ダイヤモンドの結晶構造
卵を守るために、衝撃を吸収して力を上手く受け流す構造はどういうものか、我々は何度も集まってディスカッションと検討を繰り返しました。その結果行き着いたのは、ダイヤモンドの結晶構造からヒントを得た、柔らかく強靭な立体構造です。
綺麗な卵の入れ物を作ろう!
ダイヤモンドのプロテクターなので、
タイトルは「D-TECT」
美しいキレイな卵の入れ物を目指しました。
画像:https://pixabay.com/
四面体を基調とした結合
ダイヤモンド結晶は、炭素原子がこのように結合した立体構造になっています。
画像:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Diamant21.png
力を受け流す構造
ダイヤモンド結晶構造に力が加わった時に、どのような応力分布になるのか計算しました。上部中央に4箇所、力を加えたところ、下の層にゆくに従って力が分散して、上手く力を受け流せていることが分かります。
比較:格子は力を受け流さない
比較のために、普通の格子構造に同じく力を加えて計算しました。上部中央からまっすぐに、分散することなく力が伝わっています。この構造だと、卵に直接力が加わってしまうことが分かりました。
設計
卵を格納するシールドの周りを、ダイヤモンド構造がすっぽり覆うデザインを考えました。どこから落ちても、卵が守られる仕組みです。
卵を入れて閉じるために、3つのパーツに分割してプリントして組合します。
モデリング
直角で構成されていない立体構造をモデリングするのは意外と難しいものです。Rhinoceros 3DとGrasshopperを使って、パラメトリックにモデリングしました。このツールは建築業界でよく利用されていて、複雑な建物形状を作るのにとても役立ちます。
3つのパーツを組み合わせ
3Dプリンターで出力できる大きさは限られています。衝撃吸収のためには、大きい方が有利ですので、分割してプリントして組合せる作戦を考えました。
構造シミュレーション
我々のチームは4人、うち3人は建築構造解析の専門家なのです。構造解析はお手の物さ!ということで、業務で磨いた技術力を惜しげもなく投入して、史上最強の卵入れを作ることにしました。
1メートルから落下させた場合
衝撃を吸収して、ぽよよぉ〜んと跳ね返り、卵に力が加わっていないことが分かります。
5メートルから落下させた場合
より強い衝撃が加わっていますが、卵のところにはそれ程影響が無さそうです。跳ね返ったあとにも、変形が残っているのが分かります。
プリントアウト
KeyenceのAgilista 3200という高級3Dプリンタで出力しました。本当に綺麗で、ダイヤモンドのように感じます。
そして、正直なところ、落下実験はしたくない。もったいない!