ToiLET'S Clean

Created Date: 2025-03-22/ updated date: 2025-03-22
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Summary
近年、鎌倉ではオーバーツーリズムが深刻な問題として浮上し、観光客の急増により地域の様々な課題が顕在化しています。その影響は、トイレの利用状況にも及び、清掃負担に繋がっているのが現状です。
私たちは、セブンイレブン七里ガ浜店のオーナーさんの強い想いに触れ、解決策を模索する中で、数多くのプロトタイプを試作してきました。最終プロトタイプの目標は、トイレ利用者自身が自ずと掃除し、効率的に清潔な環境を維持できる仕組みを実現することです。一見、理想的すぎる、ある意味馬鹿げた発想や外見に思えるかもしれませんが、私たちの半年間の試行錯誤のプロセスこそが、この課題解決への挑戦なのです。

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    Tools

      Blueprints

        Making

        • 私たちは、課題を「トイレ問題」、すなわち「店舗の従業員がトイレ掃除をするのに精神的負担を感じている」に定めました。さらに、この課題と最前線で戦うセブンイレブン七里ガ浜店のオーナーさんの想いに触れ、「オーナーさんのお悩みを絶対に解決したい」という決意を固めました。
          • 私たちのチームは、メンバーそれぞれが異なる問題に興味を持っていましたが、その中でも共通していたキーワードが「鎌倉ならでは」「環境問題」「コミュニティ・社会参加」でした。 そこでこれらのキーワードに関連する、「鎌倉ならではの環境問題」についてネットでリサーチしたところ、「オーバーツーリズム」に関連する問題が多く見受けられました

          •  オーバーツーリズムはとても広範な課題でしたが、さらにネットリサーチを進め絞り込みを行い、観光地の混雑、フードロス、マナーの悪さ、ゴミ問題、治安の悪化などの課題が挙げられました。その中でも、観光客のトイレ使用のマナーの悪さでコンビニトイレが閉鎖されているというネットニュースを見つけ衝撃を受け、そこからチームで「トイレ問題」に着目することに決めました。
        •  ネットリサーチを進める中で、鎌倉における「トイレ問題」について、「誰が何に困っているか」という観点で、以下の二つの仮説を立てました。 ❶地域住民が、トイレの使いづらさや、長いトイレの待ち列によって店舗に入りづらいなどの不便さを感じている
          ❷店舗の従業員が、観光客のトイレ使用のマナーの悪さや、掃除による精神的疲労、そして待ち列による営業妨害の三点に悩まされている
          • 上記の仮説を検証するため、インタビューや実地調査を行いました。 ❶に関しては、JR鎌倉駅周辺の公衆トイレや鎌倉八幡宮のトイレ、そして有料トイレの視察をし、清潔さや人の多さを調べました。加えて、通りすがった方たちに、「トイレを汚く感じるか」「鎌倉のトイレの利用者は多いと感じるか」といった質問を、ボードを用いてアンケートも行いました。 ❷に関しては、セブンイレブン七里ガ浜店のオーナー、近藤さんに向けインタビューを行いました。その際、❶で集めたアンケートボードをお見せしながらインタビューに臨みました。
          • インタビューやリサーチの結果、仮説は❷の「掃除による精神的疲労」のみが正しいとわかりました。❶については、想像してみると確かに困るかもしれないけれど、現状そこまで困っているとは感じられないということが、聞き込みで分かりました。❷のオーナーさんへのインタビューでは、トイレ使用のマナーの悪さや、待ち列の営業妨害に関してはあまり目立たないということが分かりました。

          •  ❷のインタビュー内容を以下に簡潔にまとめます。 ・トイレ掃除は一日三回もしなければならない ・トイレ掃除だけで30分くらいかかってしまう ・本当なら掃除じゃなく営業のほうに人を回したい ・元旦やGWは特に利用者が多い ・マナーの悪い使い方をされるとすぐに掃除しないといけなくなるため大変 ・ただのコンビニトイレでなく町のインフラとしての自覚がある

          •  セブンイレブン七里ガ浜店は、有名な観光地の近くに位置し、さらに周辺に無料のトイレが少ないため、特に夏場はトイレが常に混雑するような状況です。しかし、そんな状況にも関わらず、オーナーさんには、トイレは絶対に閉鎖したくないという強い想いがありました。 私たちは、当初想定もしていなかった、このオーナーさんの強い想いに触れ、「オーナーさんのお悩みを絶対に解決して見せる」と決意しました。
        • オーナーさんのお悩みを解決するため、私たちは洗剤一体型トイレブラシ「洗いKUMA」を作成しました。ボタン一つで掃除がラクになるをコンセプトに、従業員の掃除負担軽減を狙いましたが、さまざまな反省点が生まれました。

          •  オーナーさんのお悩み解決のための最初のプロトタイプ作成にあたって、ブレインストーミングを行った結果、トイレ掃除の効率化をはかる掃除用具というアイデアに至りました。ブレインストーミングで出た案を以下に記述します。 ・トイレットペーパーがなくなったことを感知し知らせるアイテム ・どこが汚れているかを見える化するアイテム ・自動で掃除するアイテム ・より効率的な掃除用具 ・音声付きで楽しくトイレ掃除ができるアイテム そして、トイレ掃除にかかる時間が直接的に精神的疲労に繋がっているのだと考えたため、これらの案の中から「より効率的な掃除用具」を選びました。
          • 「より効率的な掃除用具」として、ボタンを押すだけで洗剤が自動で出る、洗剤一体型ブラシ(プロダクト名:洗いKUMA)を作成しました。ボタン一つで掃除がラクになるをコンセプトに、 ・3Dプリンター ・microbit ・ブラシ ・チューブ これらを用いて作成を行いました。
          • 外装に関して、①ブラシに取り付ける直方体の洗剤入れ、②チューブを入れる直方体の箱(チューブの線を通すための穴付き)の二つを、3Dモデリングをした後、3Dプリンターで生成しました。
            プログラムに関して、microbitで、Aボタンを押すと(インプット)、チューブが洗剤を吸い上げ、ブラシの先に出す(アウトプット)という回路を組みました

          • この1stプロトタイプを以って、12月末の中間発表に臨み、多くの反省点やフィードバックを得たので、以下に記述します。 ・オーナーさんの想いをもっと深堀りし、何が本当に必要かを整理すべき ・現実的すぎる ・結局掃除はしており、本当に負担軽減となっているのかがわからない ・セブンイレブンへのプレゼンじゃなくて鎌倉市へのプレゼンを意識するべき 1stプロトタイプは安っぽく、100均で足りそう、といった声や、本当に負担軽減となっているか疑問視する声を受け止め、今後の改良に活かすこととなりました。

        • 1stプロトタイプで得た多くの反省点やフィードバックをもとに、私たちは新たなアイディアを求めインタビューを行ううことにしました。
          • 私たちは新たなアイディア・視点を求め、ビーチクリーンにも参加しました。 そこでは「ビーチをきれいにしようと実際にボランティアで活動されている」、「周りの人が自分たちの活動を応援してくれる嬉しさ」、「コミュニティやつながりの強さ」を目の当たりにしました。
          • 水はねなどによって男性用小便器が特に汚れやすいことがわかりました。 しかし、このままだと男性用トイレにのみ焦点を当てることになり、女性用トイレの汚れ問題が解決されなくなってしまう懸念があります。

          • このことを踏まえて、男女どちらも参加できる解決策として「トイレを正しく使ったら何かいいことが起こる」というおもしろそうなアイディアがでました。 トイレ利用者もコンビニ従業員も楽しめ、かつコンビニ側にもメリットがある仕組みとなれば、まさに理想的な解決策だと考えました。
          • 「男女兼用」かつ「トイレを正しく使ってメリットを得る」アイテムを作ることに決めました。インプットとして、複雑なものは避け、「正しい利用法」の中から最も重要だと考えた「便座に座る」を選びました。アウトプットは「トイレ利用者が楽しめる/コンビニが得をする/従業員が嬉しく感じる」の3つからブレインストーミングを行いました。しかし、2時間ほど話し合いをするも納得いく案を思いつくことができませんでした。 サポーターの方から「トイレ利用者が楽しめる/コンビニが得をする/従業員が嬉しく感じる」が抽象的すぎるため、世の中のプロダクトをもっと知るべきというフィードバックをもらいました。

          • 納得のいく案が出せなかった私たちは、別日にオンラインミーティングを開催しました。 そこで、「利用者にそれとなくトイレ掃除をさせるアイテム」が良いのではないかという、とても面白いアイデアが出ました。 現時点で存在する「スリッパの底がモップになっていて、履いて歩くだけで掃除ができる」というアイディアを参考に、利用者が必ず行う動作で、気づかないうちに掃除ができるアイテムを作りたいと考えました。 例えば「トイレットペーパーを回すことで何かが作動し便器がきれいになる」という案も出ましたが、なにを目的にしているのかが不明確、メンバー間の考えのずれといった問題がおこりました。

        • オンラインミーティングを踏まえて、私たちは目指す方向に認識の違いがあることに気づいた私たちは、 ノーススター(:物事を決める際の軸となる、常に念頭に置くべき条件)の決定を行いました。 メンバーの過去の経験、ビジコン決勝発表者のプレゼンを参考に ①身近なことで、意識していなかった問題を解決し、かつ未来に希望を抱けること ②アウトプットの物自体にインパクトがあること ③プレゼンがわかりやすく、文句のつけようがない と決定しました。
          • ①「未来に希望を抱く」とはチームで話し合い
               ・生活がより便利に ・コミュニティや人とのつながり ・循環 ・自ら関われる ・次世代へつなげていける ・縛りがなくやりたいことができる ・ほかの課題ともつながる とたくさんの意見が出ました。 その中から私たちは「他の課題とつながる」について考えることにしました。

        • たくさんの話し合いを踏まえ、インプットを「トイレ問題を解決する動作」に、アウトプットを「トイレとは離れた鎌倉内の別の問題の解決につながる動作」に決定しました。そのため、インプットではトイレについて扱う問題を明確化し、鎌倉の他の問題をリサーチ、または、どんな鎌倉市にしたいかを共有し、扱う課題を決め、アウトプットの動作に落とし込む」という2つの事が必要でした。

          • インプットの課題を「正しく使用されていない」ことの解決、アウトプットの課題を「鎌倉市内のコミュニテ減少(人とつながる機会がない)」に関する解決に決定することにしました。

          •  インプットの課題について、今までは「便座に座る」という一つの案に絞られていたが、動作が2つでも問題ないことがわかりました。そこで、新たに「便座に座り、かつトイレットペーパーをくるくるしたら何かが動きトイレが綺麗なる」というアイディアがでました。このアイディアなら必ず行う動作、苦にならない、楽しめる、トイレットペーパーに細工という意外性もありとてもいいアイディアだと思いました。

          • しかしながら、このインプット・アウトプットに捉われすぎて、時間をかけても良い案が思い浮かぶことはありませんでした。
            そこで、インプット・アウトプットという枠から外れて思考したところ、「いいことをしたっていうことを共有し会える社会って良いよね」というアイデアを思いつき、「利用者が自ら掃除をして、それが共有され、コミュニティの作成に繋がる」というプロトタイプの作成に取り掛かることとしました。
        • 「利用者が自ら掃除をして、それが共有されることでコミュニティ醸成につながる」をコンセプトに作成しました。

          • 以下の二つのプログラムを組みました。
            ①ブラシを外したら時間を計る機能 インプットで、赤外線センサーでブラシが取り出されたことを感知し、アウトプットでタイマーをスタート
            さらに、赤外線センサーでブラシが戻されたことを感知し、アウトプットでタイマーをストップ
            ②掃除をし終わったらSNSに発信する機能 タイマーの時間が終了すると、アウトプットとしてSNS投稿機能のマイコンに情報を提供する
            さらに、タイマーの時間を受け取り、そのタイマー情報をSNSに投稿する要素として送る
          • コミュニティ作成に繋がるという利点によって、利用者が自ら掃除してくれる動機となると踏み、プロトタイプを作成しました。
        • 「今の形で本当に利用者が掃除をしてくれるのか」、また「コミュニティの分野でSNSの活用に挑戦するも、安易かつ具体性に欠けるもので実現には至らない」という反省点が挙げられました。 形状について今回は一度で出力するために縮小されたサイズだったため、3rdプロトタイプはマイコンの入るサイズで出力する必要があります。

          • 改善点を踏まえて、掃除をしてもらう・させたくするためには①視覚的・聴覚的な工夫と②精神的な工夫の2つが必要だと考えました。 ①視覚的な工夫としてスポンジの全体の形を”伝説の剣”にし、音楽やレベルアップ音の搭載をすることを考えました。 ②精神的な工夫としては禅、文化に関連づけることにしました。

          • 今回私たちはZen2.0で活動をしている”三木さん”にインタビューをさせていただきました。Zen2.0とは、禅とマインドフルネスを通じて心のあり方を学び、マインドフル・プラネットを創っていくことをミッションとして掲げ活動を行っている団体です。 禅の精神とは「今この瞬間に100%集中すること」で日常生活の中で実践できます。 三木さんの話し合いの中でキーワードとして「ペイフォワード(自分が受けた善意を他の誰かに渡すことで、善意をその先につないでいくこと)」が挙がりました。これは、まさに禅の精神が現れていると思います。
          • 今までは掃除をする時間を測り自分がどのくらい掃除をしたかを可視化できるようにしていました。しかし順位を競うのではなく、自分がどれくらい綺麗にしたか・掃除する前と後の差分が見れることで徳を積んだと感じると考えました。これにより、利用者の掃除意欲を高めることができるのではと感じました。
          • 3rdプロトタイプの反省を生かし、剣は全体的にまっすぐとした形状にデザインしました。また真ん中にスポンジを挿せるように棒を追加しました。 そして今回は台座をの作成にレーザーカッターを使用しました。

          • サポーターの声で、「心躍る体験がよみがえるアイデア」としてドラゴンクエストの提案がありました。それらをヒントに、見て聞いて冒険心溢れるプロトタイプを作成しました。この箱から剣を引き抜くとドラクエのメインテーマが流れ、戻すとレベルアップ音が流れる仕組みになっています。 さらに2ndプロトタイプのアイディアを活かしつつ、加えてIFTTTの機能を使い掃除時間のデータを無線で飛ばし、スプレッドシートに記録する機能も搭載しました。


          • 今回は完成したプロダクトを実際に法性寺に持参し、インタビューを行うことができました。インタビューの中で、仏知見(魂を浄化する知識)を得るためには、菩薩行を実践することが大切だと教えていただきました。 菩薩行とは「いいことをする」という気持ちを持つことです。「いいこと」とは仏教を広めること、人を笑顔にすること、食べ物を分け与えることなどがあります。 トイレ掃除をすることも立派な「いいこと」であり、それだけで仏教の教えを実践していることと言えます。

          • トイレ掃除をデバイスを使って行い、その結果を数値化して可視化することによって、それに応じてポイントなどが貯まり、キャラクターがレベルアップするなどの「いいこと」が起こる「いいことたまるシステム」の導入の考えが生まれました。 しかし、「いいこと回数表示」は、仏教の教えに沿った基づいた良いアイデアではありますが、残念ながら「掃除をしてくれる」という決定的な要因にはならないと考えられます。 しかし、この機会を通して「仏教」という文化からの視点でコンビニトイレ問題を見ることもできるんだと実感しました。
        • 1st~4th全てのプロトタイプを通して以下のような改善点が挙がりました。 ・今あるスプレッドシートにデータを飛ばせる機能をより発展させて、投稿できるようにに自分たちで新たなサイトorアプリを作りたい。 ・製品をおいても見た目だけじゃ使用用途がわからないので張り紙など説明が書いてあるものが必要。また七里ヶ浜のセブンイレブンは特に外国から来た観光客が多いため、たくさんの方に使っていただくためには英語での説明も今後必要である。 ・スポンジの固定が弱い。 ・トイレに置くものだが、台座にはレーザーカッターをつかった木製の素材を使用していて水に対応していない。など

          • 実際にトイレに置いてみたところ、リアリティーに欠けている、場違い感が否めない などたくさんの課題が見つかりました、

        • この場では書ききれないほど多くの細かな課題が残っており、4thプロトタイプは、リアリティや発想の観点から多くの可能性を秘めていると感じます。 この半年間を通してもなお、「利用者が自ら掃除をしてくれる社会」と「オーナーさんのお悩み解決」の両方が実現できたとは到底言えないと思っています。しかし、世界中でも私たちほど、トイレ掃除を考えている人はいないという自負を胸に、上記二つを実現してみせたいと思っております。

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