What:概要
足でマウスのカーソル移動操作ができるようになるマウスホルダー(ELECOM製マウス M-TM10BBWH/EC 対応)
For whom:対象者
メインターゲット:
上肢(腕・手)の機能障害
により、筆記やマウス操作などの日常動作が困難になっている方
サブターゲット:
頻繁なキーボード入力とマウス操作の往復によって手首や腕に負担がかかり、
腱鞘炎のリスク
を抱えているデスクワーカー(健常者)
Why:なぜ作ろうと思ったのか
共同開発者である
自分たちの実体験がきっかけ
です。
ヤエルさんは2018年に
両前腕の障害を発症
し、それまで取り組んでいたゲーム開発や3Dモデリングを断念せざるを得なくなりました。現在はプログラミングやレタッチを行っていますが、多様なマウスを試しても満足な環境を作れずにいます。また、共同制作者の平野も2022年に
怪我による感染症で左手指を手術
し、「いつ手が使えなくなってもおかしくない」という強い危機感を抱いていたことから、自分たちの当事者目線をベースに本アイデアの構築に取り組みました。
How:どのように作成したか(試行錯誤のプロセスと作成ファイル)
開発期間:
2026年6月1日~7月21日
試作点数:
24点(毎週フィードバックを共有し、繰り返し検証)
構成パーツ:
ELECOM製マウス
、
一体成型3Dプリントパーツ1点
、
ゴム紐1メートル
名前の通り「バナナ」をモチーフにしており、
ホルダー部分を「バナナの皮」
、
市販マウスを「果肉(可食部)」
に見立てた設計にしています。 かかとを基準にしてつま先を解放する構造により、足のサイズによらずフィットする
フリーサイズ
を実現しました。ポジション保持とクリック動作の併用によるカーソルのブレや足への負荷を避けるため、アクセシビリティ設定や外部スイッチとの併用を前提として
「移動操作」だけに機能を絞り込ん
でいます。
参考
使用環境・ファイル:
PC: Windows 11 / CAD:
Blender
/ スライサー:
Bambu Studio
/ 3D Printer:
Bambu Lab A1 mini
フィラメント:
ELEGOO PLA Plus(黄色)
、
eSUN PETG(黄色)
配布ファイル共有ドライブ:
STL / Gcode
等
使用マウス:
ELECOM製マウス「Slint」 M-TM10BBWH/EC
推奨スライス設定(Bambu Studio):
プロセス:
0.20mm strength
サポート設定: 有効化(チェックオン)、タイプ
ツリー(自動)
、
閾値角度 40度
ラフト設定:
ラフト 3積層
Outcome:対象者の何がどのように変化する道具なのか
手の代わりに
「足」がマウスを操作する新しい身体部位
となり、
上肢への負担や痛みを軽減
させます。手での操作に限界を感じている方の作業環境に
「足で操作する」
という
新たな選択肢
を提供し、
諦めていたデジタル作業やクリエイティブ活動の再開を後押し
します。今後はオープンソースの強みを活かし、国内外の多様なマウス形状に対応できる展開を目指します。
Process:制作プロセス(時系列)
① アイデア出し・初期コンセプト・マウス購入(6月1日)
② 3Dスキャン・嵌合テスト(6月2日)
③ 3Dモデリングスタート(6月2日)
④ フィードバックと試行錯誤(週1回)
⑤ 試作品の時系列(6月~7月)
⑥ 知人フィードバック(7月20日)
⑦最終モデル(7月21日)
① アイデア出し・初期コンセプト・マウス購入(6月1日)
「どうしたら手の代わりに足でマウスを操作できるだろう?」
という疑問からプロジェクトがスタート。
小型・薄型で安価なELECOM製マウス
を選定し、バナナの皮に果肉を挟むイメージで基本構想を練る。
② 3Dスキャン・嵌合テスト(6月2日)
購入したマウスの正確な形状を捉えるため3Dスキャンを実施。マウス本体とホルダーが狂いなくハマるよう、クリアランス(隙間)のテストを出力。
写真2点
3Dスキャンとクリアランステスト用のプリント
③ 3Dモデリングスタート(6月2日)
Blenderを使用し、足で操作するためのホルダーデザインを開始。繊細な動きのできない足でマウスを扱うためにはどんな形状が適しているのか模索します。
写真9点
初期モデルからの変遷
④ フィードバックと試行錯誤(週1回)
週1回程度平野が制作した試作をヤエルがテストし、操作性や足への負担を検証。「固定された状態で
移動とクリックを両立(ドラッグなど)させることは難しい
(カーソルがブレる、疲れる、)」などの問題が判明し、
「移動操作に特化」
させて、
クリックは外部ボタンに分ける
という設計に変更。
写真5点
検証・フィードバックと「外部ボタン」
⑤ 試作品の時系列(6月〜7月)
筋力が弱い人でも体力を消耗しないで扱える
ように、かかとの固定感、
リラックスして使用し続けられる角度
など、計24回の試作を重ねて徐々に理想のフォルムへ。スライサーの印刷時間短縮と強度確保も同時に追及。
⑥ 外部フィードバック(7月20日)
完成間近のプロトタイプを
外部の人に試用
してもらい最終検証。「足のサイズに関わらずフィットするか」「長時間の操作で疲れないか」「体重を掛けたら壊してしまわないか」などの生の声を収集。
写真2点
⑦ 最終モデル(7月21日)
フィードバックを反映した最終データが完成。
ELEGOO PLA Plus
もしくは
eSUN PETG
の黄色で出力し、ゴム紐1本で固定する「Banana pointer」が誕生。
写真2点
前側面、後ろ側面
⑧装着イメージ
1メートルのゴム紐を穴に通し結ぶ(後述)。長さや締め付け具合を調整した後は
紐を結び直さずに装着が可能
になります。
ゴム紐の準備
Banana pointerの穴は5mm前後になっています。
プリンターのクオリティよって穴が狭まる可能性があるため、直径3mm程度のゴム紐を1メートル用意してください。
【3Dプリント・組み立て手順】
① STLファイルのダウンロード
② スライス設定(Bambu Studio)
③ サポート・ラフト設定
④ プリント時の注意点(ベッド定着とフィラメント)
⑤ サポート材の除去と後処理
⑥ マウスのセットと完成
① STLファイルのダウンロード
公開されている3Dデータ(STL / 3mf)をダウンロード。「Banana pointer」本体データと関連ファイルが揃っているか確認します。
ダウンロードはコチラ
② スライス設定(Bambu Studio)
STLデータを読み込み基本設定とサポート材の設定
を行います。
「banbu studio」のスライサーを利用している場合、強度と出力速度を最適化したプロセスプリセット
(0.20mm Strength)
を選択。壁厚を均一にした有機的フォルムのため、インフィル(内部充填)を抑えても十分な強度が確保できます。
③ サポート・ラフト設定
滑らかな造形と定着性を高めるため、
サポート設定
は
「有効(ツリー・自動・閾値角度40度)」
、
ラフト設定は「3積層」
に指定してスライスを実行します。
サポート材について→(
bambu studio
/
Prusa slicer
)
その他のスライサーでは、ツリーサポートはオーガニックサポート(こちらが一般的)と呼ばれています。
時間がある方は積層ピッチを0.20mmより細かくすることもお勧めです。造形が荒れやすい部分のみ細かくしておきたい場合は「
可変積層ピッチ
/
可変レイヤー高さ
」を調べてみてください。
④ プリント時の注意点(ベッド定着とフィラメント)
フィラメントは強度に優れた
PLA Plus
や
PETG
を推奨しています。また1層目の密着不足による歪みを防ぐため、
ビルドプレートの清掃
を事前に行います。
定着が悪ければスティック糊の塗布
を行います(プレートの水洗いで除去可能です)。冬場は室内が寒いと造形が難しくなるので、直接風が当たらない暖房のある部屋で運用してみてください。
※タイムセール品のフィラメントは巻き付けが荒いので注意してください。商品購入ページの画像が巻の荒いものに差し替えられているのである程度の確認ができます。
⑤ サポート材の除去と後処理
出力後、ツリーサポートと3層のラフトを
ニッパー
やペンチを使用して取り除きます
。素手での作業は危ないので避けてください。
足裏や手で触れる縁の剥がし跡にバリ
が残っている場合は、
ヤスリ等で滑らかに
削って仕上げます。
写真5枚
①②
ニッパー
での除去作業:ねじると握力が無くてもサポートを折りやすいです。
③④⑤研磨作業:
耐水ペーパー240番
と少量の水、作業場所を確保します。サポートの除去が甘い箇所があればニッパーで取り除く。穴のバリ取りは丸めた耐水ペーパーを使用するか
棒やすり
がおすすめです。
⑥A ゴム紐を通す
直径5mm弱の穴に入るゴムヒモ
(今回はダイソーで直径3mm、1メートル3本組のもの)を用意し、
かかと側から順番に
通します。
⑥B ゴム紐を通す
画像を参考に手順に沿ってゴム紐を通し結びます。
左右ともに同じ手順で進めてください。
写真9点
⑦マウスのセットと完成
ELECOM製マウス(M-TM10BBWH/EC)
を
ホルダー(バナナの皮)
に嵌め込み、
「Banana pointer」の完成
です!
デスクに向かう時間が、今までよりもっと
ワクワク
したものになりますように!
補足:クリックについて
このデバイスは、
マウスポインターの操作専用
です。
クリックするには、別途スイッチが必要
です。 私自身、パソコンの操作に苦労した経験から、クリックについては、
プログラム可能なフットスイッチ
(※
プログラマブル キーパッド
など)や
音声操作(
Windowsの音声アクセスと音声入力
/
macOSの音声コントロール
)
など、さまざまな選択肢があることを知りました。一方で、マウスポインターを動かすための選択肢はほとんどありませんでした。そこから、このプロジェクトのアイデアが生まれました。