なぜ、段ボールのスツールを作ることになったか

僕の通っている学校には、「空間デザイン」という教科があります。
この教科で「段ボールでスツールを作る」という課題が出されました。
コロナウイルスの影響で遠隔授業になっていますが、そのぶん満足いくまで作りこんでいきたいと思っています。

段ボールのスツールを作るにあたっての主な条件

・対象:幼稚園児~小学3年生(5~9歳程度)
・組み立て方:1)切り込みを入れて組み立てる。組み立て時に接着剤は使わない。
       2)使わないときは解体して、持ち運べる。
       3)コンパクトに収納でき、コンパクトにした時に固定できる。(ベルトで締める、箱に入れるなど)
・段ボール枚数:不問
・段ボール以外の材料:紙管の使用可
・着色もオッケー
・8月4日までに完成すること

評価基準

1)座りやすさ
2)強度
3)段ボールの特性を生かしている
4)コンセプトにあったデザインになっている
5)完成度、美しさ

計画の進め方

1)ちいさい人のための「座る段ボール」について、様々な状況・形を検討する。
2)立体作品として成立し、構造的にも丈夫、かつ造形的に美しいものをとことん追求する。
3)段ボールの特性について研究し、細かく調査する。
  木材や金属との違いを考慮し、段ボールの特性や形状をうまく活かし、美しく作品を作るにはどうしたらよいか考える。
4)作品を考えるにあたって、コンセプトやテーマなを必ず一緒に(同時に)考える。
5)制作期間は意外に短い。期間内に制作できる大きさで計画する。

コンセプトを考える

授業で配布されたプリントを利用して、コンセプトを考えていきます。

1枚目

とりあえずなんとなく空白を埋めた。そんな感じです。

2枚目

冷静に考えると、
・流しそうめんをするときに段ボールのスツールに座るかなぁ...?保護者からすると、普通のイスに座って、落ち着いて食べてほしいはずです。
・流しそうめんのためにイスを買うかなぁ...
などと疑問ばかり浮かんできます。
そもそも、「創意工夫できるイス」と「実際に使えるイス」というものを両立させるのはかなり難しいと思います。
そこで僕は、ワークシートの(1)よりも(3)(創意工夫できる)を重視して制作することにしました。
(1)の使う場所や何をするときに使うかは「テレビを見るとき」としました。

続き 

「ワークショップなどで、親子で一緒にイスを組み立てる」という状況も見えてきました。
「段ボールを組み立ててできるブロックみたいに創意工夫できるスツール」ではなく「親子の仲も深められるし、ブロックみたいにして創意工夫できるスツール」のほうが素敵!

ワークショップで組み立てた後、周りの子たちと一緒に大きなモノを作ったり、遊んだり、座ったりして仲良くなってくれたらな。なんてことを完成してもないのに考えてしまいます。

僕が作る(予定の)スツールのポイントは

・ブロックみたいに遊べる。
・平らな段ボールを組み立てていくことでイスになる。
・梱包しておく箱すらも使って創意工夫していける。

の3つです。

プロトタイピング

どんどんプロトタイピングを繰り返して完成形に近づけていきます。

Ver.〇.□ の
〇の部分が変わっていたら、すべて作り替えた
□の部分が変わっていたら、細かいところを改良した(元のやつに手を加えた)
ということです。

CAD上で作ってみる

実際に段ボールを切って作る前に、Fusion 360 で作ってみました。
紙管を構造材として使う設計は、我ながらナイスアイデアだと思います。

illustratorで展開図を作る

とりあえず、illustratorで展開図を描きました。

実際に作ってみる (Ver.1)

スーパーや薬局からもらってきた段ボールの大きさに合わせて作りました。
結果としては、中途半端な大きさでした。

改良すべきところは
・身長130cm前後の子に合うイスの高さ(30cm)には短すぎ、2つ重ねると高すぎ。
・はめ込む部分の大きさが小さすぎて、組み立てにく、組み立てても強度が足りない。
の2つです。

実際に作ってみる(Ver.2)

・高さを30cmに。
・強度を確保するために、三角形の中心に紙管を入れる。
以上2つが改良したところです。

改良すべきところは
・補強のために紙管に通した三角形の部品と紙管の間に隙間があり、三角形の位置が動いてしまう。それにより、組み立てにくい。
・展開図で見たときに、横に長い長方形の穴が、組み立てるときに強度不足で破れてしまった。
の2つです。

実際に作ってみる(Ver.3)

組み合わせられるかテストするために6つ作りました。

・補強のために紙管に通した三角形の部品が動かないように、でっぱりを付け、周りの面に差し込んで固定するようにした。
・展開図を見たときに横に長い長方形の穴が破れないように穴の周りの段ボールの余白を大きくした。
以上2つが改良したところです。

改良すべきところは
・高さが少し足りない。(横の穴に2つ合体させたときに高さが微妙に合わない。)
の1つです。

実際に作ってみる(Ver.3.1)

6つ作ったことで、新たな問題に気づきました。
組み合わせるために使う紙管が、押し込みすぎるとイスの中に入ってしまい、分解しないと取り出せないということです。
そこで、紙管に十字のパーツを入れることで、解決しました。

完成に近づいてきた感じがしています。

そんな、まさか!

2回目の授業で先生から「言い忘れていましたが...紙管を使い体重を支えるのはダメです」と言われてしまいました。
僕は自分の耳を疑いました。あと1週間早く言っといてほしかったです。
あと少しで完成と思っていたので、かなりショックでした。

1から別のアイデアで作り直すか、紙管を使わずに体重を支えられる構造を考えるか、、、

別のアイデアで作り直す気力は残っていませんし、こうなったら意地でもこのアイデアで突き通してやろうと逆にやる気が出てきました。

実際に作ってみる(Ver.3.2)

上記の問題は、あっさり解決しました。
紙管の代わりに、段ボールを折って作った六角形のパーツを使うことにしました。
思ったより強度があって、段ボールすごい!と思いました。

また、思いがけず以下のようなメリットも出てきました。
・収納したときに、よりコンパクトになる。(紙管は小さくならないけど、これは小さくなる!)
・三角形のパーツがしっかり固定できるから、凹凸をつけてはめ込むようにしなくても大丈夫。

実際に作ってみる(Ver.4)

組み立てるときに使う紙管を差し込む穴を改良しようとしました。
これまで紙管のサイズと穴のサイズをピッタリで作っていましたが、穴のサイズを紙管よりも少し小さくしその分切り込みを8カ所に入れることでしっかりと固定するようにしてみました。

失敗でした。
ダンボールが硬すぎて上手に折れてくれませんでした。
ダンボールの目の方向との関係も難しいのでこのアイデアは没です。

あと、スーパーや薬局で、良さげな段ボールを探す毎日にも疲れてきたので、段ボール板を購入しました。
以前のものと比べて、頑丈に作れるようになって、ピシッ!という雰囲気も感じるようになりました。

実際に作ってみる(Ver.4.1)

細かいところを1点改良しました。
三角形のパーツです。
これまでは計算上ピッタリのサイズで作っていましたが段ボールの厚さや折り目の具合によって、少し大きすぎな状態になっていました。
そこで2.5mm内側に小さくしました。

また、紙管から六角形に折った段ボールに変えたおかげで、3カ所のの凸になっている部分は不要になりました。
ダンボールを切り出すのが楽になるし、一石二鳥です。

実際に作ってみる(Ver.5)

(Ver.4.2)で三角形のパーツの凸部分をなくすという改良を加えたので、周りのパーツも作り替えなければならなかったのですが、面倒くさくて作り替えていませんでした。

また、(Ver.3)で改良すべき点として挙げた、高さを少し低くするというのを、すっかり忘れていました。

そこで今回改良したのは、以下の2点です。
・三角柱の側面にある、全部で6カ所の長方形の穴をなくす
・高さを少し低くする

2番目の高さの問題は、勘で8mm低くしたらピッタリと合うようになりました。ラッキーでした。
(2枚目の状態→3枚目の状態)

ちなみに・・・

Fabbleに書き込むのが面倒になるくらい、ダンボールを差し込むための穴の寸法や、差し込む側の寸法は何回も改良していっています。段ボールの厚さ(5mm)のこともあり、とても難しいですが
何度も試していくと、
・段ボールの目の向きが違うと、差し込む穴のベストな寸法も変わってくる
・折り目の付け方によっても、穴のベストな寸法が変わってくる
など、いろいろなことが分かってきて結構面白いです。

実際に作ってみる(Ver.5.1)

上下の穴に紙管を入れすぎると、スツール内部から取り出せなくなってしまうという問題を解決するために、でっぱりを付けました。

実際に作ってみる(Ver.6)

全体的に良さそうですし、時間的な制限もあるので、そろそろ完成品(提出用)を作っていきます。

三角形

予備も含めて56枚切り出しました。
手作業では大変そうだったので、レーザーカッターを使って切り出しました。
プロトタイプ通り、1つのブロックに9枚ずつ使うとすると、6つのブロックを作るには 9×6=54枚必要になりますが、いざ切り出してみるとかなり量があるので、もう少し減らすことを検討中です。

ジョイント用の紙筒を切る

芯になっているパーツを紙筒から段ボールで作った六角形に変えたので、以前切っておいたジョイント用の紙筒の長さが合わなくなったので、新しく切りました。
12個切っておきました。

六角形の芯を切る

六角形の芯のための段ボールを切りました。
プロトタイピングの時はピッタリ作れていたのに、ここにきて何故かピッタリに作れませんでした。
折り目の位置と、ダンボールの波になっているところ(中芯)の位置がうまく合わないとずれてしまいます。
余分に作って、まともな6枚を選んでおきました。

完成

完成しました。
座ってもびくともしません!
満足できないところもいくつかありますが、全体的な完成度は満足です。

ちょっと遊んでみる

プロトタイプも合わせて遊んでみました。
もちろんスツールとしても充分に機能すること、ブロックのようにして遊べることが確認できて一安心です。
自分が9歳のときに欲しかった、、、
こんなブロックで遊びたかった、、、
なんて思えたので嬉しいです。

そういえば、、、

そういえば、ゲーム機のswitch用の商品で「Nintendo Labo」というものがあることを知りました。
今回僕が作ったこのスツールは、ゲームが好きでモノづくりなんて眼中にないような子たちが、Nintendo Laboの延長線上のような感じで気軽に作って、モノづくりの楽しさを知ってもうための第一歩のようなものにもなれそうだなと感じました。

ということで、最初に結構適当に決めておいた「どこで何をするときに使うスツールか」というのは、「リビングでswitchのNintendo Laboをするとき」がしっくりくるので、そういうことにします。

収納ボックスを作る

制作の条件として
・使わないときは解体して、持ち運べる。
・コンパクトに収納でき、コンパクトにした時に固定できる。
という条件があったので、収納するための箱を作ります。

収納したときの配置を考える

こんな感じで収納するのが、一番コンパクトになりそうです。
B3ぐらいのサイズです。

三角形のパーツの収納を考える

三角形のパーツをそのまま収納するとバラバラになってしまうので、三角形のパーツを固定するための箱を作りました。
・高さの低い三角柱がおにぎりみたいに見えたので、蓋の固定方法を工夫して、親しみやすいし、おにぎりらしさ(?)を演出しておきました。
・取り出しやすいように、切り込みを入れておきました。

プロトタイプを作る

色々考えた結果、上に書いてある配置と変えることにしました。

前回の授業で、紐を使ってはいけないと言われたのでダンボールを2カ所差し込んで箱が開かないようにしました。
ただ、少し空いてきてしまうので、4カ所で差し込むように改良すつもりです。

本番

上手にできました。

コンパスカッターとデザインナイフの刃をいいやつに買い換えたので、綺麗に切れました。もう少し早く買い換えておけばよかったです。

まとめ

今回は、素材が普段使い慣れていない段ボールということもあって、プロトタイピングをとにかく何回も重ねることで完成形に近づいけてくという方法をとりましたが、最初の設計段階でもう少し洗練できていれば良かったと思います。
振り返ると後悔することも少なからずありますが、今回の経験を次のモノづくりに活かしていこうと思います。

写真撮影(2022年追記)

ふと思い出し、せっかくなので写真を撮っておこうと思いました。
近所の公園で写真をとってきました。

コンペに応募してみる

「毎日・DAS学生デザイン賞 第37回高校生デザイン賞」の<プロダクト部門>に応募してみました。
写真は、応募するために制作したプレゼンシートです。

受賞しました

入選しました。
学校で外部単位の申請を行ったところ、2単位もらえました。
頑張っておいてよかったです。