1.緒言

直列4気筒SOHCエンジンを構成する部品をそれぞれ作成し、組み合わせモデルを作成する。
構成として
・エンジンブロック
・ピストン
・コンロッド
・ピストンピン
・クランクシャフト
・バルブ
・カムシャフト
・ギア
となっている。
このモデルのボア×ストロークは20mm×20mmとしている.
そのため以下で作成している部品は上記のボア×ストロークを基本に寸法を設定している.
またこのプロジェクトではそれぞれ作成した部品をどのようにアセンブリしていくかについて重きを置いているため,各部品の寸法に関しては詳細に書いていない.


2.エンジンブロック

まずエンジンブロックを作成する.
このエンジンブロックはピストンとクランクシャフトの動きが見えるように
一部省略して作成している.
燃焼室の寸法は先述したボア×ストロークに沿っているが
そのままボア,ストロークを20mmずつに設定するとピストンやバルブの動きに干渉するため
燃焼室直径を20.5mm,高さを27.5mmとして4つ横に一列配置する.
上部にはバルブを配置するための穴を燃焼室それぞれに2つ配置
クランクシャフトとカムシャフトを保持するための穴を配置して完成となる



3.ピストン

直径20mm,高さ15mmのピストンを作成する.
ピストンとコンロッドを接続するためのピストンピンを入れる穴の直径を5mmに設定している.

3-1.ピストンピンの作成

ピストンピンを作成する.
長さはピストン直径と同じ20mmとなる.
ピストンピンの直径はピストンに開けた穴と同じ直径としてしまうと
後にモデルを動作させる際に部品が干渉し,動作不能となってしまう.
そのためピンの直径は小さくし,ここでは4.5mmとしている.

4.コンロッド

ピストンとクランクシャフトを繋ぐコンロッドを作成する.
このモデルはストローク20mmのため
コンロッドに空いている穴の中心から反対の穴の中心までの距離を20mmに設定する.

5.クランクシャフト

4気筒エンジンの点火順序に沿ったモデルとなるため
1番4番,2番3番の位置が揃うクランクシャフトを作成する.
先述したストロークが20mmであるため
コンロッド接続部はクランクシャフト中心から10mmずらしている
またクランクシャフトにコンロッドをジョイントする部分には
コンロッドの穴より小さい直径とすることで
回転ジョイントを設定するときに干渉が起きない.

6.バルブ

バルブを作成する.
直径を8mmとしてロフトとフィレットを活用して
バルブに存在する曲線を再現した.
またバルブ上部にはカムシャフトによって押されるための
上蓋も作成する.

7.カムシャフト

カムシャフトを作成する.
バルブを押し出すために中心から2mmオフセットした状態で円を配置している.
なぜこのような円が何個もオフセットした形状となっているのかというと
カムシャフトとしてすぐに出てくる,半円状の突起を形成したとき
押し出すための突起面と,その裏の面2つの面が形成されてしまい
この後組み上げ,モデルを動かそうとするとき突起面に触れている間しか
モデルが動かなくなってしまうためこのような形状になっている.

8.ギア

クランクシャフトの回転をカムシャフトに伝えるギアを作成する.
クランクシャフトが2回転することでカムシャフトが1回転するために
ギア比を2:1に設定する.

パラメータ

ギアを作成するためにc++言語の「spar gear」を用いている.
カムシャフト側のギアを作成するためのパラメータとして
モジュール:3
歯数:7
穴径:10mm
クランクシャフト側のギアを作成するためのパラメータとして
モジュール:3
歯数:14
穴径:6mm
に設定している.
これら2つのギアの穴径はそれぞれのシャフト直径と同じにしている.
それはシャフトが回転することでギアが回転するためお互いの動きにズレはなく
干渉することがないためジョイントを「剛体」として設定できるからとなる



9.部品の組み立て

これまでに作成した部品を1つのデザインに集め組み立てる.
ここではエンジンブロックにこれまでに作成した部品を挿入している.

9-1. ピストン,コンロッドの組立

コンポーネント1にコンロッドに開いている穴の表面の中心
コンポーネント2にピストンに開いている穴の内側の中心を選択し
モーションタイプを回転に設定する.
このままでは画像2枚目のように片側どちらかの面にコンロッドとピストンが
密着しているため,今回の場合では0.5mmオフセットさせることで
ピストン中央にコンロッドを配置することができる.
あとは,ピストンピンを組み込むために
コンポーネント1にピストンピン外側円中心
コンポーネント2にピストンに開いている穴の外側の中心を選択し
モーションタイプを回転に設定する.
これにてピストン,コンロッドの組立が1気筒分完了となる.

注意

上記の説明では1つのデザインにピストン,コンロッドを1気筒分組み立てているが
1つのデザインに4気筒分を作成してしまうと
後のエンジンブロック内にピストン,コンロッドを組み立てようとするときに
4気筒分全てのピストン,コンロッドが1つのコンポーネントとしてエンジンブロック内に挿入されてしまうため,1気筒を1つのデザインとして名前を付けて保存を使って4つのデザインを作成する必要がある点には注意が必要となる.

9-2. クランクシャフトの挿入

ここからは,エンジンブロック内にこれまでの部品を挿入していく.
最初に,モーションタイプを回転に設定しクランクシャフトを挿入する.

9-3. ピストンの挿入

ピストンを挿入し,燃焼室内で往復させるためにジョイントを設定する.
コンポーネント1にピストン上部中心
コンポーネント2に燃焼室上死点側の中心を選択し
モーションタイプをスライダに設定する.
これでピストンが燃焼室内で往復運動ができるようになった.
そのため残り3気筒分も同様に設定する.

9-4. クランクシャフトとピストンをジョイントする

ここまでで,エンジンブロック内にクランクシャフトとピストンを挿入し
それぞれが個別で動作するようになった.
次に実際の原理とは反対となってしまうがクランクシャフトが回転することでピストンが往復運動するようにジョイントを設定する.
コンポーネント1にコンロッドに開けた穴の中心
コンポーネント2を1枚目の画像のように原点モードを2つの面の間に設定しコンロッドを配置したい場所を挟んでいる2つの面を選択しスナップ点を選択する.
モーションタイプは回転となる.
これを残りの3気筒分に行うことで運動の連動が可能となった.

9-5. バルブの挿入

バルブを挿入し,挿入できたバルブにジョイントを設定する.
コンポーネント1にバルブ底面の中心
コンポーネント2に燃焼室内上部の吸排気口としている穴の中心を選択する.
モーションタイプはスライダとする.

9-6. カムシャフトの挿入

カムシャフトを挿入する.挿入できたカムシャフトにジョイントを設定し
カムシャフトが回転するように設定する.
コンポーネント1にカムシャフト端の中心
コンポーネント2にギアを配置しない側のエンジンブロックに開けている穴を選択する.
モーションタイプは回転となる.

9-7. カムシャフトとバルブの連動

ここまででバルブとカムシャフトそれぞれの動きの設定ができた.
次にカムシャフトの突起によってバルブが押し出されるようにしたい.
それにはFusion上部のリボン内にあるアセンブリから接線関係をクリックする.
クリックすると常に接触させておきたい部品を選択することができるため
バルブ上部の平面とカムシャフト突起面を選択する.
これを4気筒分計8回行うことで,カムシャフトの回転に応じたバルブの動きを設定することができた.

9-8. ギアの挿入

次にクランクシャフトの回転を伝えカムシャフトを回転させるためのギアを挿入する.
ここまでの作業と同じようにジョイントを設定する.
クランクシャフト側に歯数14のギア
カムシャフト側に歯数7のギアを配置する.
ここでのモーションタイプはどちらも剛体となるためこの点は注意となる.
これで全ての部品の挿入が完了した.

10. モーションリンク

ここまでで全ての部品の配置とジョイントの設定が全て完了した.
しかし今のままでは,クランクシャフトが回転してもカムシャフトは回転しない.
そのためお互いのモーションをリンクさせる必要がある.
Fusion上部のリボン内にあるアセンブリからモーションリンクをクリックし
リンクさせたいモーション,ここでは2つのシャフトを回転させている回転モーションを選択する.
ギア比が2:1となるためクランクシャフト側の角度を720度
カムシャフト側の角度を360度に設定し反転にチェックを入れる.
これにてモーションリンクの設定が完了となる.

動作

これにて全ての作業が完了し直列4気筒エンジンの動作モデルとして動作させることが可能となった.