自己紹介

豊田高専建築学科の二人です。
村松 : かわいらしいものが好き / アイデアに富んでいる
   建築の意匠系の研究室に所属しており、デザインが得意
中山 : 3Dプリンターやレーザーカッターを使うのが好き
   街づくりのハッカソンに参加するなど、最近は街づくりに興味がある。
   建築環境工学(建築と自然環境の関わり方に関する分野)が好き。

この二人のコンビでFAB3D CONTESTに挑戦してみようと思います。

何をつくろう


FORZEASの特徴とは

FORZEASの特徴を自分たちなりに整理してみました

・植物由来
  - 土中に比べ微生物が少ない海水中でも分解される(海洋生分解認証“OK biodegradable MARINE”を取得している) 
→ (コンポストを利用せずとも)土に埋めるだけでも分解されそう

・(昨年と比べて)3Dプリンターでの造形がしやすくなった 
→ 3Dプリンターでしか造形できないような形(射出成型などでは造形できない形)もつくれそう

そもそもFAB LIFEって?

「3Dプリンタなどを用いたデジタル工作機械を用いた技術(ファブ)と植物由来の新たな素材のおかげで変化した、FAB技術が循環型社会に寄与している暮らし方」ということだろうと僕たちは考えました。

ただ、現実的に考えてみると、たった一つのプロダクトで社会や生活のあり方を変えることは難しいのではという意見もあり、それらの議論から、僕らが目指すプロダクトはあくまでも
「FAB LIFEを実現するキッカケになるプロダクト」とします。

アイデアを考える

アイデアだしをする際に意識したのは、

・誰かがFAB LIFEのことを意識するキッカケとなること
  →誰もが気軽に手に取れるモノであること
  →愛着を持てること
  →日常に馴染むモノであること

アイデア一覧①

・プランター

・コサージュの金具の代わり
 卒業式などでコサージュを付け終わったあとに、地面に埋めておくとFORZEASで作られた金具(の代替部分)が分解され、3Dプリンターでの造形中に金具内部に仕込んでおいた植物の種が発芽する
  → コサージュを付けていたときの思い出を色褪せさせない

・がちゃがちゃのカプセル

・トイレの芳香剤の入れ物
 使い終わった後に地面に埋めると分解され、造形中に内部に仕込んでおいた植物の種が発芽して、二度楽しめる

アイデア一覧②

・タイムカプセル
 徐々に分解され、ある程度分解されたところで、あらかじめ仕込んでおいた植物の種が発芽する
  → 掘り出す。具体的な時間が決められていないタイムカプセルだからこそ書ける手紙もあるのではないか

・生ごみの袋
 一切生ごみに触れることなく、生ごみのにおいを外に漏らすことなく、捨てることのできる

・ワインの熟成
 花が咲いたら飲み時

・花瓶

がちゃがちゃ×プランター

がちゃがちゃというアイデアとプランターを作るというアイデアをくっつけてみたら面白そうな気がしてきました。

がちゃがちゃに関することを調べてみる


最近のがちゃがちゃの流行り

ショッピングモールのがちゃがちゃコーナーに行ってきました。
クオリティーが高いモノが多くて驚きました。
調べてみたら、最近、結構がちゃがちゃが大人の間でブームが来ているようです。

あと、カプセル無しのがちゃがちゃ、というものがいくつかありました。
「丸っこい形状である程度大きなモノ」の場合、カプセルに入れられずともがちゃがちゃの機械はちゃんと機能するみたいです。
例えば2枚目と3枚目の画像は、炊飯器のがちゃがちゃと、太鼓の達人のがちゃがちゃですが、この二つの場合、これがそのまま出てきました。

カプセル無しのがちゃがちゃは、「カプセルが必要ない」という点において環境にもやさしいアイデアだと感じました。

がちゃがちゃのカプセルの大きさはどのくらい?

インターネットで調べてみると、大体直径45mm~75mmになっていることがわかりました。

しかし、実際のがちゃがちゃのカプセルを調べてみると、最も大きいものは直径80mmでした。

コンセプトイメージ

大体のイメージ図を描いてみました

・がちゃがちゃ

・カプセルがそのままプランターになる

・植物が大きく育ってきたら、プランターごと土に植える → プランターは分解され、植物はそのまま大地に根付く

以上の3つが大きなポイントです

分解されやすくするためには

分解されやすくするためには、造形物が土に触れている部分の表面積を増やすことがポイントになりそうです。
表面積が大きそうな構造を調べてみました。
・ジャイロイド
・ボロノイ 
・「ひだ」のようなものを作る

などの構造を利用しプランター内部を埋めることで、FORZEASが土の代わりになってくれないかなと考えたりしましたが、植物由来&生分解できるという特徴を持っているFORZEASとはいえ、あくまで人工的に合成して作られたものと考えると、FORZEASも生産過程で多くのエネルギーを消費しているだろうし、そもそも植物にとっては土が一番良い環境であることは間違いないので、育てる土壌はあくまで「土」とします。

そうはいっても...

そうはいっても、カプセル自体に分解されやすくする機能を持ったデザインにしたかったので、プランターにとって絶対必要な機能である、水はけのための穴(排水穴)を利用して、右の絵のような形を作ってみることにしました。

以下の3点がポイントです。
・プランターに排水穴をあけなければいけない
・しっかり頑丈な構造であること(フニャフニャしていて、持ち上げたときに変形して土がこぼれてきたり水がこぼれたりするのは嫌だ)
・土と接している表面積は大きい方が良い

CADで設計(試作1)

スピーディーに数多くの試作品を作ることを見据えて、Rhinoceros + grasshopper で設計しました。

grasshopperは「パラメトリックデザイン」と呼ばれる、パラメーター(数値変数)を設定して数値を変えていくことで、数多くのデザインを生み出すことができる設計方法です。

grasshopper

6つのパラメーターで形を制御できるようなプログラムをつくりました。

3Dプリント

2019年のFAB3DコンテストのときにいただいたAFINIA H400+を使います
僕は学校で寮生活をしているため、3Dプリンターを学校の先生の研究室に置かしてもらいました。

PLAで試しに出力

1枚目の画像の状態でがちゃがちゃから出てきて
2枚目の画像のように二つパーツにバラされて
3枚目の画像のように二つのパーツを重ね合わすことでプランターになります

試作2


変更点①

試作1では、上下対象な球だったので上下のパーツを重ねてプランターの形にしたときに水が溜まる隙間が全然なく水を貯めることができない、という問題がありました。

そこで試作2では、上半分のパーツを縦方向に伸ばすことで卵のような形にし、プランターの形にしたときには、水の溜まるスペースができるような形にしました。

また、卵のような形は、人々にFAB LIFEを意識してもらうためのキッカケとしてのプロダクトとしてピッタリな形だと思いました。

変更点②

試作1では、穴がたくさん空いている方のカプセルの厚さは造形がうまくできるが心配だったこともあり5mmで設定してありましたが、想像以上に造形が綺麗にできていたのと、厚すぎると土に埋めたときに分解されるまでに長い時間がかかりそうなので、3mmに変更しました。

PLAで試しに出力

いい感じです。
チーム内では、完璧なクオリティーだからもう完成しちゃったね、なんて会話をしていました。
しかしながら、話し合ってみると、内側の穴が大きすぎて土が外に漏れてきそう、という考えに至り、試作は続きます。

試作3


変更点

内側の穴をかなり小さくしました

PLAで試しに出力

いい感じです。
穴の部分に関してはかなり完成度が高いものができたと思います。

しかし、凸になっている、二つのカプセルの結合部分がかっこ悪い、、、
凸になっているでっぱりを小さくしたいです。

FORZEASで出力

そろそろ応募締め切りも近づいてきているので、FORZEASでプリントしてみました。
メイカーズラボとよはしのUltimaker S5という高性能な3Dプリンターでプリントしてもらいました。
造形がとてもきれいです。

試作④


変更点

二つのパーツの接合部分のでっぱりを小さくしました。
これまでの試作品と異なり、接合部分のジョイントを斜めに切断したことで、でっぱりを小さくしました。

上のパーツの厚みを試しに1mmまで薄くしてみました。

PLAで試しに出力

ジョイント部分はいい感じです。

上側のパーツは、薄くしすぎたせいでサポート材を外すときに少し壊れてしまったので、上側のパーツはこれまで通り2mm程度にしようと思います。

ジョイント部分を斜めに改良したおかげで、プランターの形にしたときに、二つのパーツがしっかりとかみ合うようになりました。このことは想定していなかったのでラッキーです。

似たような商品を探す①

そういえば既に売られている同じようなプロダクトがあったら悲しいので、似ているプロダクトを探してみました。

・がちゃがちゃ×植物栽培
 →根本的なアイデア自体は似ているものの、既にあるものは「植木鉢がでてくるがちゃがちゃ」であり「植木鉢に種を植えて植物を育てる」ということが全て。自分たちが作っているモノは「カプセル自体がプランターになる(ゴミが出ない、環境にやさしい)」」「プランターごと土に埋めれる」という点において異なる。

・たまごの形の植物栽培キット
 →形と土に還るという点においては似ているものの、自分たちが作っているモノは「がちゃがちゃだから様々な人が気軽に入手しやすい」という点において異なる。

似たような商品を探す②

・土に還る植物栽培キット
 → 「土に還る」という点においては似ているが、自分たちが作っているモノは「がちゃがちゃだから様々な人が気軽に入手しやすい」という点において異なる。

試作⑤

試作④がいい感じにできていたので、そろそろ完成できるかな、と思い、上側のパーツの厚みだけ2mmに変更し、メイカーズラボとよはしでプリントしてもらいました。

えっ、、、造形失敗

まさかの造形失敗です。
造形開始から5時間程度経過したところで造形がうまくいかないようになり、造形を中断しました。

メイカーズラボとよはしの3Dプリンターの予約が空いている時間は11月7日(締切日)までにはありません。
つまり、メイカーズラボとよはしにプリントを頼ることはできなくなりました。

スタンドを作る

このがちゃがちゃ(プランター)はたまごの形をしているので、転がりやすいです。
なので安定して立たせるためにスタンドを作る必要があります。

作ってみると、1枚目の画像のような形である必要はなく、ただのリングみたいな形で十分な気がしてきました。
そこで2枚目の画像のような形に改良しました。
バッチリです。

自分の3Dプリンターで造形するしかない

できればメイカーズラボとよはしの高性能な3Dプリンターでプリントしたかったのですが、もう自分の3Dプリンターで造形するしかありません。

念のためフィラメントは取り寄せておいたものの、セッティングはなにもやってありません。
締め切りまであと4日間しかありません。
急いで、FORZEASを自分の3Dプリンター(AFINIA H400+)でも使えるようにセッティングを頑張ります。

ひたすら調整

四角いキューブの造形は結構上手にできるようになったと思って、球をプリントしてみたらボロボロでした。

それでもなんとか

なんとか造形できるようになりました。
喜びよりもホッとしている感情が大きいです。

設定

できるだけ急加速をせず、遅いスピードでプリントしました。

FORZEASはPLAなどと比べて、硬化するまでに少し時間が長くかかるなと感じたので、ノズルの温度はできるだけ低く、ベッドの加熱もせず、プリンター上部の蓋も開け、できるだけFORZEASが冷めやすいようにしました。

完成!

とうとう完成しました。

中身

このがちゃがちゃの中身には、種、水で膨らむ土、スタンドが入っています。

使い方


①がちゃがちゃをする

がちゃがちゃをして、カプセルを手に入れます

②開封

中には
1. スタンド
2. 水で膨らむ土
3. 種
が入っており、カプセル自体がプランターになります。

③土を膨らます

土を穴の開いていない方のカプセルに入れ、水を注ぎ、土を膨らませます。

④種を植える

土が膨らんだら土を穴の空いている方のカプセルに移し替えて、種を植えます。

⑤ある程度成長したら土に植える

穴を掘ってカプセルごと土に植えます。
カプセルから植物を取り外す必要がないので、植物が傷つきにくいです。

最後に

「SDGs」や「循環型社会」「サステイナブル」など、環境のことを意識した言葉を聞く機会は増えてきていると感じていますが、人によっては全く知らない方やよく知らない方も多いと感じています。
そこで今回はあくまでFAB LIFEを実現する「キッカケ」となるモノにフォーカスをしてモノづくりをしてみました。実際にがちゃがちゃとして売られていても違和感を覚えないレベルのモノをつくることを目標に頑張ったおかげもあり、そこそこ完成度の高いものがつくれたのでうれしいです。

このプロダクトが実際に売られて、これがキッカケとなり誰かがFAB LIFEを意識してもらえるようになったら幸いです。

3Dプリンターを学校に置かせてもらえてよかった

学校の先生の教員室に3Dプリンターを置かせていただけたことで、スピーディーなプロトタイピングを行えただけでなく、様々なバックグラウンドや専門知識を持っている高専の先生方から、様々なアドバイスをいただけたり、友達から素直な意見を多くもらえたり、などとたくさんのメリットがありました。