SAXduinoとは?
SAXduinoは、電子吹奏楽器として開発したSAX型のArduinoです。以下のような特徴があります。
6本の指だけで3オクターブもの演奏が可能
両手の人差し指、中指、薬指の計6本だけで演奏します。この6本指だけで3オクターブもの音域が演奏可能な新しい運指を開発しました。
電池駆動でスピーカー付き
単4電池2本の電池駆動で、本体にアンプ、スピーカーまで内蔵しているのでスタンドアロンで動作します。
MIDIコントローラに変更可能
mi.1(bluetooth MIDIの回路)を追加すれば、BLE MIDIによるMIDI Contorollerに改造することも可能です。
Arduino IDEで開発可能
SAXduinoの名前の通り、Arduino IDEにてファームウェアの開発が可能です。ATmega328が2個搭載されており、片方がタッチセンサ、気圧センサなどを制御、もう片方がソフトシンセとして機能しています。
SAXduino Boardの製作
SAXduino Boardに電子部品を実装します。リフローと手付けの両方行います。
基板の
回路図はこちら
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基板の
ガーバーデータはこちら
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基板にリフローで部品実装
ステンシルでクリームハンダを塗り、写真の指示書に従い、部品を載せます。そのあと、リフロー炉でハンダ付けを行います。
D7/D8/R15/R16はソフトチェック用のLEDなので、必要なければ付けなくてもいいです。
クロックの1MΩの抵抗も、付けなくても動作するので必要ないです。
LEDのハンダ付け
基板の裏面のフルカラーLED6個をハンダ付けします。
WS2813Bを接着剤で一旦仮止めしておくと、スムースにハンダ付け出来ます。
コネクタ、ケーブルを実装
2箇所の6pinのISP端子をハンダ付けします。
2箇所の2pinXHコネクタをハンダ付けします。
C13のコンデンサ(100μF電解コンデンサ)をハンダ付けします。
気圧センサーを実装
写真のように気圧センサーの足を折り曲げて、不要な方(センサの突起側)の3つの足を切ります。
気圧センサーの真ん中のピンを基板とハンダ付けします。
「MagicFlute Proto14」の基板は電源とGNDの位置が間違っているので、ケーブルを使って、クロスするように気圧センサーの二つのピンと配線します。
気圧センサーは
MIS-2500-015G
を使用します。
ファームの書き込み
二つのATmega328Pへファームウェアを書き込みます。
U1のATmega328Pはソフトシンセのファームを書き込みます。こちらをシンセ側と呼びことにします。U3のATmega328Pはセンサー処理のファームを書き込みます。また、こちらをセンサ側と呼ぶことにします。
Arduino IDEの設定
Arduino IDEに必要なBoardとLibraryをインストールします。
Boardは「
ATMegaCore
」を、Libraryは「Adafruit NeoPixel」「MsTimer2」をインストールします。
また、書き込み時のツールメニューの設定は、「ボード:ATmega328P」「Clock:External(16MHz)」としてください。
センサ側ファームの書き込み
基板を作って最初にATmega328Pにファームを書き込む時は、まずブートを書き込みます。ツールメニューの「ブートローダを書き込む」を選びます。
センサ側のファームウェアのプログラムは
ここからダウンロード
して、Arduino IDEで読み込みます。
初めてセンサ側のファームを書き込む場合、configuration.h の FIRMMODE を、WRITE_CNFG_FIRST_TIME_TO_MBR3110 にし、またタッチセンサのセッティングを変えた時は、WRITE_NEW_CNFG_SETTING にします。
そのあとに、 NORMAL_MODE にして再書き込みします。
シンセ側ファームの書き込み
シンセ側のファームウェアのプログラムは
ここからダウンロード
して、同じくArduino IDEで読み込みます。
「SERIAL_SPEED」を31250に変更したあと、書き込みを行います。
タッチスイッチ部の製作
静電センサによるタッチスイッチと、3Dプリントによるタッチスイッチフレームと、SAXduino Boardを一体化した部品を製作します。
タッチスイッチフレームの3Dプリンタはこちら
。
アクリル板をカット
レーザーカッターを使い、厚さ2mmの乳半のアクリルをレーザーカット用の
このイラレのデータ
でカットします。
銅箔テープでタッチセンサ作成
銅箔テープ(粘着側も導通するタイプ)を1cm四方程度の任意の形で切ります(写真では円)。この際、銅箔テープのおもて面に事前にマスキングテープなどでお好きな色や模様を付けておくことも可能です(写真では黒いマスキングテープを貼っています)。
6つの銅箔テープで作った電極を、アクリル板の各六角形の中央に貼り付けます。
ポリウレタン線のハンダ付け
タッチセンサを貼ったアクリル板を裏返しにすると、6箇所の四角い穴があるので、そこに同じく粘着側も導通する銅箔テープを4mm四方の正方形に切って、その穴の中で粘着部同士を貼っていきます。
3,4cmほどに切ったポリウレタン線の片側を、今貼った四角い銅箔テープの上にハンダ付けします。ポリウレタン線は両側とも事前に皮膜を剥がしておいた方がよいでしょう。
タッチスイッチフレームとセンサー組み立て
3Dプリントしたタッチスイッチフレームに四角ナットを4箇所使用します。写真の場所に四角ナットを接着します。接着が乾くまでネジでナットを止めておくといいでしょう。
タッチセンサーのアクリル板とタッチスイッチフレームを、真ん中のネジ穴一箇所でネジ止めします。
タッチスイッチフレームに基板取り付け
基板のタッチスイッチ用の六箇所のスルーホールに、タッチセンサーにハンダ付けしたポリウレタン線を通します。基板のLEDのある面がアクリル板側になります。
タッチセンサーと基板を二箇所、15mmの長さのネジでネジ止めします。
ポリウレタン線と基板をハンダ付けします。
筐体部品の製作
SAXduinoの筐体は、MDFによる全体ボディ、3Dプリンタによる吹き口からなります。これに、3Dプリンタによるスピーカーフレーム、そしてタッチスイッチ部を合わせて最後に全体を組み上げるので、その各部品を製作します。
吹き口の3Dプリントはこちら
スピーカーフレームの3Dプリントはこちら
筐体用にMDFをカット
レーザーカッターで筐体用に、2.5mm厚MDFをカットします。レーザーカット用の
イラレのデータはこちら
です。
カットした部品を以後、以下のように呼びます。
底板
上板
側板
ベル横
ベル上
ベル下
側板は2枚ありますが、前後対称なので右と左の区別はありません。皿ネジを使う場合、必要に応じてMDFに対してザグリ加工します。
スピーカーフレームの組み立て
3Dプリントで製作したスピーカーフレームの6箇所の穴に四角ナットを埋め込みます。ナットが落ちないようテープで穴を塞ぎます。
スピーカーにコネクターをつけたケーブル(7cmほど)をハンダ付けします。
スピーカーをスピーカーフレームに取り付けます。小さな四箇所の突起を、スピーカーのネジ穴に嵌めて、接着剤でスピーカーを貼り付けます。
吹き口にナットを入れる
吹き口の6箇所のポケットに、四角ナットを入れ、テープで止めます。
底板に電池ボックス等の取り付け
底板に電池ボックスと電源スイッチ、それから昇圧回路を取り付けます。
指抑えの取り付け
演奏時、右手の親指を引っ掛けるための指抑えに、スペーサーを使います。必要なければつけなくても構いません。
昇圧回路の配線
昇圧回路にSAXduino Boardに接続するコネクタのケーブル(10cm程度の長さ)を出力のGNDとVOUTにハンダ付けします。
電池ボックスのマイナスケーブルを入力のGNDに、スイッチとVINをケーブルで繋げます。
電池ボックスのプラスケーブルをスイッチに繋げます。
電池ボックスとスイッチの取り付け
電池ボックスを両面テープで取り付けます。底板の長細い穴から1.5cmくらいのところに貼ります。電池ボックスのケーブルはスイッチ側に向けます。
スイッチを底板にネジ止めします。
全体の組み立て
タッチスイッチフレームと側板の組み立て
タッチスイッチフレームと側板を4箇所、ネジで結合します。
吹き口の取り付け
吹き口の突起と気圧センサ側の突起に、チューブを嵌めます。
吹き口と側板を4箇所、ネジで結合します。
空気抜きの突起にチューブを嵌めます。
ベル板と上板の取り付け
スピーカーフレームと側板とベル横を4箇所、ネジで結合します。ベル横のネジは10mmの長さが必要です。
上板を2箇所、ネジで結合します。
ベル上下を接着
ベル上下の板をあらかじめ曲げてクセをつけておきます
ベル横に切り口に接着剤をつけて、ベル上下の板を接着します
ゴムを巻いて、接着剤が乾くまで待ちます
底板の取り付け
底板に取り付けた配線類をうまく束ね、電池ボックスが本体内部の部品と干渉しないことを確かめます。
あとは、電池をボックスに入れ、底板を本体に取り付けます。底板のネジを締めれば完成です。
楽器の調整
調整するポイントをいくつか挙げておきます。
ボリューム調整
写真のようにSAXduino Boardには三つのボリュームが付いています。
RV3はアナログボリュームですので、必要に応じてご利用ください。
RV1, RV2は音源側のATmega328Pに繋がっており、なんらかの調整を行うことが可能となっています。ファームウェアを改造して、何かに使ってみていただいて構いません。
呼気の抵抗調整
吹き口からの呼気は二股に分かれ、一つはセンサーに、もう一つはそのままシリコンパイプを通して外気に出されます。
外気に出ていく息の量が多いほど、空気の抜けが多くなり、気圧は下がり、音量は小さくなります。ある程度呼気の気圧を高めにしておいたほうが、多彩な音楽表現が可能となりますが、息が苦しくなり演奏も大変になります。
このパイプからの空気の抜け具合を、いろいろな方法を使って試してみてください。
BLE MIDI版の組み立て
QUICCO SOUNDから販売されている mi.1 の基板を用いて、BLE MIDI を送信する機能を追加します。SAXduino Boardはすでに、mi.1 と直接繋がる端子を用意してあるので、ケーブルを繋ぐだけでBLE MIDIが利用できます。
mi.1をつなげる時は、本工程を「SAXduino Board製作」に挿入してください。
ケーブルの繋ぎ方
BoardのJ12:mi.1のH2
BoardのJ11:mi.1のH4
BoardのJ13:mi.1のH6
BoardのJ14:mi.1のH8
mi.1とSAXduinoを配線する
0.2mmのポリウレタン線4本を使って、mi.1とSAXduino Boardにポリウレタン線をハンダ付けして繋げます。
写真では、Boardの端に垂直になるように mi.1 を配置してみました。