案出し編①

まずは最終課題の案出し。
Who, When, Where, Why, Whatの5Wを基にどのような靴にしたいかを考えたところ以下のようなコンセプトになった。

  • 外国人観光客、又は2020東京五輪のスタッフをターゲットに、
  • 「いつでも」がいいが、「どこでも」ではない(日本という地域性のある)、
  • 「和」のテイストのあるシューズ。

そこからそのコンセプトにそぐうような靴を考え、たどり着いたのが「和柄をあしらった足にフィットする草履」であった。

案出し編②

案出し編①で考えた「和柄をあしらった足にフィットする草履」のフィット感を実現するために考えたのは、足裏の部分にユニット化した和柄を敷くことによってそのユニット一つ一つが足裏の形に合わせて動き、その形にフィットするというものである。

まず1枚目のスケッチで足裏にフィットしそうな和柄を四種類(麻の葉、毘沙門亀甲、七宝繋ぎ、菱)挙げ、なんとなくどのようにフィットするかを考えた。

そしてその四種類から、麻の葉と毘沙門亀甲がフィットしそうだと考え、2枚目のスケッチでより詳細にどのようにその和柄が足にフィットするべきかを考える。

この2つのアイデアを軸に次のモデリング編へ続く...。

モデリング編①

まずは自分の足にフィットさせるために1~3枚目のように自分の足の型をスキャンし、モデリングに用いるRhinoceros上に落とし込む。

そしてその足型に合わせて和柄を敷き詰めていき、どれくらいのサイズで和柄のユニットを印刷すれば良いのかを決めていく。

このときは直径10mmの和柄を数十個印刷することにし、まずは何個かプロトタイプを印刷しどのような仕上がりになるのかをテストすることにした。

モデリング編②

まずこのユニット同士を接着するための素材に選んだのがこのMouldable Glue、つまり成形可能な糊であるSugruという製品を購入し、これを用いて接着することを試みることにした。
元々は断線してしまったケーブルや破れてしまったゴム製品などを補修するための製品だが、その可動性のあるオリジナルの素材が、足の裏の形にフィットするというコンセプトにぴったりだと考えこの素材を使用してみることにした。

異なる厚さで印刷した和柄のユニットたちを接着し、成形が完了するまで放置。
少し余ったので断線していたケーブルも補修し、満足。
これでユニットたちも上手く接着できていれば大満足なのだが...。

挫折からの立て直し編

Sugruでユニットたちを接着し、足裏にフィットする草履を作る作戦、大失敗。

ユニットの厚さが足りなかったのか、接着に用いたSugruの量が少なかったのか...。
とにかく足裏にフィットさせるために想像していた可動性は一切なく、むしろ圧力をかけると接合部からポロリとユニットが取れてしまうような結果に...。

ここで一度挫折を味わってしまう。
実に最終講評会まで2週間しかない時のことである。

田中先生やSAさんからいただいたアドバイスを基に「型を印刷し、それに足にやさしい素材を流し込む」という方向転換をすることに。

そこからRhinocerosをスケッチブックのように使い、新たな形を模索するように...。

モデリング編③

挫折から立て直し。

新たに考えた型をRhinoceros上で立体物にし、印刷...
と思ったがサイズが大きすぎてスライサーに収まらないことが発覚。

しかも印刷時間が約11時間30分ととんでもない時間を叩き出してしまう。
これだとメディアの許容時間を超えてしまう。

ということで2~5枚目のようにモデルを4分割しそれらをそれぞれ印刷した上で、後でそれぞれの型から出した足裏のパーツを接着することに。

両足のパーツを印刷するためにかかった時間は自分の都合もあり、約1週間。
物を完成させるために自分に残された時間はこれであと1週間だけとなってしまった。

レーザーカッター編

作るべきパーツは3Dプリンターで印刷した型だけではない。
「草履であるからには木材も使いたい」と考え、型と同じ和柄の配置の草履の下のパーツをレーザーカッターを用いて作ることに。

しかしこれもまた一筋縄ではいかなかった。

1枚目のデータの画像から見て取れるようにカットする柄は非常に細かくレーザーカッターの出力調整が非常に難しかったのである。
レーザーの移動速度が遅すぎたりすると2枚目のように柄の部分が焼けてしまう。
3枚目のような綺麗なものを二足分作るために実に5枚ほどの木材を費やした。

また時期も時期で「デジタルデザイン基礎」の最終課題とも被り、DFF-Wが空いている時間を狙うのもまた一つの困難となった。

組み立て編①

ついに出揃ったパーツ。
ここまでくるのに体を壊したりなどして大変だったが、ついに揃ったパーツを組み合わせるだけのところまできた。

しかしここまで来るのに時間がかかりすぎた。
最終講評会まであと1日しかない。
時間は本当にない。失敗はできない。

まずは型に選ぶ素材として選んだのは、熱可塑性のポリエチレン樹脂、「おゆまるくん」である。
約80℃ほどのお湯でぐにゃぐにゃに変形するおゆまるくんを沸騰したお湯に入れればより柔らかくなり、細かい型にもはまってくれると考え、早速実行。
しっかりとおゆまるくんが固まるまで待機...。

朝方の挫折からの妥協編

最終講評会当日の午前2時、圧倒的失敗。

おゆまるくんの柔らかさが足りず、上手く型にはまってくれない。
綺麗に型から外すこともできず、綺麗にはまってくれないことから和柄のみで出すことができなかった。

もう時間がない。
妥協するしかない。

ここで仕方なく今までのコンセプトを無視し、おゆまるくんをそのまま足型に流し込むことに。
悲しい。

*追記*

最終講評会での田中先生によるとポリエチレンの融点は130℃くらいらしい。
それは家庭の環境では無理だと痛感。

組み立て編②

妥協をしてからはもう早かった。
完成した木材のパーツをすぐに組み立て、そこにおゆまるくんを綺麗に流し込んでいく。
それだけであった。

あとは自分の足にフィットするように計算した位置に穴を開けそこに紐を通す。

非常に悔しい結果だが、これで完成である。

完成編

夜明けとともに完成。
妥協に妥協を重ねるような作品となってしまったが、これでも最終作品を完成させられたのである。

そしてふと朝日に完成した草履をかざすと下のパーツに"描かれた"和柄がステンドグラスのように浮き出てきた。
図らずして出てきたギミックに自分も思わず声を上げてしまった。

少しでも綺麗な作品を作ることができて、ほんの少し満足することができた。

またしてもものづくりには計画性が重要であることを身にしみて実感することになったが、ひとまず完成。

これが私の「デジタルファブリケーテッド草履」である。