制作過程

ドライバーの芯に装着することで、少ない力でも使えるハンドルを作りたいと考え、制作に取り掛かりました。しかし当初は、どのような形状にするべきか具体的なイメージが湧かず、試作の方向性すら定まっていない状態でした。そこから何度も試行錯誤を繰り返しながら改良を重ね、現在のモデルを完成させることができました。以下、その過程を説明します。

制作に至ったきっかけ

メカニカルな技術を活かして障害のある方への支援ができないかと考え、自助具を調べる中で、ドライバーに関するものが少ないことに気づきました。
ドライバー操作には、前腕や手関節の回内・回外、屈伸、側屈、円運動など多様な動きが必要です。これらは複数の筋肉や関節の協調により成り立ちますが、脳卒中後の拘縮、関節リウマチ、神経・筋疾患などで障害されます。
そこで、手の動きと構造を解剖学に基づいた設計で、操作が困難な方でも使いやすい補助具を制作しました。

ver.1

当初は歯車を使い1回転で大きく回すことを想定しましたが、デザインが思いつかずハンドル形式を試作しました。しかしバランスが不安定で慎重に回さないと外れ、持ち手に大きな力がかかり、折れやすい欠点がありました。さらに持ち運びも不便でした。

ver.2

直方体から円形に変化させたことで、安定して回転させることができるようになりました。一方でver.1に引き続き、一体型のため、回転時にホイルとホルダーの接続部分に大きな力がかかり折れやすい問題や、持ち運びの利便性にも課題が残りました。
<改善点>
・持ち運びやすいサイズ・形状にする
・芯をしっかり固定できる穴のサイズに調整する
・柄の根元が外れないように強度を高める
・手の中で柄が滑らない形状を工夫する

ver.3

持ち手が外れやすかったため差し込む方式に変更し、持ち運びも改善しました。持ち手は筒と軸を組み合わせた構造で、筒を握ると内部の軸だけが回転します。軸の中央を細く、また筒の中央を太くすることで抜けを防止し、軸の中心にはドライバーの芯を差し込む穴を作りました。またハンドルには三角形の穴を設け、滑り止めの効果を加えました。ただし軸の中央が細く、落とした衝撃で折れてしまうという課題が残りました。
<改善点>
・持ち手の軸の耐久性を向上させる

ver.4

軸の中央を細く、また筒の中央を太くしていた持ち手を、逆に軸の中央を太く、また筒の中央を細くしたことで抜けを防止する役割を維持しながらも耐久性も上げることができました。

作品の魅力

使い勝手が良く、「かっこいいから使いたい」と思ってもらえる、持ち運びやすい実用的な自助具を目指しました。持ち手と取り付け部品を同部品へ改良したことで、迷わずに部品を取り付けられる設計にしました。

STLファイルはこちら

ハンドル.stl

持ち手.stl