優しいルアー作り

Created Date: 2022-11-06/ updated date: 2023-08-20
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Summary
現在、世界中で海や川などにおける水中ゴミ問題が深刻化している。特に海洋ゴミといった海洋プラスチックにより、魚類、海鳥、アザラシなどの約700種もの生物へ影響を及ぼし、命を奪っている現状がある。上述した海洋ゴミの発生要因は様々であるが、その中の一つに「釣りによる水中ゴミ問題」が存在する。私は今回、この問題を一人の釣り人として現実的な範囲で軽減できないかと考え、行動に移すことを決意した。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • 私は幼いころから生き物や自然が好きであったため、父親と様々な場所へフィールドワークに出向いた。
          特に釣り好きな父親と共に釣りへ行くことも多く、この経験から海の環境問題について考えるきっかけとなった。

          • 最初のきっかけは、父親と初めての船釣りであった。父親を含めた大人たちは釣りをするポイントに着くなり海へ潜り始め、海中で何かの作業を行っていた。その作業こそが釣りによって出た海洋ゴミの回収であった。数時間が経過すると持ってきていたカゴの中には錆びて塗装が剥がれたルアーや、錘などがパンパンに入っていた。その量を見た私はとても驚いた事を今でも鮮明に覚えている。

            • 私は今まで、ルアー自作するなどの活動も行ったが、海中ゴミを実際に減らすような活動に取り組んだ経験が無かった。しかし、『脱プラスチックへの挑戦。持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』という本に出会いさまざまな現状課題、アプローチ手法を学ぶ事ができた。特に海の浄化ビジネスが印象的であった。これは海に存在する太平洋ゴミベルトというプラスチックゴミで形成された島のような物があり、それをどうにか回収しようとしている試みだった。私はこの挑戦を知り、身近な私から発信できるような解決方法を作りたいと思い、参加を決意した。

          • 今回私が考えないといけないアイデアの条件は

            1.他の人が真似をしたくなるような方法。
            2.3Dプリンターの強みを生かす。
            3.環境への負荷をできうる限り減らす。

            この三つが必要不可欠だ
            • これは現実的に軽減していけるようにするためである。今回考えたアイデアをそれで終わりにするのではなく、私以外の釣り人にも活用してみたい!と思わせることが大切であると考えるからだ。
            • 私が考える3Dプリンターの強みは単品を早く製作する事が出来る事だ。量産には不向きであるが、個人でモデリングなどで作成した形をすぐに形にできる特性を活かしたい。

            • 今回提供いただいたフィラメントの様に自然に還る素材をできるだけ使って作る事が大事だ
              しかし、自然に還る素材は扱いにくい物も多いので広めていけるようにある程度は妥協しないといけない。しかし、全て還る素材で作る事が理想
          • この上の条件を満たすもので、尚且つ海に大きなダメージを与えているものを考えると私はルアーを作成するのがいいと考えた。ルアーは本当に様々な形と種類があり、3Dプリンターを活かした自分だけのルアーを作成できる事は釣り人にとってとても大きな魅力だ。そして、ルアーは素材としてとても多くプラスチックを使う。また、錘には多くの場合鉛を使用するため環境へのダメージは高い。これを解決することができれば大きく軽減できるはずだ。また、私は過去に木材を削りルアーを作成したことがあり、その時に教えていただいたルアー作りの知識を活用できるのではないかと考えた。
            • 今回提供いただいたフィラメントは、ホームコンポストでの分解可能な生分解性樹脂であったので海の中で還る事が難しい。なので私は海洋生分解のフィラメントを入手し、使用することに決めた。今回の頂いたフィラメントの提供元である三菱ケミカル株式会社様にも海洋生分解のフィラメントが存在したので購入できないかをお願いしたが、難しいとの返答を頂いたので、今回は、エヌシーアイ販売株式会社様が販売していた海洋中で分解可能な酢酸セルロース樹脂フィラメントを購入させてもらった。
          • ルアーは沢山の種類があるが、それはすべて何かの魚を釣るためにデザインやサイズが特化したものである。まず狙う魚を選んでいく事にした。

            • 私の家の近くで釣れる魚を調べると、主にシーバス(スズキ)、アジが今の10月から11月の中旬は良く釣れることがわかった。
              シーバスはルアー釣りでの人気も高く、アジもルアーで釣ることがあるため今回のターゲットに最適だと考え目標にすることにした。
            • まず、イメージを掴みモデリングしやすいようにするためにスケッチブックに描くことにした。
              私が好きな魚であるハゼと販売されているルアーのDavinci 190をモデルに描いた二種類を試作品として作成することに決めた。
            • スケッチブックに描いたことで頭の中のイメージはスッキリしていたので、すぐに3Dモデリングに取り掛かった。今回はfusion 360を利用した。
              ハゼをモデルにしたルアーはパーツが三つに分かれていることから胴体のパーツを付け替えることでカスタムができるように胴を二種類作成した。
              Davinci 190をモデルにした方は尾ひれにあたる部分を上か下どちらかにつけるかを最後まで決められなかったので、出力後に決めることにした。
          • 実際にプリントをした。3DプリンターはEngineer Cafeを利用した。
            注文した海洋生分解フィラメントが届くまで時間がかかったので、最初に提供されたフィラメントを利用した。特殊なフィラメントを利用するのは初めてだったが、Engineer Cafeの鈴谷さんからの助言により、最初から想像より上手くできた。
            • 接続部まで3Dプリンターで作成することも考えたが、耐久性に問題があるので、ヒートンと銅線を利用し、組み立てを行った。
              また、このままの真っ白いボディでは魚に対するアピール力が足りないと考え、色が派手なフィルムクッションを巻き付けた。
          • 朝マズメと言われる時間に家の近くである新千鳥橋近くへ行った。
            朝マズメとは、夜が明けて日が昇りきるまでの薄暗い時間帯を指し、私は今回4時頃に釣りを始めた。

            • 当たりはあるものの、1匹も釣れず日が昇った。

          • 何故釣れなかったのかを考えるとやはりルアーのサイズが小さすぎた事とアピール力が足りない事が原因だと考えた。また、ルアーを投げる際にルアー自体の重量が軽すぎるため、ルアーが遠くまで飛ばない事があった。
            • 前回の反省を生かし、サイズを大きく。尚且つ前回のルアーは接続部分が糸や海藻に引っかかるだけで、良い効果が見られなかったので無くした。また、今回はアジをモデルに二つ目のルアーを作成した。

              • 海洋生分解フィラメントが届いたので使っていく。
                設定に苦戦したが、7回目のチャンレンジで上手く出力できた。
                前回の重量が足りない部分には出力中に予めモデリングの時に空間を開けて置いた箇所に鉄製の玉を入れ重量を上げた。


                • 利用したフィラメントが透明だったのでアピール力を伸ばすことに力を入れながら完成させた。
                  アジをモデルにしたルアーはラメが入った段ボールが有ったのでそれを貼り付けることにした。


              • 同じ時間に同じ場所で釣りを開始。
                今回は友人を誘い作成した二種類のルアーを使ってもらった
                • 驚くことに今回はどんどん魚が釣れた。
                  特にアジをモデルにした方のルアーには小型ながらもシーバスも食いつき、釣ることができた。
                  最終的にアジ39匹、シーバス7匹の合計46匹を釣り上げることに成功。
                  アジに関しては、最大18センチを釣り上げることができた。

              • 釣り上げた魚は友人と半分に分け、持ち帰った。
                釣りの成功を他の友人に伝えると是非食べたいと言われ、急遽振る舞うことになり、シーバスの塩焼きを作った。友人は美味しいと喜んでくれた
                • 今回初めて3Dプリンターを利用した自然の還る優しいルアーを作成した。
                  結果として大成功であったがいくつかの課題が残った。①ルアーの耐久度②アピール力を他の材料に頼らないといけない部分、③重量に起因する使いづらさなど、まだ改善の余地がある。また、今回釣り場には私たち以外にも釣り人が居たがほぼ全員がサビキ釣りと言われる方法を利用していたので、次回はサビキ釣り用の釣り具を3Dプリンターで作成したいと考えている(考えるだけでは収まらなかったのでモデルのみ最後に作成した。)

                  • 私はルアーを海洋生分解フィラメントを使い環境に配慮したが、まだ釣りには糸、錘、ウキなどの環境に高い負荷をかける物が多い。現在の一般の方が触れる機会のある3Dプリンタブルな材料は糸や錘などを作れるような性質は持っていないので新しいマテリアルの開発を行っていき、いつかすべての物を3Dプリンターで手軽に誰でも作成できるように研究をしていきたいと今回のコンテストを通じて強く決意した。

                • 利用させていただいた福岡市のEngineerCafe。また、助言して頂いた鈴谷さんへ心よりお礼申し上げます。
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