ComClothes 〜つなげる、服も、"まち"も〜
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「在庫廃棄」「量産型ファッション」...そんな言葉が生まれる現代、ファストファッション企業が台頭しファッションの無個性化と環境問題が発生しています。ファッションの無個性化は着る人だけでなく、"まち"の無個性化を推し進めているのではないでしょうか。
そこで今回は、3Dプリンタで印刷したパーツを洋服に縫い付けて気分や気候に応じてカスタマイズできる『ComClothes』を製作しました。服の構成をパーツの組み合わせと捉えることで、生産コストを抑え、パーソナリティや身体的特徴に応じてカスタマイズできる”マスカスタマイゼーション”の考えに基づいた新しい「服の売買」のかたちを提案します。
近い将来、私たちの"まち"の中にファブリケーション施設が浸透し、個人単位でカスタマイズして「「売り買いする」」時代になります。必要な服は必要な分だけ、自分を表現する手法として服が"まち"に溶け込み、"まち"の個性も拡張することができるのではないかと私は考えています。
Materials
Tools
Blueprints
Making
- こんにちは。高校二年生の佐藤 美桜です。
普段は県立の普通科の高校に通いながら、アルバイトや軽音楽部として活動する、ごく普通の高校生活を送っています。- 中学一年生の時から、Progateという学習サービスを用いて、独学でWebデザインを学び始め、高校に入ってからはWEBデザイナーやグラフィックデザイナーとして活動するようになりました。
今まで平面のみの世界が、今回は立体的な世界へ。三次元でのものづくりは今回が初めてです。 - 母がアパレルの会社に勤めていることから、幼い頃から服と触れ合う機会が沢山ありました。
お母さんの服が着れるようになってから服装について強く関心を持ち始め、アルバイトができるようになってからはその服好きに拍車をかけました。
服を変えるだけでその日のなりたい自分になれる、その日一日が楽しい気分で居れる、そんな可能性を持つ"服"に魅了されたのです。
- 今回の軸となるワード「ファッション」
そもそもファッションとはなんだろう。
それは、ある時点において広く行われているスタイルや風習のこと。
つまり、個人的な内側にあるものではなく、人と人との関わりの中で生まれるものを指します。
しかし、現代では社会の特性や自己概念などとも深く関わりを持っています。- 現在、ファッション業界では、様々なファストファッションブランドが急速に成長しています。
このファストファッションブランドは、多くの人々にとって"服装"を身近なものにしました。 - ファストファッションブランドの特徴として、
売れるデザイン(シンプルで大衆に受け入れられるデザイン)の洋服を大量生産し、低価格を実現しているのが特徴です。
また、SNSや自社アプリ、インフルエンサーなどを起用したマーケティングが中心です。
- しかし、そんなファストファッションが成長して大規模な生産が行われる中、
その裏では、どうでしょうか。
私は、以下の問題点があると感じています。- まず、ファストファッションが普及したことにより、多くのブランドが業績を悩ませています。
それは、多くの人が安価で着回しのしやすい、シンプルで派手でなく、ネットでよく見かけるものを購入するからです。
世界には数多くのブランドが多様な形で存在し、それぞれが個性を持っています。
しかし、現在、この流れの中で存続していくためにはよりそれぞれの個性を、ビジネス向けに服をデザインし直し、販売していかなければいけません。
実際母のブランドでも、デザイナーが書いたラフ画を元に、マーケティングされた上で再構築して大きく変わった状態で作られているそうです。 - また、一部の企業に顧客が偏ったり、SNSで得る情報が偏ることによって「同調意識」が生まれ、「量産型ファッション」という言葉のように、同じような服装をする人が増えています。
その結果、70人弱に「服を買う際に他の人からの目が気になったことはありますか?」とアンケートを行ったところ、六割の人が「気になる」と答えました。理由として、「目立ちたくない」「自分の感覚と人の感覚は違うから」など、他者を気にした意見が多く寄せられました。
そのほかにも、自分のしたいファッションができない原因について、コストがかかることも含まれると考えられます。
このように、それぞれの個性を表現しづらい空気感が生まれているのです
- ブランドや個人の個性を尊重する為に、私は新しいスタイルでアプローチしていくべきだと思いました。
格安を叶えながら、それぞれにあったスタイルで提供する、それが"マスカスタマイゼーション"の考え方です。- そもそも、マスカスタマイゼーションとは何なのでしょうか。
それは、
低コストの生産プロセス + 柔軟なパーソナライゼーション
を組み合わせたシステムのことです。
例えば、「NIKE FOR YOU」は企業が数多くの色や形などの選択肢を提案して、それを顧客が組み合わせることでそれぞれにあったスタイルを提案しています。
つまり、完全オーダメイドとは違い、選択肢を作ることで生産しやすいプロセスをつくりながら、パーソナライゼーションを提供することが出来ているのです。
- 先ほど紹介した靴のカスタマイズのように、アパレル業界の中でもマスカスタマイゼーションの考えが広まっています。
しかし、現状では購入後もカスタマイズしながら使えるプロダクトはまだ少ないです。- 冒頭にもお伝えしたように、私は、服とは「服を変えるだけでその日のなりたい自分になれる」「その日一日が楽しい気分で居れる」そんな可能性を持っているものだと思います。
しかし、好みが変わるたびに新しいデザインの服を買っていると当然コストがかかるので、なかなか手が出せないものです。
結局合わせやすい色を選んでしまったり、買うのを我慢してしまったり、着なくなってしまったり、、そんなの勿体無いですよね。 - そこで、今回提案するのが、「服をパーツで売る、買う」という新しいスタイルです。
えり、袖、胴体etc.... 服はたくさんのパーツで構成されています。
一つのパーツが変わるだけでその服が表す印象は大きく変わります。
それをバラ売りして、簡単につけ外しができれば、気軽にその日の気分やTPOに合わせていろんな種類の洋服が着れます。
持っているパーツが一つ二つ...と増えるごとに、組み合わせの数もどんどん増やすことができます。
また、生産するにも、服をすべて完成させるよりパーツだけ作る方が手間も材料も抑えられるので、かなりの生産コスト削減が期待できます。
まさに、安価な生産コスト+パーソナライゼーションです。
- 「まずは服の部品を作らなければ始まらない!」と思い、早速服作りに入りました。
- ハトロン紙と呼ばれるトレーシングペーパーにパターンを写します。
ガイドラインの外側に自分で縫い代を測り、線を引きます。
この作業が結構大変で、「レーザーカッターで切れば楽なのでは...!」と思いついたものの、巨大な型紙をスキャンできず断念しました。 - ハトロン紙に写したパターンに沿ってチャコペンで布に印をつけ、裁ちばさみで切っていきます。
- 布が全部裁断できたら、次はミシンで縫っていきます。
- 土台となる服が完成しました。
小学校でエプロンを作って以来初めて服を作りましたが、綺麗に仕上がってよかったです。
このままでも着ることができます。 - 主役となる袖を作ります。
今回はバルーン状になる長袖と、フリフリしたフレアの半袖の二種類を製作しました。
- 服の政策が終わったら、今度はいよいよ胴体と袖を装着するパーツを作ります。
これを作る上で、- 軽い衝撃に耐えられる(取れない)
- 服の形状を崩さない
- 服の見た目を崩さない
この三点を踏まえて構想しました。
- みにくいですが、断面図と上から見た図です。
イメージはジップロックのファスナーや組み木などを想像して作りました。
特にこだわったのは、- 服の内側につけられるもの
- パーツを曲げた時でも形が凹凸の崩れず、パーツが組み合わさる頑丈さを持ちながら、曲がるぐらいの薄さ
- 部分部分で止めてしまうと服の袖の付け根に隙間ができてしまうので、全面で止めることができるようにすること
この三点です。
この直線のままでは、服の形状に合わず綺麗に縫い付けることができないので、実際にモデリングする時に型紙をスキャンして画像にしたものの上からillustratorでなぞることにしました。
- ABSや PLAが主流ですが、柔軟性があるフィラメントが良かったのでTPUを利用しました。
- どのようなものを作るか頭の中で想像できたら、実際に形にしていきます。
- 服の形に合うようにパーツを作るので、写したパターンをスキャンして画像にし、Illustratorで線を書きます。また、凹凸の断面も作り、DWGファイルにしてRhinocerosにインポートします。
2Dモデリング) Illustrator
アウトラインと断面のDWGファイル - Rhinocerosに土台の線をインポートしてもまだ平面上の線なので、押し出して立体的にします。
そこに糸を通す用の穴を開けていきますが、一見すると穴が開いてるように見えてもスライスすると開いていなかったり、、
初めてのモデリングでかなり手こずりましたが、チュートリアルを見たり、いくつかコマンドを試したら成功しました! - どこのレンタル屋さんもABSやPLAのみしか扱っていないところばかりだったので、3Dプリンタを持っている友人に貸してもらえることになりました。
プリントスピードが遅すぎたり、沿ってしまったり、穴が開いていなかったりなど、何度か失敗を繰り返した上でなんとかプリントできました。
3Dプリンタ) Ender-3 - 凹パーツも凸パーツも最終的にうまく出力できました。
今まで2Dデザインばかりやっていましたが、現実で手に触れるものとして現れる瞬間はいつでも達成感があります。今回はそれが3Dになって出てくるなんて...!
- パーツは印刷したままの状態だと袖の形に合わないため、パーツを変形させることにしました。
TPUは200度のノズルで溶け出すので、それを参考に失敗して余ったパーツで二つの方法を試してみました。- まずはドライヤーで温めて柔らかくしてみました。
- TPUは耐水性があるので沸騰したお湯につけて柔らかくする方法も試しました。
水なので100度になりますね。 - このように、コップに巻きつけて一時間冷蔵庫に置きました。
溶かして冷やすと変形できるのもTPUの強みです。
この後、もう一度冷蔵庫で冷やす時間を一晩に変えてやってみたところ、一晩おいた方がより曲がりが持続したので、最終的には一晩おく方法でやりました。 - 手前が熱湯で温めたもの、奥がドライヤーで温めたものです。
時間を置きながら比べると、変形が持続していたのは熱湯の方だったので、熱湯で各パーツを変形させることにしました!
温め方:熱湯
冷やす時間:一晩
最終的に上記の方法で全てのパーツを曲げ加工し袖に合うように変形させました。
- 着脱できるパーツが完成したら、実際に使ってみます!
- パーツができたら布に縫い付けて行きます。
後々外したくなった時に外せるように、モデリングの際に開けた直径2mmの穴に沿って手縫いでつけます。 - パーツをつける時、TPUの弾性力で少しコツがいりますが慣れるとすぐにつけられるようになります。
- さて、今回提案した「ComClothes」ですが、将来どんな形でまちの一部になったら面白いか考えてみました。
- これは、まちの生活にFABが浸透している、FAB CITY的な状態になった時。
生地は選んだ生地を宅配で届けて、近くのFAB工房でそれをレーザーカッターで型紙データを読み込んで裁断します。
ぬいしろ、パターンを紙に写す手間は一切ありません。
そして、3Dプリンタで着脱パーツのデータを印刷するだけ。そして縫う。
しかもこのスタイルなら、販売する側の生産コストがほぼゼロになります。 - 「ミシン苦手だよ><」という人のために、シンプルにネット販売の方法も用意するのもいいと思います。
サイトでパーツを組み合わせるシュミレーションができて、自分の持っているものと照らし合わせながら、気に入ったら買う。新しい服の買い方です。
- 実は、この「服をパーツで売る」構想は一年前に構想していたものでした。
当時の私はどうやって実現するのか思いつかず、結局温めることに。
けれど、そんな中このコンテストをたまたま見つけて、「3Dプリンタを使えば実現できるかもしれない!!」とありがたいことに実現の機会を頂きました、、、!
普段はフロントエンジニアとして活動していますが、今回のような「ものづくり」をして、自分が頭で創造したものは形にできるということを実感しました。この技術の可能性にわくわくしています!
そして、この製作物で、作る人も、着る人も、みんなが気軽に楽しくファションで自分を表現できるような世界に少しでもなればハッピーです!
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