しおりを「IoT化」するメリットとは?

今日では、IoT(Internet of things, モノのインターネット)技術に対する関心が高まり、世界的にも「IoT化」が様々な分野のサービスで行われている。

ここで、今回のプロジェクトの要である「しおりのIoT化」がどのような効果をもたらすのか、考えていきたいと思う。

「本」とは

本の歴史は、人間と共に進化してきた。

紀元前かの有名なガリレオやダヴィンチなどは、自身の考えを本にまとめ(記録し)、その時代の民のみならず、今日を生きる我々に受け継がれてきている。

宗教も活版印刷技術などによる量産化によって、その教え「経典」を急速に拡散する方法に用いられた。

現代においては、本は「紙」という媒体から離れ、「音」や「電子化」によって新たな形となった。
実際、あまり本を読まない私でも、どこでも自分のスマホで読める「電子書籍」で読むことはよくあった。

文章読解率の低下問題

 しかし、テクノロジーによって娯楽が増えた現代にて、「読書をする習慣」というものが減ってきている。(グラフは16歳以下を対象とした読書本数を示したもの)

 そのためか、中高生の間で「識字率の低下」によって(機能的非識字状態とも言われる)「文章の主語・述語がわからない」などと行った致命的な文章認識力の低下が起こっていると言われている。(ソース元)

”デジタル”と”アナログ”の共存はできるのか?

 近年では、「インターネットリテラシー」などのテクノロジー使用のスキルが問われる中で、プレゼンテーションに始まる「自分で文章を考え、発表・記述する」に必要な語彙力・文章力も重要視されている。(現代になるにつれて、顕著に言われてきている)

 そこで、アナログな「本」と「デジタル」の橋渡しをするデバイスを作ることで、この双方に起因する問題を「デジタル」で解決する案として、今回のIoTプロジェクトを提案する。

 あと、自分の「読書しない病」を解決するためにも、この問題に取り組んでいきたいと思う。

Part.1 「しおりの形状」


本にストレスを与えないように

今回のプロジェクトでは、「しおり」を作るため、その形状には特に配慮しないといけない。

今回は以下のポイントにフォーカスを当てていきたいと思う。
  1. 文庫本サイズ(105x148mm)以内に
  2. なるべくラウンド状に(エッジを少なく)する
  3. 太くないようにする。

1,内部部品をなんとかする。

今回のために、Eagle(AutoDesk社)を用いてオリジナルPCBを作成して、基盤&内部部品の最小化を狙った。

というのも、IoT化のためにESP32(詳細は後記)というボードを載せるのだが、開発ボードは読んで字のごとく開発用のため、ピンヘッダが邪魔で保護機能がついていたりして値段が高い。なので、一番小さくできるボードESP-WROOM-32を乗せれるようにするためにも必要な手順であった。
Eagleファイル
※ここには記録として残してありますが、この回路は色々間違っているところがあるので、これを元に発注や作成する事はおすすめしません。近日中に修正したものを載せたいと思います。

2,ケースの形状について

今回のケースは、先に述べた通り「サイズ・形状・厚さ」に注意して設計しなければいけなかった。

そこで、まず本の纏め方(綴じ方)に注目して、本を閉じている糊に対して、切り込むような形状を試したところ、単純な箱を丸めたものよりは本にフィットしていたので、これを採用。

また、持った時に落ちない要素などを入れ込んでこのようなデザインに落ち着いた。 ⇒Fusionデータ

3,基板到着と確認

 基板は「PCBWay」という中国に本社を置く会社に発注したが、ここで期間的な問題(実は発案は9月ぐらいだったのだが、製作を始めたのは10月上旬になってしまった)によって、再発注は無理な状態で「ぶっつけ本番」のようになっていた。発注した基板のサイズは81x41mm

 ケースについては、EagleデータをFusion360に同期する機能のおかげで、3Dデータの編集は最小限にすんだ。それよりも、ほぼ変更な不可能な回路設計が間違っていなければいいが…

Part.2 「スマホとコネクト」

今回は、BLEデバイスとしてデータの送受信を「Blynk」で行う設計で製作する。
ベースのマイコンボードは「ESP-WROOM-32」を使用した。このボードはWi-Fi,Bluetoothが扱え、省電力性にも優れている上にArduino IDEでプログラムを製作できる汎用性の高いモノである。あと、一つあたり550円(秋月電子通商での価格)と安い。いわばいいとこ取りと言っても過言ではないものである。

ハンダ付け

回路に関しては、既にPart1で製作済み(ただし、チェックしていない)なので、それに沿ってつけていくだけでは合ったが、省スペース化のために、SMD(表面実装デバイス)を採用したために、今までやった中で屈指の難易度だった。
なんとか、付け終わり、自作USBシリアル変換基板からLチカさせるスケッチを送ったところ、動いた。今までに無いくらい、めっちゃうれしかった。

正直、Lチカでこんなに感動する日が来ようとは誰が思っただろうか?

回路確認

しかし、全部の回路がしっかりと完成しているかどうかを確認してみると、3つあるうちの2つのボタン回路が駄目だった(プルアップ回路を入れていなかった)。

なので、当初計画していた◀●▶のスイッチレイアウトを廃止し、1つのボタンで動くように3Dデータを設計変更した。(中身はこの後)

プログラム作成

このプロジェクトで一番要なところである。
 作成したモノは単に、言ってしまえば「タイマー」みたいなモノであるが、本に挟んだ状態を検知(照度センサ)やユーザ操作で省電力モードに移行したり、LEDを読書灯として光らせるようにしたり、「しおり」という本を読むデバイスとして、最適な機能を盛り込んだ。

作成プログラム
使用ライブラリ
  • Blynk
  • U8G2
  • Arduino Timer Library

完成! しかし…

動画は、タイマーを動かして見たところで、しっかりと携帯と同期することができている。

3週間ほどでこの製作を行ったが、正直自分の思ったように作れなかった。(詳細は後記)
最終的なサイズは89x55x19mmとなった

今回使ったパーツ一覧

  • ESP-WROOM-32 1個
  • S9705 1個
  • AQM1248 1個
  • チップ積層セラミックコンデンサ 1μF 9個
  • チップ積層セラミックコンデンサ 0.1μF 2個
  • 金属皮膜チップ抵抗 10kΩ 1/4W 2個
  • 金属皮膜チップ抵抗 1kΩ 1/8W 2個
  • 金属皮膜チップ抵抗 100Ω 1/8W 1個
  • 黄色LED 1個
  • ボタン電池CR2032 2個
  • SMD電池ホルダ 2個
  • 3.3V昇圧キット 2個

最後に


感想

 今回、自分としては初めてのIoTプロジェクトだったのだが、このIoT技術が「如何に社会に有用なモノであるか」というのを身をもって実感した。しかし、当初の予定ではしおりからの値をそのまま表示すルのではなく、時間に応じてポイントをゲットできる仕組みにすれば、面白いのではないかと思ったが、Blynkではアプリ上での処理が難しく、実現に至らなかった。

今後の課題

今回のプロジェクトについて、今後の課題として以下のことがあげられる
  • 大きい
今回作ったデバイスは、「本に挟むしおり」というコンセプトを基盤として、デザインの展開・改良を行ったつもりであったが、いざ完成してみると、本に挟むには大分大きいサイズになってしまった。
  • 独自アプリケーション
先述したとおり、Blynkでは限界が合ったので、次回は1からアプリの開発を行いたいと思う。
  • 使用感の調査
私だけが、開発を行っているので実際の使用感がよくわからない(実際本を読まない病なので、実際の使用スタイルをつかめずにいる)ので、誰かに頼むかして調査を行いたいと思う。

今回のプロジェクトは、自分の詰めの甘さがよくわかったと思う。ただ、個人的にはこのプロジェクトを続け、最終的には自分の周りの施設(学校の図書館)で実証実験を行って、ブラッシュアップをしていきたいと思う。