目的
従来にない方法(ツール)でヒノキ板に絵を描きたい。
失敗例
この方法にたどり着くまで、いろいろな方法を試して失敗しました。
失敗例1
表面を染色剤で染める(藍染など)
木目により表面しか染まらない。サンドで磨くと染めた部分が消えてしまう。
但し垂直方向には数ミリの深さまで浸透する(これは別作品で利用する)
失敗例2
木板をレーザーで彫って光を透過させてみる(例はアガチス材)
かなりの薄さにしないと光が透過しないし焼き切れてしまう。
また赤色は透過しやすいが、他の色は透過しにくい。
木目が垂直の場合には、透過しやすい傾向がある
再考
方法を考え直し・・
背面からの光の量で絵を表現しているものが世の中にあるが(スリットや穴)、ほとんどが濃淡表現できていない。そこでレーザーカッターの精度を当てにして、画像の濃淡をスリット幅を変えて光量変化させることで濃淡絵を出すことに挑戦してみる
ツールがないので作成
画像から自動で光量に相当するスリットパターンを作成するソフトが見つけられなかった。ないものは作るしかないということで、自分の仕事能力の一部を使って作成することにした。
開発環境 Visual Studio Ver6 (古い・・) 基本的にC言語でAPIのみを使用。
自動作成ソフト(Slit Light Creator)
Slit Light Creator V1.01 (インストーラー形式)
動作OS WindowsXp以降 メモリ2GB, Win7,8は4GB
読み出し画像 BMPあるいはJPG形式
データ作成
スリットカットデータを専用ソフト
Slit Light Creator V1.01 (インストーラー形式)
で作成します。
画像データは、境界がはっきりしているものがいいようです。
Slit Light Creator V1.01 (English version)
データ読み込み
画像データ(
BMP
あるいは
JPG
形式)を読み出します。
画像分解能は荒いもので十分です。スリット方向に画像イメージが多い場合には、画像編集ソフトで少し傾けるなどすると良いです。
設定
設定メニューの設定..画面でカット条件をセットします。
最小残し幅は
1/4
、外枠残し幅を
10%
にします。
カット方式の指定
設定メニューのカット方式で指定します。
スリットは
垂直方向
を指定します。
(視覚の特性を考えると視差を得る垂直スリットが有効です)
カットイメージ表示
読み込めばすぐに設定条件に応じたカットイメージが右側に表示されます。
カット分解能の指定
スリットの横数が分解能になります。
設定メニューのグリッド横サイズで指定します。
今回は
64
で指定します。
データ作成(クリップボードコピー)
ファイルメニューの切り出し出力データのコピーを選択すると、カットイメージがクリップボードにコピーされます。これを
CorelDraw
に貼り付けて元データが作成できました。
カット準備
レーザーカッター
でカットするためのデータ準備と材料を用意します
データサイズを調整
クリップボードでCorelDrawに貼り付けたイメージはサイズが大きい状態です。
適切なサイズにリサイズして、木目に平行になるような向きに変更して、線幅を極細線に再指定します。
サンプルデータ1
材料準備1
材料はFUJIMOCKで切り出した
ヒノキ材(板目3~4mm厚)
を、
FUJIMOCK鎌倉セッションDAY2
今西工房でカットしてもらい十分に水で濡らします。(濡らすのは、カット面にヤニがつきにくい切断面になるからです)
シナ合板(1.1mm)
も薄いわりに強度がありカット可能です。
材料準備2
濡らした板は、乾燥すると曲がってくるので、
曲がりを抑える冶具
をアクリル(5mm厚)で作成してはめこみます。(
曲がりを抑える冶具作成データ
)
カット
レーザーカッターでカットします
カット
板をスリットと木目が同じ方向になるようにセットして、パターンをカットします。
今回のデータでは約14~16分くらいかかりました。
ちゃんと比較はしていませんが、水分が多いほどレーザーカットのパワーが少なくてすむ感じがします。
カット後の処理
カット後は細かいスリットが完全にぬけていないのでツマドラなどを使用してすべてのスリットをきれいに抜きます。乾燥した段階で、表面を注意深く
紙やすり
できれいに仕上げていきます。(スリットが折れやすいので注意!)
フレームをつける
このままでは強度が弱く曲がってしまうため、まわりに別
木材フレーム
を作ってはめこみます。フレームは、ある程度強度のある
ホオ材(5mm)
で作成しました。
完成(一部未完成)
フレームをつけて完成です。光を通して角度をいろいろ変えると見え方が変わります。目で見るよりカメラで撮影した方が絵がきれいに見えます。これは人は両眼で見るので視差でスリットの見え方が異なるため。片目で見るときれいに見えます。
市販のヒノキ板
市販されている3mmヒノキ板(柾目?)で作ってみました。水分の浸透が弱いので十分に時間をかけて水分を含ませる必要があります。
薄い丸木のスリット
実験的に2mmの丸木板にスリットを入れてみました。(鎌倉セッションDAY1で試行)
スリットが弱く、曲がってしまうので、あまりきれいに見えません。
問題点
問題点をいくつか(改善が必要)
・強度が弱い
スリットが細いので落としてスリットが割れる場合がある
・材料を選ぶ
レーザーパワーとの関係で柔らかい木材での3mm~5mmが限界。
燃えない工夫で厚い板や薄い板でできないか?
・横幅が目の方向で制限される
分割出力する工夫
応用
濃淡がないような画像(文字など)の場合には、設定を少し変える必要があります。
設定
グリッドサイズを40、最小残し幅を1/3にして、少し荒いスリットにします。
文字のスリット画
6面をスリット文字で作成して、50mmキューブを作成しました。
材料はアガチス材(3mm)です。湿らせないでカットしました。
キューブに組み立てて、煙で燻して少し古さを出してみました。