発端:IoT部門で応募したいけど、お題がなぁ。。。

去年の笑ファブ部門が今年もあるものと期待しネタを温めていたものの、なんと今年は笑ファブ部門がIoT部門に。

乗りかかった船、IoTとかやったことないけどいっちょ応募したったろうじゃないか、と思うものの、唯一引っかかるのがお題との組み合わせ。

問い:そもそもIoTで人を笑顔にする必要があるのか?

いや、ないよね。

どう考えてもない。

だって数万年間、IoTがなくても人は笑顔を知っているので、つまりは事足りてるってことじゃん。

今まで問題なくできていることを新しい技術でやろうとするのって、
金持ちのハイテク遊びみたいにしかならないわけで、
有限な資源とエネルギー突っ込んでやることだろうか?

…あ、もしかして…?
このお題の不完全さも看破してアウフヘーベンで乗り越えて行け! みたいな激ムズテーマってこと?

そうか、そうなのかー!
(ポジティブ)

[重要] 目の前の人と楽しむために、インターネットの海につながる必要もない

これも大事なことだと思うけど、笑顔になる責任を「他の面白い人」に委託しないこと。

例えるなら、何かの条件をセンシングして、最終的にYOUTUBEに接続されて面白動画が流れる、みたいなことじゃなくて、

笑顔になるのもするのも私でありあなたである、という前提があった方が、作るものが変なとこ行かないと思う。

あくまで、私が誰かを笑顔にしたいと願う、そのサポートをするものを作る、というスタンスでいく。

コンセプト:笑顔を誘うことの意味を考える


一発ギャグではなく、笑顔に意味のあるものを

一発ギャグがなぜ面白いのかと言われれば、
それは「みんなが笑うことになっているから」である。

みんなが笑うから同一ネタを繰り返されても面白いのであって、
そうであるならば必要なのは「秀逸なギャグ」ではなくて、笑いを共にする「良き隣人」である。

要素その1:脳の構造からくる笑顔

ちなみに、周りの人が笑うと面白く感じるのは「社会的証明」という集団心理である。
これは身近なところでいえば、
ドリフや志村けんの番組でもおなじみの、後付け笑い音声が持つ効果である。

多くの人があの笑い声を野暮ったいと思っていると私は想像するが、実際にはあの音声を入れるだけで番組の評価は劇的に上がる。

ある人の話が面白いかどうか、というのは言ってみれば本質的な判断ではない。
その人の話す空間は笑う人が多い、から面白さが増すのであって、
その人の話す空間にいる笑う人の数と、話の面白さの間に必然的な関係はない。

ゆえに、笑う声の多い空間で話せば話は面白くなるのである。

あ、あなた今、眉にツバつけましたね!

要素その2:人と話をする際の安心感を、いかに得るか

例えば、

・相手が喜ぶかわからない条件で面白い話をしようとするのと、
・かなりの確率で相手が笑ってくれるとわかっているうえで面白い話をしようとするのと、

自分の安心感は大幅に違うのではないか。

また、推測だけど、何を言っても受け入れてもらえる(or 笑ってもらえる)関係性を、脳は「信頼感」と誤解する気もする。

というわけで、何を話しても笑ってもらえる環境を作れる道具があったらいいよね。

以上を踏まえて、今回作るのは「空間中の笑い成分を増やし、他者に受け入れられる安心感をもたらすもの」。

そのための手段:SonyのMESHを使う

タイミングよく、たまたまMESHフルセットをもらうご多幸に恵まれたので、せっかくだからMESHを使うことにした。

広く人口に膾炙し、誉れ高きMESH。
触ってみると、、、なかなかどうして、これは面白い!

コンセプト完成!:落語の「扇子」を目指す

MESHの小ささ、軽さにを扱ううちに、ほどなくコンセプトが決まった。

落語の扇子は、それ一つでキセルになったり、箸になったり、見てる側の想像力によって用途を変える。

そこまでハイセンスではなくとも、多様な使い方のできるものを目指した。
(一つの用途に限ると他のことに使えなくなる)

名前は「PartyTime」とした。どうだ楽しそうだろう!

MESH側を整える

今回使うのは
・ボタンタグ
・温湿度タグ
・動きタグ
の3つ。

PartyTime、3つのセンサータグ

PartyTimeには3つの窓があり、ここに最大3つまでMESHタグを入れることができる。

今回の配置は、
・手前上部にボタンタグ(右手親指部があたる)
・向かって右側に温湿度タグ(右手掌(たなごころ)があたる)
・向かって左側に動きタグを入れた。

これにより、
・話者の任意のタイミング
・話者の体温
・話者の動作によって

MESHアプリに信号を送ることができる。

ドッカンサポート

右手親指が当たる位置にボタンタグを配置。

このボタンを一回押すと、MESHアプリから笑い声がする。
カウンターがついていて3回ごとに歓声が上がる。

これだけでも十分話の面白さが増す。

ボルテージシステム

右手掌(たなごころ)に位置する温湿度タグを使い、話者の体温上昇をチェック。
一定の温度に到達すると、

・環境音として談笑音が再生され、
・放送禁止用語を隠すピー音がランダムに再生
・さらにそれらが閾値を超えるとIFTTTと連携し、励ましメッセージがnotificationで届く。(いらない機能な気もする)

社会的証明の明示

・ボルテージシステムの閾値を超えて
・放送禁止音サポートが一定回数を超えると、

IFTTTと連携しnotificationで励まし通知が来る。
メッセージは3種類。基本的にスケールは壮大。

いつでも発表!ドラムロール

ボタンタグ2回押しで
ドラムロール再生。
しかも再生後は1秒間の待機のあと、
歓声が上がります。

唸れ三味線! べべナイザー

三味線をかき鳴らすようにベベンとお腹の前でPartyTimeを振ると、動きタグにより三味線音の再生に繋がります

ドラえもナイザー

ボタンタグを長押ししながら、

・ドラえもんのようにお腹のあたりのポケットを探し、
・天高くひみつ道具を掲げると、

ドラえもナイザーが発動する。
(ドラえもんがポケットから道具を出す音が再生される)

・ボタンタグの長押し
・動きタグの「上」
・動きタグの「裏」

が同時に起こることが条件。

とっておきの新製品を紹介する時に便利!


効果音をMESHアプリに足す

今回使ったのはiPadProなので、

・iTunesを使い、iPadProに効果音を入れる。
・メッシュアプリ内の、スピーカータグから「追加」→「ミュージック読み込み」

で、iTunesで移した効果音を参照できる。


 効果音編集の小技

画像のように、音声の始まる前に無音時間があると、鳴ってほしい瞬間に鳴らない!みたいなことが起こるので、無料の音声編集ソフト Audacityで無音時間を削除。

同じように効果音の再生後に無音時間があると、2回連続で再生したいときに待つ必要が出るので、これも削除。

ついでに音量をだいたい同じくらいにしておくとあっちの音は大きくてこっちの音はちっちゃい、というちぐはぐ感をなくせるのでおすすめ。

今回使った音源+α (1/2)

ズキューン音 https://dova-s.jp/se/play131.html
ピー音 https://dova-s.jp/se/play049.html
ワーオ音 http://145.rei-yumesaki.net/article/437407330.html
ドラムロール https://dova-s.jp/se/play900.html

今回使った音源+α (2/2)

キテレツの発明 http://commons.nicovideo.jp/material/nc78743
ひみつ道具の音 https://ux.getuploader.com/soysource_s/download/1081
イベント歓声2、宴会ざわざわ1 http://taira-komori.jpn.org/event01.html
三味線ベベン(有料 / $1) https://gumroad.com/l/AJCJ

3Dプリントでガワを作る

形状は軽く下書きした程度。

はじめはマイク形状にしようと思ってたけど、3Dプリントで既存のものを真似するとチープな雰囲気になるのでやめた。

最終的には、何かに似ている必要はなく、ただの棒状のものにMESHタグが入ればいいだろう、と結論。

必要要件

ラフトもサポートもなしでプリントできて、

・部品点数はひとつで
・指で押し込めばピタッと入ってくれて
・使っている間は脱落せず
・外したいときは指で外せて
・仰々しくない(人の目がここに向かわない)

ものを目指した。

Ver0.1はボタンタグと温湿度タグのみだった。

ver0.3くらいからタグを入れられる窓を4に増やそうとしたものの、プリント失敗が続く。

ver0.7くらいで窓を3に減らし、ようやくプリント成功。3つ目の窓には動きタグを入れることに。

難しくない形状なのに、地味にプリント失敗が続いた。

何回プリントしても、造形がベッドから離れてしまう。
しかも一回につき4時間とかかかるので、ずっと見ているのもしんどいし。

泣く泣くラフトつけても結果は変わらず。

なんだ、なんなんだー!

[解明] アーチの上端は薄くなる、かつ薄いために冷えるので反り、プリント中にノズルがぶつかる

というわけで、7回目にして決定的瞬間を激写した様子がこちら。

サポートを入れずにアーチ形状を作ると、どうしてもRのところに薄い部分ができてしまい、かつここはプリント後に急速に冷えてしまうので、反る。

すると、この反りにノズルがぶつかり、さらにはPartyTimeは背が高いので、大きな力でベッドと造形物の接合面にテコが働き、プリント中の造形物が剥がれてしまうことが判明。

これがわかるまで窓4つにしてたのだけど、以後窓を3にしたらぶつかる回数が減ったためか、造形が成功するようになった。

PartyTimeにMESHタグを入れる

窓部に小さな突起があり、これがMESHタグをがっちりホールド!

指だけでMESHの着脱ができますよ!

ようやく完成。

3Dプリント死屍累々。
7回目にしてようやく成功。

サポート材を入れない、というのも時に考えものですなぁ。

というわけで改めて完成した様子。

冒頭の動画と同じだけど、見るのが2回目でも楽しいだろう!

講演することが多いので、その度にちょこちょこ持ってってるけど、大体爆笑の渦になる。

すごいぞこれは。爆笑の湖。

ついでにMESHレシピも、MESHサイトにて公開

Sony MESHサイト
盛り上げ役の良き隣人「PartyTime」!

!!!本番で数回使ってみた使用上の注意!!!

1.[超重要] Bluetoothスピーカーとタブレット等をつなぐと、遅延が発生してシラケる
 → できれば有線でスピーカーにつなぐこと。できないならタブレット本体からの音の方がまだマシ

2.[超重要] 音質の悪い効果音、フェードインフェードアウトが露骨な効果音は逆効果
 → 打算を感じてシラケる

3.ドラえもナイザーは練習がいる
 → 動きタグの感知の仕方のクセを知らないと、なかなか発動しない。

4.みんなべべナイザーを使いたがる。多分簡単だから。

バリエーション

今回はただの棒にしたけれど、
いくつかのアイデアは

・木魚とバチにMESHを仕込んで、ひとりでも声明がやたら幽玄になる「夢幻幽玄お坊さんセット」

・リストバンドにMESHを仕込んで、例えば←↓←と手首を動かすと「昇竜拳ーー!!」と声の出る「往年の名作格闘ゲームセット」

などなど。木魚verはそのうち作るつもり。