はじめに


きっかけ

ファブラボのプロジェクトラボで竹林問題の話になり調べ始めた。
また、学校の通学路でも荒れた竹林を見かけたりしたため、なんとかこの問題を解決できないかと思った。

調査

各地で竹林が放置され、その繁殖力の強さから周囲の植生に侵入し既存の樹種が置換されている。
生態系の単純化や崖崩れの原因になるなど、問題となっている。→竹害
昔は、食用やいろいろなものの材料に使われてきた竹が放置されてしまう理由。
1. 安い筍が輸入されることによって、採って食べる人が少なくなった。
2. 建築様式が変わったことによって竹が使われなくなっていった。(土壁など)
3. 身近なものにも、プラスチックなどの竹よりも簡単に加工できる素材によって竹は使われなくなってしまった。(加工するのに職人の技が必要)
4. 竹林の所有者の高齢化によって竹林が管理できなくなっている。

レポート① 荒れた竹林

成長する場所を求めて狭い範囲に密集して生えてしまっている。しっかり根が張れないので倒れかかってしまう。電線に接触して危ない。
竹林は放置されると、このように荒れてしまう。

竹林管理とは?

竹を使ったモノづくりをするにあたり、鎌倉市岩瀬にお住まいの脇田さんから竹を切り倒す方法をレクチャーして頂き、真竹を1本採取した。脇田さんのお宅の裏山は100坪くらいが竹林になっており、これらをすべて脇田さんが管理されている。
春に採れる新鮮な筍の味は絶品で、竹を割ってお孫さんたちと流しそうめんをすることもあるそうだ。私にとっては憧れだが、この美しい竹林を維持するためにはどのような管理をしているのか、尋ねてみた。




レポート②「竹林管理の苦労」

脇田さんのお話
◆毎年4~5月にかけて50本ほど筍を掘ります。自分たちで食べ、知人やご近所に沢山配りますが、食べきれないぶんは処分することになってしまいます。
◆竹林にはほどよく光が入るように間引きし、生え方を管理しています。
◆古い竹ばかりが残らないよう7~8年たった竹を年に10本くらい切り、新しい筍をそのまま育て、世代のバランスをとります。新しく伸ばす竹には年号を記しておきます。
◆切った竹は少しは畑などで使用しますが、ほとんどは処分場に持っていくことになります。しかし処理が大変なので、引き取ってもらえないこともあります。

竹林を維持管理していくのは、相当な労力が必要だとわかった。

どのように解決していくのか

もっと竹の使いみちを増やす必要がある。竹炭にしたり、メンマ作りをしたり、いろいろな取り組みもなされているが、私は「ものづくり」の視点から提案したい。職人の技術力がなくても、多くの人が竹の利点を活かしたものを製作できるようにしたい。
みんなが良いと思えるような竹製品のアイデアがあれば、竹の需要が増え、放置竹林にも目を向けられるだろう。

製作物

1. 竹蝋燭
2. メガネケース 
今回は2つの作品しか制作することができなかったけれど、今後も竹製品のアイデアを出し、このプロジェクトを進めていこうと思っている。

製作過程


竹に模様をつける

竹の特徴を活かしたものを作ろうとしたときに一番初めに思いついたのは竹ひごだったが、それだと加工がとても難しくなる。そこで思いついたのが、竹を筒のまま使うことだった。そして一時期我が家でブームだったキャンドルライトを作ることにした。 竹の質感を生かした、雰囲気の良い物を作るにはどのようなデザインが良いのか考えた。

準備

使用するもの
  1. 真竹(外径約50ミリ 内径約40ミリ 厚み約5ミリ)
  2. アガチスの板(3ミリと5ミリ)
  3. Arduino nano
  4. adafruit 全色テープLED
使用する機械
  1. Trotec レーザーカッター
  2. 3Dプリンター Afinia

ハード


竹の加工

  1. 竹を切る
竹らしさを残すために節を残して斜めにカットする
  2. 竹の側面をレーザーカッターでカット&彫刻
レーザーカッターはその名の通り、レーザーを使って彫刻やカットを行うことができる機械
レーザーの焦点が変わってしまうため、竹などの曲面の加工はとても難しい

青海波

まず、青海波と呼ばれる模様をカットしてみた。
PC上でデータを作り、レーザーカッターで加工する。

竹の表面がつるつるでレーザーの光を反射して眩しい…写真が撮れない…と言うわけで完成後の写真を載せます。
左側は綺麗に抜けているのに対して右側は抜けていない。
全く抜けないのでは…という不安は解消されたが、やはり曲面の加工が難しいことを再認識。

七宝文

2回目は七宝文をカットした。
やはり端の方が抜けない。
端の方はレーザー光が広がってしまい、黒い線が濃くなってしまっている。

麻の葉模様

細い線は折れてしまうだろうと思っていたが、綺麗にカットできていた。
この模様が一番気に入ったので、麻の葉模様で本番に進むことにした。

改良

レーザーカッターで抜けない部分をなくすために工夫が必要だと思った。
これまでのテストの結果を踏まえると、確実に抜けるのは中心線から左右約10ミリ、つまり幅約20ミリ程度であると考察できる。
この範囲より外側の部分をカットではなく彫刻にすることで失敗を減らし、デザインも生かすことに成功した。

本番へ!しかし…

この時自分の中で気が抜けてしまっている部分があった。
本番用と決めていた竹で失敗してしまったのだ。
原因は竹の固定が甘く、レーザーカッターの作動中の揺れでレーザー光がうまく照射されなかったことだった。
急遽同じサイズの竹を切り出した。
同じ過ちを繰り返さないようにしなければ…

今度こそ本番

前回の失敗を生かし、加工する竹の真ん中と高さを合わせるためにレゴを使ってチェックする道具を作った。また、転がらないように粘土を土台として利用した。
横幅30ミリ、高さ210ミリのデータを作って加工を行なった。
1列加工するのに20分、3列で1時間。
綺麗に加工することに成功した。
やっとここまできた…!

炎の作成

次は、キャンドルで一番重要な部分になる炎の部品を作っていく。
竹を炎のおおまかな形にレーザーカッターでカットした。
幅が広いと失敗しやすいから、細く割いた。
それを彫刻刀で削り、極薄にした。
大変な作業だったが、彫刻刀での作業はとても楽しかった。

3Dプリンター 筒の作成

竹の中に入れるLEDが直接見えないようにする筒と、蝋燭の炎を取り付けるパーツを3Dプリンターを使って製作した。PLAの白を使用した。
プリンターの造形サイズが110ミリの高さまでだったため、ジョイントを設計して出力した。
竹筒の内径とサイズがぴったりでとても綺麗に出力できていた。

土台作成

竹を支える土台を製作する。
3Dプリンターを使うことも考えたが、竹と木の組み合わせが気に入ったので土台を木で作ることにした。土台の中にマイコンボードを入れるため、中が中空になる構造を考えた。
マイコンボードから出る配線に必要な高さを計測、厚くなりすぎても不恰好になってしまうため、5ミリと3ミリの板を組み合わせて調整した。電源のケーブルを差し込む穴を作り、底をねじで固定し開閉可能にした。
ボンドでしっかりと接着して完成!
最初は側面を綺麗に削る予定だったが、アガチスのレーザーで焼けた色が竹といい感じに会っていたので、そのままにした。

炎を照らすLED

炎を照らすLEDを図のように設置する。LEDは光が広がるように作られているため、レジンでレンズを作り、狙った部分に光を当てられるようにする。LEDと配線、抵抗をはんだづけし、熱伸縮チューブで絶縁した。

コイルを自作してみよう

本当はこの作品は2019メーカーフェア東京に出店することも目的の一つとして製作したもの。
出店したものは100円ショップの太陽光で動くおもちゃから取り出したコイルをそのまま使用していた。
今回はコイルも自作して制御する。

動作確認

100円ショップのコイルもちゃんと動いてくれた。
しかし、動きに規則性がみられ本物の蝋燭とは違うものになっていた。

コイル自作

コイルを巻きやすくするための部品を3Dプリンターで製作した。
これにポリウレタン銅線を巻いていく。今回は220回巻いた。
部品からコイルを取り出して、マスキングテープで固定した。線の先の皮膜を取る作業を行なった。
こてに半田をつけて、そこに線を通す。すると、銅線が銀色に変化する。
これで銅線の皮膜が取れ、半田で皮膜をしたことになる。

動作確認

自作したコイルの動作確認をした。
動いてくれて一安心

ユニバーサル基板

ファブラボの山本さんにご協力いただき、回路を組んだ。
コイルと、コイルを動かすための回路をそれぞれユニバーサル基板に半田付けした。
この二つを繋げれば制御が可能に!

接続

コイルから伸ばした線と下にある基板を半田付けした。
これでコイルも制御できるようになった。

ハードは終了

底面をねじで閉めれば、竹蝋燭の完成!
あとはプログラムを組むだけ。

プログラミング

メーカーフェアで出展したときのプログラムは蝋燭の炎のように揺れる部品を照らすLEDとテープLEDを制御したものだったが、今回はコイルを制御して炎の部品の揺れ方も制御してみることにする。

動いた!

組んだプログラムをマイコンボードに書き込みすると…
無事、成功!
100円ショップのコイルよりも揺れ方に規則性がないので、ちゃんとプログラムが働いていることがわかる。

完成

大体4ヶ月の時を経て、やっと完成した竹蝋燭。
長い時間をかけたことだけあって、とても思い入れのある作品になった。

ファブラボ鎌倉のスタッフの皆様、特に山本さんには大変お世話になりました。ありがとうございました!