TECHTILE Workshop04: Map

Created Date: 2014-12-12/ updated date: 2021-11-05
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    NYCでの触感Map

    posted by mnakatani on December 15, 2014
    [人数]1人
    [時間]180分(2pm-5pm) [手順]
    (1) 散歩をしながら見つけた触感を、iPhoneで撮影する。
    (2) 撮影したら、その時に感じた触感を記載してtwitterにアップする。 (3) 帰宅後,Google Viewsに写真をアップロードして,場所を触感の関係を眺める. https://www.google.com/maps/views/profile/114514170904897569547?gl=us&po=1&pv=1&tab=2

    [体験ノート]街の触感を見つける散歩に出る
    ニューヨークはとても慌ただしい街だ. いつも人はせかせかと歩いていて,今にも人とぶつかりそうになる. アメリカ人であっても,ニューヨークの街を歩くのはあまり好きではないという. 特に平日はみんなが早足で歩いているし,ぶつかることにニューヨーカーは馴れているからだ.
    この日曜日に,僕は研究室での実験もそこそこに終わらせて,そんな慌ただしい街にはどんな触感が落ちているのかを調べることにした. ニューヨークの中心部,マンハッタンは山手線の内側とほぼ同じ面積なので,ものすごく広い訳ではないが,1日で探索を終えることは難しい広さだ. そこで僕は研究室のある168番通りから,ダウンタウンに向かう鈍行の地下鉄Cラインに乗って,気の向いた駅で降りることにした 降りた駅はウェストサイドの81番通り.ここはアメリカ自然史博物館の最寄り駅であって,地下鉄の構内もちょっとしたウィットが利いている. 例えば,壁面にはティラノサウルスをかたどったの化石オブジェがあったり,駅のタイルも他の地下鉄駅とは違って装飾が施されている. この駅の周りには触感がたくさん落ちていそうだ.勇んで地下鉄の駅を駆け上がって地上に出ると,ひんやりとした空気とともに眼に入った空から冬らしい日差しが降り注いでいる 自然史博物館の周りはちょっとした公園になっていて,コンクリートだけではなくて草をふむ柔らかさやスベスベとした木にも触れられる. 日曜日ということもあって,公園脇の歩道では露天市場が出ていて,リンゴや野菜,プレッツェルなどローカルで収穫された食べ物が売られている. さらにクリスマスを10日前に控えた今日は,森で切り出してきたモミの木がたくさん陳列されていて,森の香りとともにそのチクチクしそうで柔らかい葉が手に触れる.思った通り,この駅の周りは触感があふれている.
    お昼ご飯を食べ損ねていた僕は,ここにきたらお決まりのコースになっているShack shackでハンバーガーを食べることにする.午後2時を過ぎているにも関わらず,お店の中はテイクアウトする客,食べ急ぐ客,親子連れでたくさんのハンバーガーをかけた客であふれている.そんな様子を眺めながら,僕は列に,大勢の客対応で疲れ果てた様子のウェイトレスにハンバーガーとルートビールを頼む.待つこと20分,やっと出てきたハンバーガーを持って,せっかく研究室の外に来たのだからと,向かい側の道の黒いベンチに座ってハンバーガーを食べることにする.ひんやりとしたベンチはふらふらと心もとない揺れ方をしたが,そんな不安定さも触感を探す醍醐味の一つだ.
    ベンチの前で店を出していたので,プレッやtルを買ってみると思った以上にしょっぱくともカリカリとした香ばしい味がする.ルートビアではなくて普通のビールを頼めば良かったと思いながらも,カリカリかじりながら道を歩くことにする.
    セントラルパーク横の道をダウンタウンの方向に少しくだると,ダコタハウスが見えてくる.道路と住宅をしきるフェンスの意匠がこの当たりは凝っていて,トゲトゲした構造が多い.実際に触ってみると,表面はなめらかであったりして,見た目と比べるとそこまでゴツゴツした触感がsないのが不思議だ.
    当然のことながらダコタハウスの中には入ることができないので,僕はセントラルパークを歩き回ることにした.アメリカ自然史博物館に併設されている公園と同様に,セントラルパークはいろいろな触感がたくさんある.ストロベリーフィールドのフェンスをわずかに越えて葉を伸ばす草の葉っぱ,ゴツゴツとした岩,週末にはどこからともなくやってくる多くのランナーによって踏み固められた道.冬の一番寒い頃には凍結してしまう池のほとりに,誤って氷結した湖に落ちてしまった人を助けるためのはしご.見たことのないタンポポの綿毛のような雑草.ウッドチップがたくさん敷き詰められたエリアのふかふかとしたある着心地.橋の欄干.さびた電灯のポール.そこら中に触感は転がっている.ちょっとの間,すわっていたベンチで僕のお尻は冷たくなってゆき,日も暮れてきてほどよい寒さから本格的な冬の夜の風が吹いてきていた.
    ウェストサイドのマンハッタンからセントラルパークをつっきると,マディソン街通りに到着する.メトロポリタン美術館がちょうど目の前にある当たりにたどり着いた僕は,この辺りで面白い触感がないか探してみた.しかし,ここはとても整備されていて,結局面白かったのはエントランスの階段を登るために取り付けられた手すりの,観光客が触れてゆくことで少しずつ形成されていったくぼみだった.
    メトロポリタン美術館を通り過ぎて東側に行くと,さらに不思議なことに気づいた.触感を見つける散歩を開始してから2時間が経過していたが,セントラルパークを挟んで西側と比べて,マディソン通りやパークアベニューのあたりは,これといった触感が見つけられないのだ.高級ブティックが立ち並ぶこの辺りで,お店に入ることなく何か触感を見つけようとしても,無理な話なのかもしれない.しかし,クリスマスデコレーションの松ぼっくりはプラスチックのイミテーションで,最近植えられたであろう葉牡丹も,どこかなじんでいなくて,触れたいとあまり思わせなかった.同じマンハッタンの西側と東側でこんなにも触感のバラエティが異なるのかに気づかされたのは面白い.
    3時間,歩き続けた僕は地下鉄に乗って自宅に帰る気力もなく,やってきたバスに乗り込むことにする.日本のバスとは似ても似つかない,プラスチックの椅子に,足が床に届かないくらい高い座面,そして激しいバスの揺れにすこし酔いながら,僕は街を眺めながら家に帰った.ウェストサイド177番通りにある大学のドミトリーに住んでいる僕は,81番通りのイーストサイドに増して,僕の住んでいる地域はガタガタと平坦のない路面以外に,もっと触感の乏しい地域であることに,バスから降りて改めて気づくのだった.

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