新素材の可能性と環境に優しい3Dルアー作りへの挑戦

Created Date: 2021-09-20/ updated date: 2021-10-22
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Summary
数年前から3Dプリンターを使った手作りルアーが登場してきた。3Dプリンターで自分好みのルアーを製作できること。また、海や川でのルアーのロストを気にせずに何度も再現可能という3Dルアーのコストパフォーマンス(慣れた人にとっては既製品よりも低価格)への魅力。そして、既製品とは違う工夫のしがいのある3Dルアー作りは確かにロマンに溢れている。しかし、その3Dルアーに使われているフィラメントは、ABSやPLA等である。海洋プラスチック問題がある素材を使っての3Dルアー作りに自然を愛する釣り人たちも心を傷めている人々も多いのではないだろうか。そこで私は自然界の微生物の力で水と二酸化炭素に分解されることで自然に戻る新素材を使用したフィラメントを使用して3Dプリンターで新たな手作り3Dルアー作りに挑戦したいと考え、このプロジェクトを計画した。主にSDGsの「つくる責任・つかう責任」に焦点をあてた挑戦である。慣れない所や考えの至らない所は踏み台としてお許し願いたい。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • 1フィラメント PLA 白
          2フィラメント FORZEAS (開発品)ナチュラル  三菱ケミカル株式会社製品 
          ※私の大きな勘違いPLA樹脂とは植物由来の乳酸から生成されているプラスチック素材で、石油由来とは異なり分解性プラスチックと呼ばれていてその素材自体も環境に優しい素材である。弱点としてABSに比べ(ABS樹脂は石油系樹脂)、熱に弱い、壊れやすくもろい。私はPLAと聞くだけでプラスチックと考えた無知さを反省したい。PLA樹脂フィラメント素材も自然に優しい素材であった。
          ※3Dプリンタールアーでは利点の観点からABS樹脂のフィラメントが多く使われているようである。
          • UP2 plus・・・3Dプリンターの名称 
            GUIDERⅡ・・・3Dプリンターの名称
            tinker cad・・・3Dモデリング無料ソフト
            3Dペン・・・・児童用玩具
          • ※PLA樹脂は分解性プラスチックだが土壌での分解しか認められていない。

            ※しかし、これから作るのは海や川での使用が想定されているルアーである。

            ここで朗報、今回、三菱ケミカル株式会社の開発したFORZEASは2021年9月15日の資料によるとFORZEASが海洋性分解認証を取得したということが発表されている。海水中の30度の温度で6ヶ月以内に生分解度が90%という情報である。

             3DプリンタールアーにはフィラメントFORZEASにはっぴたりだと思う。

          • tinker cadを使っての初めてのモデリング

            初めてのモデリングであり、球体や半球体や8角柱を組み合わせ一体化し、どうにかルアーらしくしてみる。モデリングの際に空洞にはあえてしなかった。先ずは、形がきれいにプリントされるかを試してみたかった。大きさはプリントする時に変えることにした。

          • UP2 plus 
             FORZEASフィラメントを使っての出力
            温度調整が可能でPLAやABSのフィラメントを主に使用している3Dプリンターである。冷却ファンもついているが外気が混ざるためか、新素材のフィラメントでは形にならなかった。3Dプリンターは層状に形作られるのであるが今回はフィラメントが固まる間に動くため層状にならなかったのが原因と考えられる。また、サイズもかなり大きめにセットしたが無理であった。実際にPLAのフィラメントの場合はもっと複雑なモデリングルアーもきれいにプリントされた。これは、難題である。

          • 温度を200度で冷却ファンをつけても、そのままのサイズの場合かなり縮み形状も全く違う。写真の一番上。
             
            温度を180度に下げて冷却ファンつきで、サイズを大きくしたり、スピードを変えたり、何度も試行錯誤したが、写真
            の真ん中の作品が、まだかすかに形状が出ている状態である。※このプリンターで出力した時の面白み予期せぬ形や、手で細工が熱いうちは可能。(転んでもただでは起きぬ精神)しかし、これでは3Dプリンターのよさにはならないかも...。

            では、PLAのフィラメントを使って同じプリンターでもう少し複雑なモデリングをプリントしたのが一番下の写真である。縮みもなくきれいな形状である。PLAの利点である。
          • GUIDERⅡ


            この3Dプリンターは上面以外は外気に触れないことで冷却が速やかにされるよさがある。また、充填率も変ることができる。サイズの大きなプリント用にも最適である。また。スピードもかなり遅くすることが可能である。しかし、このプリンターを持ってしても、このフィラメントの使用には試行錯誤があった。いや、ここでも私の無知さの部分が大きい。

          • このように同じモデリングでもプリントアウトされた立方体の形状は変わっていった。この発見は施設をお借りしているFabLab Nagatuta βの吉良さんがFAB仲間の方々に相談して下さったおかげである。私では到底辿り着けなかったと思う。コロナ禍でもお付き合い頂き本当に感謝の気持ちで一杯である。この施設には吉良さんの様々な作品が飾られていた。モノ作りへの熱い気持ちが込もった作品の数々である。ここで、今回の新素材のフィラメントを使用してのモデリングが形になるという確証が持てた瞬間であった。このフィラメントの使用には、充填率、温度、速度、冷却が正確なプリントアウトには不可欠であった。

          • プリントアウトの終了までに約2時間がかかった。温度は少しずつ変えていく、最初は180度、プラットフォームは35度/30度で、途中から少しずつ温度を上げていき最終的に210度になった。作ったルアーの全長がおよそであるが横13㎝、幅3㎝、高さ3㎝なので余り大きな形ではないが約2時間のプリントアウト時間でかなりゆっくりの状態で層を形成していった状態である。これが功を奏した形となった。写真はスライドして頂きたい。
          • アクシデント
            ひれの部分が接地面に少ししかついていないことや形が楕円体であるため、きちんと接地面に留まらずにプリント不能な状態になる。接地面にのりを塗る工夫でもだめである。そこでサポートを作ってプリントアウトしていった。順調に層状に形が積み重なる。

            隙間があくことを自然に優しい工夫へとつなげる
            充填率を下げたことでハチの巣のように隙間ができる。ここにプリントしていく最中に自然の素材である小石をおもりとして、詰められないか?あくまでも自然の素材への私の追及である。無理を承知で小さな小石を探し、ヘッドにかからないようにピンセットで置いていく。ヘッドは動いているが成功。写真をスライドしていただきたい。
          • まずは、プリントしたものをサポートから切り離し、形を整えていく必要が出てくる。ハサミなどを用いて慎重に作りたい形のみにしていく。最初にプリントアウトした形は写真の1枚目である。しかし、サポートを切り離すと写真をスライドして頂けると分かるが切ったゴミが出てくる。しかし、これはプラごみではない。土に埋めてみようと思う。微生物の力で水と二酸化炭素に変わる。これはこのフィラメントのよさにもつながりそうだ。こういったことも伝えていければ幸いである。もちろん、今までのフィラメント類にも、ペットボトルから再利用したフィラメントもあるので、FABは、環境にも配慮しながら自分の思いを形に表す世界といえる。
          • ルアーには釣り針、ヒートン、リング等が必要だ。ここでも私は釣具屋さんに多くのことを教えていただいた。ルアーの大きさにあわせた釣り針が必要なこと。スプーンやミノーといった形状にも合わせることなど様々ある。お話を伺いながら既製品のルアーがよく計算され尽くされていること、3Dプリンターでルアーを製作されている方々の熱い思い等、改めてこんな初心者の私が軽はずみに足を踏み入れた無知さを感じた。しかし、挑戦することに意義がある。部品を取り付けながらの気付きもあった。3Dペンでもこのフィラメントが使えること、フィラメントが3Dペンのペン先の熱でも溶けることそれらが功を奏した形で完成した。写真をスライド。
          • このルアーを振ってみると中の隙間におもりになるかもと入れた小石のお陰で音が鳴る。魚の集漁効果はどうだろうか?
             
            そこから、このフィラメントで環境に優しい手作り楽器も作れそうだという新たなアイデアが生まれた。また機会があれば取り組みたい。こういう瞬間が楽しいし、大切にしたい。
          • 3Dプリンタールアーは下でも述べるがどうしても浮いてしまうものもできる。そこで、小石やそのルアーに応じた重さのいびつな石に最小限の部品を取り付けてラインを通し好みの位置で止めることで、立派な鉛のおもりの代用品になると考えた。環境にあくまでも優しくにこだわった。ここでも新素材のフィラメントと先ほど使用した3Dペンの登場である。部品も取れない。強度も大丈夫である。ラインを通し好みの位置で止められるか試してみたが無事に成功した。写真には登場していないが、かなりいびつな形の石でも大丈夫であった。軌道に乗ってきた確信が持てた。
          • 3Dペンは子どもたちの夢を3Dの形に表すFABの入門だと思う。最近では環境に優しいインクを光で固める3Dペンも登場している所にSDGsが進んできているようで嬉しかった。今回私が使用した3DペンはPLAやABSフィラメント対応であったが恐る恐る新素材のフィラメントを挿入して使用してみた。送り速度や温度を工夫することによってルアーの部品やおもりづくりの取り付け作業に無事使えた。もしこの新素材のフィラメントに様々な色がつけば夢が広がると考え、後日この3Dペンを使用してペン立ての製作を試みたがノズル押し出しボタンが入り込んでしまい検証できなかったが、ノズル詰まりではないため、これは使えると考えた。
          • 写真をスライドして頂きたい。

            ① 浮かぶルアー・・・おもりをなくせば「ふわとろ」的なルアーで水面の表層面の魚にアプローチできないだろうか?また、このルアーに石のおもりとラインで結ぶことで魚がいる棚を探りそこに沈めてふわふわ浮かべておきアプローチできないだろうか?

            ② 沈むルアー・・・・「スプーン」的なルアーとして使えないだろうか?水中でも面白い動きをしている。

        • 水を入れた瓶や流しで浮力実験をしてみた。写真をスライドさせてみていただきたい。1枚目は最初のプリンターで作った自分の思い描く形ではないがプリントアウトしたルアーである。潰れた形で重なったのが功をそうし、水に沈むルアーになった。これは「スプーン」的なルアーにおもりも使わずなり、水中でラインを引っ張ると面白い動きもする。これも使えるかもしれない。2枚目、3Dプリンタールアー(私の作品ではない、素材はABS)形も工夫され色もきれいでありおもりの配置も決まっている。水に浮かぶタイプ沈むタイプ両方ある。水中での動きも流石である。3枚目は小石を入れた私の自信作であるが充填率を下げたため水に浮かんでしまう。
          • 水の比重を1.00として、理論上それよりも大きければ沈み、同じなら浮きも沈みもせず、それよりも小さければ浮く。体積が仮に5.05㎤であれば最終的な重量が5.05g以上であれば沈みそれ以下の重量であれば浮かぶルアーとなる。そこでできたルアーの重量を仮に3.03gであれば5.05-3.03=2.02なので、ウエイトが2.02g以下であれば浮かび、2.02g以上であれば沈む。これは理論上ではあるが、参考にしたい。そうすることで色々な動きのルアーができる。おもりとなる小石をみつけることは難しいが...。そこまで私は余裕がなかったがルアーづくりをしている方や既製品のルアーの計算尽くされた技術に脱帽だ。
        • 管理釣り堀でのトラウト釣りに出掛けた。本当に釣れるのか。餌釣り経験はあるもののルアー釣り経験のない私ではあるが、心弾ませ、早朝より出掛けた。YouTub動画も見てリールの巻き方やあたりのとり方、竿の立て方等を自分なりに研究していった。何度も投げカウントを刻みながら投げては巻き、投げては巻きの繰り返しを行った。動きは悪くない。表層に魚が見えている所には①のルアー、真ん中の深い部分を狙うときには②のルアーと自分なりに工夫してみたが釣れない。自作のルアーに原因があるのかと市販のルアーでも実験してみたが釣れない。ではやはり、私の釣りの腕が悪いのか、竿を何本も持っている方にお願いしてみたが釣れなかった。
          • 今回なぜ釣れなかったのか
            ・トラウトの活性が渋かった。もう少し水温が下がった方が釣れやすいのは確かである。
            ・ルアーとしての工夫がまだまだ足りない。魚を集客する動きができていないのではないか?


            釣れなかったことで検証できなかったこと
            ・ルアーには強度が重要だが、釣れた時にルアーが魚の重さや動きに耐えられたかどうかの確証を得ることができなかった。環境に優しいフィラメントを使用し、おもりには石と自然に配慮しても、釣れる度にロストしては、水中に針や金属またラインを残すことになり本末転倒である。一応、餌釣りで釣れたトラウトの口に手作りルアーをつけて、もう一度泳がせて釣りあげることはできたが 、それではだめだ。


            • 3Dプリンターで手作りルアーを作っている方々がたくさんいる。その方々が釣り大会も開催している。その方々は色々な情報をお互いに共有しあって技術を高めたり、楽しみを共有されている。また、3Dプリンタールアー作り教室も開催しFABの世界を広げて下さっている。そして、インターネット上にもそうした方々が作られたモデリングも無料で紹介して下さったりと、自分の知識を惜しみなく提供して下さっているサイトもたくさんある。3Dプリンタールアーに適している新しいフィラメントの紹介もある。私の拙い挑戦も、FABの仲間入りまた、環境への一助につながれると嬉しい。写真①ABSルアー②つながりたい願いを込めて送ったメール。




              • FABの世界に興味を抱いたのは私が中学生の頃である。四国で当時暮らしていた私にとって渋谷のFAB CAFEは夢のような存在であった。今回初めて自分でモデリングし、とことん環境に優しいFABということに向き合えた時間であった。コロナ禍で多くのFAB施設が使用できない中このような経験をさせて頂きFabLab Nagatuta βの吉良さんには、感謝し尽せない。また、今回コロナ禍でなければもっと釣り現場にも出かけて何度も改良を加えたかった。残念な気持ちもある。しかし、この挑戦を通して、このフィラメントの可能性をいろいろ発見しアイデアも生まれた。グルーガンにも使えないか...。アイデアは広がる。


                • 釣り場は自然との共存の一つの場だ。また、なかなか、実際の川や海に行けない人もいる。私は、四国でいた時はよく家族の車で川や海に出かけた。今では懐かしい思い出でもある。今は転居してきて1年半とまだまだ土地勘もないが、交通機関の整った神奈川県で生活している。今回私は管理釣り堀に出かけた。釣り堀には釣り堀のルールがあり、手作りルアーが使える所と使えない所があることにも初めて知ることができた。私が訪ねた所は手作りルアーは禁止の場所で本当に申し訳なかった。理由も教えて下さり勉強にもなった。SDGsの最初の一歩は、ルールを守ること。そして、一人一人の心がけである。今回の経験は、失敗から学ぶ挑戦でもあった。
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