し使える
。
急ぐ時も迷わない。
くの字型は上下が判別しづらい形でも、取っ手が目印になるだけでなく、ペットボトルと接続する際に指が引っかかり回しやすい(トイレがギリギリでも手早くできるように)。
簡易キャップ
をつけることで、ペットボトルを誤って横倒しにしても大惨事は防げる。※
完全に密閉するものではないので要注意!
印刷時のポイント
半透明PETG
がベター。(少しの透け感で位置が確認しやすく、完全クリアより双方が受け入れやすい)
充填率10%、
サポートは
必須領域のみ
で問題無し。
簡易キャップはより柔軟なTPU
がおすすめ。(PETGやPLAでも使用可能)
当初は「縁なし」で、バリが出ないよう性器が触れる側を底面指定して印刷したが、本ページに掲載のものは全て滑らかな「縁あり」なので、ペットボトル接続側が3Dプリンタのプレート面に接地して印刷する形となっている。
ペットボトル接合部の工夫
最初はペットボトルのフタ上面部分を外して単に管を付けたところ、コネクタを何度も回して接続する必要があり、ボトルがどんどん管の奥へ入ってしまい、着脱が面倒に感じた。
次にドーナツ型の薄い蓋状パーツをフタのあったところに設置したら、そこに尿や洗浄後の水も溜まりやすく拭き取りづらいと判明。
すり鉢状パーツ(底面は穴あり)に変更し、ペットボトルの口サイズとピッタリ仕上げるも、角度によってペットボトル接続部とのわずかな隙間で漏れが発生。
ストレート型のみ、ペットボトル側に漏斗の先端が
入り込むよう設計変更。さらにストレート型のLONG版はより長く太く、角度をつけて漏れを防げるようになった。
尿逆流・尿漏れの対応
ペットボトルのフタに穴を開けただけでは隙間から尿が漏れるため、
漏斗状の先端をフタに突き通す形を採用(※ただしボトルをある程度傾ければ、中の液体は当然漏れる)
くの字を試す中、仰向けで尿の勢いが少ない時、コネクタ内の尿が性器側へ逆流する現象が発生。
仰向けならストレート型が尿がペットボトル側へ落ちやすいと判明
(液体が流れる少しの角度は必要)。
使用後の尿入りボトルを誤って横倒しすることを想定し、簡易キャップをTPUで作成。
完全な漏れ防止ではないので要注意。
ペットボトル飲み口の内径や形状はメーカーにより若干差があり、
使用中に隙間から漏れが発生する形もある。
Outcome
息子本人はより快適に、尿漏れも発生せずに排尿をすることができるようになりました。
毎日何回も排尿するので、この状況はQOLに直結し、本人も介助側も満足度が高いです。
特に車椅子に座っているときの排尿は、息子も介助者側も格段にやりやすくなりました。訪問看護師の皆さんにも好評です。
今年、息子は初めて飛行機の旅を経験し、大阪万博へも行きました。行動範囲がどんどん広がる中、また思春期を迎える息子にとっても、排尿介助がスムースなのは非常に意義があります。暮らしをよくするための工夫をこれからも続けていきたいです。
Size
仕上りサイズは次の通り。(判別のため着色しています)
【ストレート型:紺色】
・底面から最上部までの高さは75.7mm(簡易キャップを含まず)
・上部の挿入口(内径)は、28mm×23mm
・横幅は最大46.0mm(取っ手部分を含む)
・簡易キャップの高さは35.0mm
※ストレート型のみ簡易キャップあり
【くの字型:黄色】
・底面から最上部までの高さは87.8mm(キャップは作成無し)
・横幅は最大47.76mm(取っ手部分を含む)
・管の外径32.4mm
・曲がり角度は20度