【fab-003】シリコン型によるフィギュアの複製

Created Date: 2019-10-03/ updated date: 2019-10-04
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    Summary
    【fab-002】では、ボタンのように裏が平面状の物を複製してLEDを埋め込みました。
    本稿では、フィギュアのように表裏ともに立体形状の物を複製する技術を説明します。

    Materials

      Tools

        Blueprints

          Making

          • 表裏がある形状の物の型取りは、
            裏が平面状の物の型取りよりも工程が多い。
            前者は【両面取り】後者は【片面取り】と呼ばれます。

            基本的に片面取りを表裏について行うのが両面取りなので、
            片面取りを経験しているならそれほど難しくはありません。
            • ユザワヤに写真のようなキューピー人形が売っていました。
              手のひら大で、練習台には丁度よい大きさです。
              また、レジンで複製できればなかなかインパクトがありそうです。

              と、いうわけで
              今回は、この人形をレジンで複製することを目標にします。
              • 透明なシリコンで表面・裏面の型取りを行い、レジンを注ぎ込む型を自作します。
              • 上に書いた通り【fab-002】で解説した片面取りの方法を、
                型取りしたいもの(この場合キューピー人形)の表面と裏面に対して行います。
                • フィギュアの片面を油粘土に埋め込み、周囲を型取りブロックで囲みます。
                  予め鉛筆の背などで粘土に3mmほどのくぼみをつけておきましょう。あとで型どうしを合わせた時にずれてしまうことを防止するためです。
                  シリコンと硬化剤を混ぜた混合液を作り、上から注ぎ込んでください。

                  綺麗な型を作るコツは
                  ・丁寧な計量
                  ・十分な攪拌
                  ・硬化が始まる前に流し込む
                  計量と攪拌が雑だとうまく硬化しません。
                  硬化が始まってから注ぎ込むと大きな気泡ができやすいです。
                  丁寧で素早い作業を心がけましょう。

                  ※片面取りの詳細は【fab-002】で説明してあります。
                  ※表面と裏面どちらを先にするかはお任せします。
                • 油粘土を取り外しましょう。
                  原型とシリコンの隙間の粘土も綺麗に取り除いてください。

                  これで、片方の型が完成しました!
                • シリコン型と人形を再度、型取りブロックで囲みます。
                  すぐにシリコンを注ぎたいところですが、ここでひと手間!

                  型と人形に対して、写真の「シリコーンバリアー」を塗って下さい。
                  上から注いだシリコンが既に固まっている型や人形に癒着し、外れなくなることを防ぐために使います。筆を使い丁寧に、細部まで塗りましょう。

                  ※型の写真に写っている黒いストローと粘土は無視してください。
                   (後述する、レジンの注ぎ口や空気穴を作ろうとして失敗してしました)→追記にて解説しています。

                • さあ、もう片方の型も固まりました!
                  型を割ってください。
                  うまくいけば、メーカーロゴまで綺麗に転写できているはずです。
                  これだけでも、かなりの満足感を味わえることでしょう。
                • 工程④の黒いストローと粘土も一緒に型が取れていればこのようになります。

                  下から材料を注げるようにすると気泡が入り辛い上に、材料の流し込みがやりやすくなります。
                  空気穴を作っておかないと空気が詰まってうまく材料が流れません。

              • ここから、複製の方法を説明します。
                2液を混合するタイプのレジンを用いますが、硬化時間が極めて短いので、念入りに準備してから始めましょう。(写真のレジンの場合、サラサラの状態から2分で固まります)

                また、レジンはこぼれやすいものです(シリコンもそうですが)。
                新聞紙を敷く、エプロンを付ける、キッチンペーパーを用意するなど、汚れ対策を徹底しましょう。
                • 注ぎ口・空気穴ができていない場合、カッターで型を削り、樹脂の注ぎ穴と空気抜き用の穴を作ります。
                  (樹脂を注いだ分だけ空気を出す必要がある)


                • 型を合わせ、写真のように板で押さえて輪ゴムできつく縛ります。
                  クランプ等の保持具を併用してもよいでしょう。
                  型がズレたり、歪んだりしないように注意してください。
                • 紙コップと電子ばかりで2液を計量し、所定の比率で混ぜ合わせます。
                  混合液はすぐに固まるので、手早く作りましょう。
                  サラサラの液状から、やや粘りが出てきた程度のところで注いでください。

                  ※粘性があるので、一気に注ごうとすると注ぎ口から溢れてしまいます。注ぎ口の様子を見ながら調整しましょう。

                  ここでのコツもやはり
                  ・丁寧な計量
                  ・十分な攪拌
                  ・硬化が始まる前に流し込む
                  です。

                • 混合液は発熱しながら硬化します。
                  硬化は15~20分ほどで終わるので、注ぎ口までレジンを注ぎ込んだら暫く待ちましょう。

                  硬化が終わったかどうかは、レジンを触ってみれば確認できます。
                  硬化中はベタベタしており、触った所に指紋が付きますが、硬化後はツルツルで、指紋も付きません。
                • いよいよ、複製した人形とのご対面です!
                  押さえ板と輪ゴムを外し、慎重に型から外しましょう。
                  上手く作れたでしょうか…?
                • 予め型に注ぎ口や空気穴を作れていた人はこのような感じの複製ができるでしょう。
                • 完成まであとひと息です!
                  バリ、ランナー(注ぎ口や空気抜き穴の跡)を取り除きます。

                  ・注ぎ口の跡等、大きい部分はニッパーでは除去し辛いので、糸ノコで大まかに切断してしまいましょう。
                  ・写真の矢印の様なバリや、糸ノコで除去した跡の凸凹は、カッターで削って整えます。(鉛筆を尖らせる要領)
                  ・最後に#600~1000程度の耐水紙ヤスリか、歯磨き粉(研磨剤の入ったもの)、金属磨き用の洗剤(ピカール)等で表面を仕上げます。
              • こちらの写真は失敗例です。
                頭の上半分が空っぽの状態でレジンが硬化してしまいました。

                輪ゴムの締め付けが緩く、型に隙間がある状態でレジンを注いだため、隙間からレジンが漏れてしまったことが原因です。
                • ここでは、製作中に感じた課題を書いていきます。
                  • 写真を見れば分かる通り、複製した人形の中に細かい気泡が残ってしまっています。
                    この気泡を完全に除去できないでしょうか。

                    Googleで「キャスト 気泡抜き」と検索すると様々なノウハウが出てきますが
                    どうやら、下記の様なポイントがあるようです。
                     ・振動を与える
                     ・暖めて粘性を下げる
                     ・水気を取り除く
                  • 課題1にも関係してきますが、
                    原型のキューピー人形の表面がザラザラだと、複製物の表面もザラザラになります(※)。
                    金属磨き用の洗剤は試していないので、今後の課題とします。

                     ※表面に凹凸があると光が屈折しやすくなるため、透明度も下がる
                  • 塗装やLEDの埋め込みなど、2次加工で更なる価値づけを行うことも必要です。
                    オプションパーツ等も製作して、原型と完全に別物にしてしまうことに挑戦してみたいです。
                  • 写真では別用途で製作したLED照明を台にしていますが、
                    専用の展示台も欲しい所です。

                     ・照明の色や明るさ、点消灯のパターンを工夫する
                     ・音を鳴らす
                     ・台座を動かす

                    など、様々に工夫できることでしょう。
                  • 他の手法と組み合わせることで、
                    より面白い作品作りが可能になります。

                    例えば3Dプリンタやミリングマシンで原型を作り、
                    完全にオリジナルのフィギュアを作れないでしょうか。

                    デジタルデータの作成が苦手なら、
                    例えばオーブンレンジで熱を加えると硬化する粘土もあります。

                    多様な【方法の足し算・掛け算】を楽しみましょう!
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