- 還水庵森は神聖で偉大な場所だ。森に設置されたこの空間は、私たちに森と水の接続性を再認識させ、森の持つ凛としたその聖地性に目を向けさせる。建築物の中で待ち受けるのは、天井から差し込む太陽の光。四方が壁に覆われていることもあってか、より煌々と照らしつけているように思う。神々しいという表現がぴったりだ。中央には石。どこから湧き出たのだろう、水がただただ目の前の石に打ちつけている。不思議と見入ってしまう光景。誰かに指示されたわけでもなく、明確なわたしの意思があるわけでもないのに、視点を目の前から離すことができない。この場所に行き着くまで森を歩いて感じ取ったものと、わたしに引き戻された研ぎ澄まされた生来の感覚が、目の前に佇む石と水に、目を向けさせているのだろう。 森はあらゆるいのちが宿る場所であり、それらの根底にある水を育む場所だ。そして、そんな森に身を置くと、わたしたちはぞれぞれに感覚を取り戻していく。森はみんなが帰る場所であり、わたしたちが「わたし」に還る場所なのではないだろうか。