【制作開始】
2022年4月〜現在
【制作環境】
PC : MacBook Pro / iMac
CAD : Fusion 360
3Dプリンタ : Anycubic Mega S
スライサー : Ultimate Cura
フィラメント : eSUN Dual-Colour Silk Magic PLA
【あらすじ】
分身ロボットカフェDAWN ver.βで働いている時に出会ったはるなちゃん。
InstagramやTwitterでギターやドラムを演奏している動画を日々アップしている。
彼女は右上肢に障害がありギターを弾く時はガムテープを自分の肘にぐちゃっと巻きつけ、
ガムテープの飛び出た部分で演奏をしていた。
動画を見て「何か作ろうか??」と提案したかったが、
そのやり方をあえて選んでいるのであればただのお節介・・・
でもひょんなことから「え、作ってほしい!」という流れになり
二人三脚での制作が始まった。
【対象者】
右上肢に障害があるがギターやドラムを演奏したい方
【なぜ作ろうと思ったのか】
想像してほしい。自分の手にガムテープをぐるぐる巻きにした状態を。
30分、いや、10分でも耐えられないかも。
折角「音楽」を楽しむのであれば不快感を取っ払いたい。
写真を見て解る通り、ガムテープの飛び出た部分の形状は
毎回ランダムなので鳴らしたい音を
鳴らせないこともあるそう。
演奏についてのヒアリングをしていた時に
「ギターを立奏できない」ということを知った。
ライブにも出たりしているので立奏する!という目標の達成。
【どのようにして作成したか】
私自身のCAD歴が当初数ヶ月ということもあり
まずは
「腕につけられるモノを作る」
という
ところからスタート。
試作品を作っては試奏のくり返し。
2022年4月から2023年8月現時点で
6号機まで制作。
(マイナーチェンジも含めると10号機くらい)
制作するにあたり、
メイカーズラブ
のチュートリアルを
何本か参考にしてCADの描き方を勉強した。
初号機
採寸したサイズに合わせて筒状の本体を作成。
そこにピックを取り付けるアーム部分を一体化。
猫のしっぽのような形状。
ピックを取り付ける部分
(以下ピックホルダー)
は
CAD自体は簡単でピックを挟めるくらいの隙間を描き
切り取り加工で完了。
アームにねじ止めできるようにしているが
(ピックホルダー上部に見える透明の部分はアクリルネジ)
今思うとねじ止めする理由が解らない・・・
記念すべき初号機 2022.4.7
初号機Body
ピックホルダー
初号機レビュー
3Dプリントで制作したモノを肌に直接ではなく、
普段ドラム演奏の時に使っているリストバンドの上から装着(汗滑り防止)
この状態だとまだ立奏するには長さが足りず。
ただ
最初のミッション、「腕につけられるモノ」はクリア。
猫のしっぽのようなアームが折れないか不安だったが
ひとまず演奏出来た。
(ひゃっほい!)
そして
ぱっと見、いつでも使えるようガムテープを
腕に通している舞台スタッフみたい
なので
デザインの再検討。
2号機
腕に通す部分のガムテープ感をなくすため、
完全筒型ではなく
隙間を作ったりフレーム状
にしてみた。
そして猫の尻尾から長さ調節を出来るようにするため
L字型のアーム
を追加。
初号機の時からピック自体も自作だが
3Dプリントでのピックはしなり加減が難しく
市販のピックを使う想定
で作成。
2号機Body
2号機ピックアーム
2号機試奏
この日はアコースティックギターで試奏。
エレキもアコギも両方弾けるように
長さ調節の棒のパーツを作ったが
案外同じ長さで大丈夫かもと後々判明。
3号機
2号機のL字型アームでは長さが足りなかったので更に伸ばしてみた。
ボディ本体の形状は2号機のまま変更なし。
3号機ピックアーム
3号機試奏
3号機にしてはるなちゃんにとって人生初の立奏を実現。
本人掲載動画→
Twitter
有難いことに沢山の人がシェアやいいねのリアクションをしてくれた。
右上肢に障害があり、ギターを弾きたい!という人が
世界にどれぐらいいるか解らないけど
彼女と同じように演奏したい人の選択肢の一つになればいいなと思った。
4号機
3号機、ライブで激しく弾いて色々破損。
楽しくて力んでしまう気持ち、ものすごく解る。
ピックを取り付けるアームの部分が折れると
全取っ替えになるため、ならばと
アーム自体取り外し式に変更。
アームを差し込むのでこの部分は
以下アームホール
と記載。
強度が未知数だったため、アームホールは底あり。
旧式の延長パーツとサイズを合わせるため、
直径は同じサイズに。
ビジュアルが
某スナック菓子に見えて仕方ない。
ボディ本体のフレームも割れてしまったので
ここも厚みをだした。
4号機Body
4号機ピックアーム
4号機試奏
ピック自体は装着せず、一旦長さ確認として演奏。
エレキギターのストラップ自体を短くした方が
安定して弾けるということが解り
アーム部分がここまで長くなくていいという結果に。
演奏時、ギターのネック部分に
先端が当たってしまっているため
かなり短くする必要性がでてきた。
今まで使っていたフィラメントが売切れ状態で
急遽別のフィラメントで代用。
5号機
形もフィラメントも一気に変更。
4号機までとにかく機能を備えることに重点を置いていたが
アクセサリーのように普段使いできて
尚且つ私も身につけたいと思うものにしようと「デザインする事」に挑戦。
フィラメントはライブでも映えるよう派手目のものに。
アームホールは底をなくし万が一詰まっても
後ろから押し出せるように変更。
アーム部分はかなり短くし
試しにピック一体型を作成。(写真2枚目)
最終的に市販のピックを挟む切れ込みを入れる想定で
角度確認のため一体型にしている。
5号機Body
5号機アームピック
5号機試奏
一体型のピックの角度が合わず
アップピッキング(ピックを下から上に弾く)する時に
ひっかかり弾きにくいことが解った。
実際に市販のピックを挟む場合を考え、
ここの角度の微調整が次の課題。
6号機
アーム部分を湾曲させずL字型に変更。
理由として現在所有している3Dプリンタの具合が悪く、
サポート材をなるべくつけない形状にする為と
全体が直線的なので統一感を出す為。
前回の課題だったピックを挟む角度を微調整。
ドラムスティックも挿せるようアームホールの直径を変更し
一台二役化。
自ずとピックアームもそのサイズにするが
フィラメントの収縮具合が
全然読めず難儀した。(写真2枚目)
0.1mm刻みの戦い。人生初デジタルノギスを購入。
ピックは1mmのものを挟める
ようにしているが
そのままだと絵柄が削れていくかもしれないので
マスキングテープでカバーしてから差し込むのが無難。
6号機Body
6号機ピックアーム
6号機試奏
ドラムスティックをアームホルダーに差し込み試奏。
【対象者の何がどのように変化する道具なのか】
SoundBuddyひとつで障害を気にせずギターとドラムを演奏可能。
障害により「演奏出来ない」が障害があっても「演奏出来る」に変わる。
【今後の流れ】
最新版のデザインの
耐久性がまだ解らないので
はるなちゃんには思いっきり演奏してもらって
是非壊れるまで使ってもらいたい。
ピックホルダーの部分は
今後
他の厚みのピックも挟めるよう
バリエーションを追加
予定。
今回使用したバイカラーのフィラメントも可愛いのだけど
UVライトで光るタイプや他の素材でも試してみたい。
【あとがき】
私自身、子供の頃から楽器演奏が好きで
ピアノ・トランペット・琴・三味線
そしてギターを少しずつかじってきた。
(余談:本業は音楽業界ではなくフォトグラファー)
演奏をする楽しさを知っているからこそ
障害があっても演奏したい人に寄り添えるモノを作りたいと思った。
3Dプリントだけで制作したのはモーターをつけた場合、重量という懸念もあるが
「弾く感触」を残し自身の力加減でコントロール出来るものにしたかったから。
まだまだ改善余地のある作品だが
今後は他の人も使えるようボディ部分のサイズ調整など
納得するまで二人三脚で作っていきたい。
最後にアドバイスをくれた方々や応援してくれている友人たちへ
ここに感謝を申し上げます。