ちょっとした棚が欲しいけど、そのちょっとが見つからない。

借家に長く住んでいると、あちこちを少しずつでも弄りたい願望が湧いてくる。

トイレットペーパー置くとこが欲しい、帽子かけるとこが欲しい、植物を部屋に飾ってグリーンライフデビューしたい、とか。

ちょっとだけ便利にしたい、素敵にしたいと思う時、そのちょっとを満たしてくれる家具/道具を見つけることはとても難しい。

そんなに大層なDIYをしたいわけじゃなく、工事を何処かに頼むような規模でもない。休日の空いた時間にできる程度でやりたいけど、そこそこ重いものも載せたいし、簡単には壊れないようなシッカリした棚が欲しい。

自らのこんな願望を満たすため、この「ちょっと棚」問題に取り組むことにした。

継手の技術をファブで実現できるか?(ひとりごと)

家具職人として日々クライアントの無茶なオーダーに答える日々で、あらゆる木工技術を身につけてきたが、この技術は真似できる人が少ないからことその道のプロとして仕事を受けることができる。

その技術の一つに木工継手がある。
木を加工して繋ぐことで、椅子から建築物までを作ることができる。
木工継手は素晴らしい技術だけど、ファブで誰でも作れるようにしていったら職人である自分は職を失うのだろうか?と考えた。

ほおっておいても技術のオープンソース化は進むだろうし、であれば自ら率先してやってやろう。何百年も続いた職人の技術は宝の山だけど、オープンソース化することで新たな技術が生まれることが大事なんじゃないか。

継手を使った棚受けを作ろう

ちょっとした棚を取り付けるには棚受けが必要だ。
棚板はホームセンターに行けば自由なサイズに切ってもらうこともできるし手に入りやすい。
けれどちょうどいいサイズの棚受けはなかなかないし、いい感じの木の棚受けははっきり言ってどこにも売ってない。あっても弱々しくて、ブランターとか置きたいのに心もとない。

サイズのオーダーメードができる棚+棚受け。これはスキマ家具としては欲しい人いるんじゃない?と考えた。

継手部分を樹脂のパーツに変換する

棚受けは3角形にすることにした。
継手の部分を3Dプリントで作れるように設計する。
こうすれば角材を木で作るだけで組み立てられる。
コーナーを丸くすることでどのような場所につけても邪魔にならないようにした。
見た目もいい感じになるだろう。

かなり簡単に組み立てができるようになった。

ジョイント部に棒を差し込むだけでかなり簡単に組み立てができた。

これを木工継手で行う場合は締結するための工具とちゃんとした技術がいるが、このファブ棚受けはなんの道具もいらず、プラモデル感覚で組める。

我ながら恐ろしい道具を生み出してしまったと震える。


組み立てるとしっかりした3角形になった。

組み立て完了。接着剤を使わなくてもかなりしっかりしている。
セメダインを入れれば強度は十分だろう。

木の棒の長さを変えれば3角形のサイズが変わるので、ほぼどんなサイズの棚にも対応できる。
今回は3角形だが、ジョイント部の形のバリエーションを増やせば四角もできるし、どんな形もできるだろう。そうすると椅子やデスクの脚もできそうだし、発展性が感じられる。

FUSION360を習いつつ、3Dプリントについて学ぶ。

fabcafeHIDAでFUSION360の講習を受けて、試作モデルを作ることにした。
本格的に3Dアプリを使ったデザインをやってみて、これは結構使えるなと感じたので、本気で勉強を始めることにした。

頭の中にあるアイデアを引っ張り出すのに効果的なツールだし、クライアントへのプレゼン力がぐんと上がると思う。