ファブ3Dコンテスト:カテゴリー2 手指が不自由な人のための箸アダプター

Created Date: 2016-10-25/ updated date: 2017-09-16
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    ファブ3Dコンテスト:カテゴリー2 手指が不自由な人のための箸アダプター
    私は16年前に交通事故で頸椎を損傷したことで手指が不自由になった。親指と人差し指でものを掴むことはできるが箸が持てなくなった。妻が親指と人差し指だけで使うことができる介護用品の箸を何種類か探して買ってきてくれた。その中で最も良さそうな物を10年以上使ってきたが、掴む部分と箸先が一体型でかさばるし壊れやすく高価だった。
    2013年頃から3Dプリンターの価格が急激に下がってきて個人でも手が届くようになってきた。それまで興味を持って3Dプリンターで何ができるのかなどを見てきたが、これなら市販の普通の箸や飲食店やコンビニの割り箸などが使うことができるアダプターのようなもの作れるのではないかと思いつき、思い切ってGube3という3Dプリンターを買った。マシントラブルはあったものの、5作目、約1ヶ月ほどでなんとか使えるものができた。それから6ヶ月、試作品を実際に使いながら太さの違う箸をどうしたら簡単に取り外しができるかを考えて改良を重ね、9作目でほぼ満足がいくものを完成した。
    この箸アダプターが完成したことで、自宅では普段から使っている普通の箸を取り付けて食事ができ、外泊や外食のときは箸アダプターだけを持参すれば宿や店の箸や割り箸を取り付けて食事ができる。箸アダプターだけなので小さなポシェットにも入りじゃまにもならない。
    自分のために作ったものではありますが、今のところ手も口も達者な96歳になる私の母、そろそろ箸使いが心もとない。そにうちプレゼントしようと思う。

    Materials

      Tools

        Blueprints

          Making

          • •3Dモデリングソフト  : 123D Design(Mac版)
            •スライスソフト  : Cube Print
            •3Dプリンター  : 3D SYSTEM Cube3
            •使用フィラメント  : ABS

            •説明文中の「」で囲まれている名称は123D Design日本語版のコマンドまたはサブコマンド、選択ボタンです。
            •キャプチャー画面は123D Design英語版のものです。
              • 最初にイメージしていた通りにモデリングしてみたが、 何か掴むと箸先がクロスして全く箸として機能しなかった。
                左から1作目(2014年12月)、2、3作目(2015年1月)。
              • 4作目で 2枚の板の間に反対側の1枚の板を差し込むという安定板のアイディアを思いつき早速テストをしたら大正解。Uフレームに強度アップのためにカーブを付けてみたが持ちやすさも増した。(2015年1月)
                5作目は4作目にすべり止めを付けたもの。(2015年4月)
                これらは3つの四角枠に箸を差し込む方式のためサイズが合う箸しか使えないが自宅では今でも使っている。
              • 太さが違っても使えるようにクリップで留める方式をあれこれテストしてみた。左から6、7、8作目。
                6作目はL字のクリップを上から差し込む方式、巾が狭すぎるのと箸を取り付けるときにクリップをよく床に落として拾うのに苦労した。
                7作目は6作目のクリップの巾を少し広げてUフレーム外側に引っかけるようにしてみたがこれでもクリップをよく落とした。
                8作目はいままで安定板に差し込んでいた部分を安定板に固定して上の突起にL字のクリップを差し込むようにしてみたが外れやすくてうまくいかなかった。    
              • 強度的に不安があったが安定板とL字のクリップを1mmのステンレス線をピンにしたヒンジで留める方式を考えた。
                Uフレームへの固定はUフレームのカーブを利用して引っかける方式。1mmのステンレス線がなかったので手元にあった安全ピンで代用した。(2015年7月)
                とても具合が良く自宅で使っている箸も、コンビニの割り箸も使える。クリップを落とすこともなくなった。強度も問題なし。今も使っている。
                今までは全て自分の右手のサイズに合わせてきたが、他の人にも使ってもらえるようにUフレームを縮めたバージョンも作ってみた。
                これから説明する作り方はこの9作目のものです。    
              • この箸アダプターを使う人の手を、箸を開いて持っている状態のようにしたときの親指と人差し指に内接するカーブを描きます。
                親指と人差し指の関節の位置もチェックしておきます。    
              • 3Dモデリングソフトの「スケッチ」で手順1で測ったカーブと、その15mm外側に等間隔のカーブを描き、外側カーブの始点を中心に半径15mmと17.5mmの円を描きます。    
              • 「スイープ」で「新規ソリッド」の丸棒を作ります。
                ※内側の丸棒から先に作ります。外側の丸棒を先に作ると内側の円を選択できなくなることがあります。外側の丸棒作るときには必ず「新規ソリッド」を選択してください。    
              • 外側の丸棒から内側の丸棒を「切除」して肉厚2.5mmのチューブを作ります。    

                ※チューブは「シェル」で作ることもできます。
              • Uフレームを親指と人差し指で掴んだときの指の長さに合うように「スケッチ」で切除する部分の図形を描き、20mm「押し出し」て切除します。

                ※「押し出し」の距離入力ボックス右側で「切除」を選びます。    
              • 親指と人差し指の関節の位置に「スケッチ」で山形の図形を描きます。

                ※作業をしやすくするためにUフレームは離れた位置へ「移動」しておきます。数値入力で100mmとか切りの良い数値を入力して移動しておくと正確に元の位置へもどすことができます。
              • Uフレームを元の位置へ戻し、すべり止めを3.5mm上へ「移動」します。    
            • ここで、箸で小さなものや細い物を掴んだときに箸の先がずれないようにするための安定板の「スケッチ」を描いておきます。安定板は2つが0.5mm程重なるように描きます。 

              ※途中過程のデータは可能な限り保存しておきましょう。途中で不具合が起きたときに直近のデータまで戻って作り直すことができます。   
                • この箸アダプターで使う箸を描きます。例えば市販の一般的な箸で長さ255mm、先端が2.5mm、後端が8.5mmの場合、図のように「スケッチ」で225mm離して2.5mmと8.5mmの四角形を描きます。    
                • 「スイープ」で棒(箸)を描きます。    
                • 箸アダプターに箸をセットして握ったときに、健常人がで普通に箸を握った角度になるように「移動」で約10.5°傾けます。
                • 箸をUフレームの内側に沿うように「移動」して配置します。

                  ※表示を「アウトラインのみ」にすると位置合わせがしやすくなります。通常は「マテリアルとアウトライン」。    
                • Uフレームの図のような位置に厚さ5mm×縦横20mm、厚さ15mm×縦横30mmの「ボックス」を箸に直交するように配置します。    
                • 2本の箸を「コピー」&「ペースト」して「プレス/プル」で上下と内側へ2mm拡大します。

                  ※コピーはマテリアルを選択して[Ctrl] (Macは[command])+[C]、ペーストは[Ctrl]+[V]。
                • 太くした箸と 箸先側の「ボックス」との「交差」をとり、箸を差し込む枠の外側を決めます
                • 箸先側の枠作りと同様に2本の箸を「コピー」&「ペースト」して上と内側へ3mm、下側へ2mm、外側へ6.5mm拡大し、 後ろ側の「ボックス」との「交差」をとって箸を押さえるクリップ枠の外側を決めます。    
                • 2本の箸を再度「コピー」&「ペースト」して上側と内側へ1mm拡大します。この拡大した箸でクリップの枠を「切除」して箸を差し込む穴をあけます。    
                • 先に描いた安定板のスケッチを選択して上へ2mm「押し出し」ます。箸先から見て左側は1枚、右側は2枚作ります。    
                • 箸の下面に沿うように(ここでは9°)傾けて、右側2枚の上側は箸の下ギリギリまで(8mm上)、下側は上の安定板と2.2mm間が空くように(3.8mm上)「移動」し、左側の安定板は右側2枚の間に入るように(6.1mm上)「移動」します。    
                • 2本の箸を「コピー」&「ペースト」して箸先の枠とUフレームから「切除」します。 これで箸を差し込む部分の枠とUフレームが切除されて図のようになります。   
                • Uフレームの箸が通る部分の切り欠きは鋭角なので、横にした円柱を図のように配置し、Uフレームを「切除」して丸めます。
                  *切除する部分がなだらかになるように、円柱の直径は40mmから50mmにします。また、切除部分がクリップ枠後端にかかるとクリップが外れやすくなるのでかからないようにします。
                • 親指と人差し指の太さと形状に合わせた楕円状の図形を「スケッチ」で描きます。次にそれらのスケッチを「コピー」&「ペースト」して「スケール」で90%程縮小して18mm程上へ移動し、「ロフト」で繋ぎます。    
                • 「シェル」で上面を選択し、肉厚(2mm)を指定して筒状にします。    
                • くさび形のスケッチを上へ「押し出し」て切り欠きを入れます。    
                • 「シェル」で筒状にすると底面が残ります。筒内の底面を選択して「押し出し」で2mm下げて消します。    
                • 出来上がった指ホルダーをUフレームの親指と人差し指の位置に「移動」します。Uフレームに1mm程埋まるようにします。    
                • クリップの枠をUフレームから離れた作業しやすい位置へ「移動」し、グリッド面から高さ14mm(すべり止め上部までの高さ)の「ボックス」を2つのクリップの枠間に配置します。    
                • 「ソリッドを分割」を選択して2つのクリップ枠のどちらか一つの下側を選択し、「分割エンティティ」で箸を差し込む穴の底面を指定して分割します。    
                • クリップ枠は図のように3分割されています。真ん中の部分は2つが一つのマテリアルになっています。    
                • 真ん中の部分を「コピー」&「ペースト」して2つにし、ボックスをかぶせて片側ずつ「切除」して分割します。巾の広い方は下、細い方は上と一緒にして図のような組み合わせにします。    
                • 半径1.5mm、長さ20mmの「円柱」をグリッド面上に作ります。さらに、この円柱の上面に半径0.5mm、長さ20mmの「円柱」を作ります。    
                • 上の円柱を下へ20mm「移動」して半径1.5mmの円柱から「切除」し、直径1mmの穴が空いた直径3mmの円筒にします。    
                • 「コピー」&「ペースト」して2本にしたら「スナップ」で円柱を2つのクリップ上側の図の位置に配置し、「グループ解除」します。    
                • 表示を「アウトラインのみ」にして「移動」で角度のずれを修正し、上へ0.5mm程移動します。    
                • 円筒の両端をクリップ上側の側面に合わせて「切除」します。    
                • 円筒を「コピー」&「ペースト」して2本にしたら巾10mmのボックスを円筒の中央に配置し、「コピー」&「ペースト」して2つにします。

                • ボックスの一つは円筒と「交差」をとり、もう一つは円筒を「切除」して円筒を3分割します。
                  これがクリップ上側をUフレーム側にとめるヒンジになります。    
                • 3分割した円筒をUフレームのクリップ下側の位置へ「移動」し、安定板へ0.5mm程潜った位置になるように高さを調整します。    
                • クリップ下側が円筒と重なって1mmの穴を塞いでいるところは「プレス/プル」でクリップ下側の円筒側の面を押し込みます。    
                • クリップ下側の底面を「プレス/プル」で下に引っ張って安定板と重なるようにし、安定板との間の隙間をなくします。    
                • 中央の円筒を「コピー」&「ペースト」し、表面を選択して「プレス/プル」で0.2mm半径を太くします。    
                • 太くした円筒を「コピー」&「ペースト」して2本にし、安定板とクランプ下側を「切除」します。    
                • 3分割した円筒の外側2つを「コピー」&「ペースト」して残し、3分割した円筒をクリップ上側の元の位置へ「移動」します。
                  残した外側2つの円筒がUフレーム側のヒンジになります。    
                • 戻した円筒の1mmの穴がふさがっているところは「プレス/プル」でクリップの下側を押し上げます。    
                • 3分割した円筒の外側2つは「プレス/プル」で半径を0.2mm太くしてクリップを「切除」し、中央部分はクリップと「マージ」します。    
              • これで箸アダプターの全素材(パーツ)が準備できました。次からは角を丸めたり、マージをしたりして仕上げをします。

                ※この状態のファイルを保存しておいてください。後で不都合がでたような場合、このファイルのデータから作り直すことができます。
                • 仕上げ作業に入る前にモデリングが終わった箸アダプター各部を良くチェックして不具合ヵ所が見つかったら修正します。
                  ※角を丸めたり、マージした後では修正できないこともありますのでここでしっかりとチェックしておきます。
                  • 人差し指側の箸先を差し込む枠の下側と安定板の重なりが少ないと強度が弱くなるので   「プレス/プル」で下に1mm引っ張ります。
                  • 親指側の指ホルダーの巾が広すぎてUフレームの先端からはみ出しそうなので「プレス/プル」で2mm程下げます。
                  • 箸先を差し込む枠の内側とUフレームとの間に出っ張っている部分があるので「プレス/プル」で1mm程押し込んで見えないようにします。
                  • 丸めたい角を選択します。繋がっているところはすべて選択し、「フィレット」で寸法を入力して角をまるめます。

                    ※エラーが出たときはエラーが出なくなるまで数値を小さくしてやり直してください。
                  • クリップの下側とすべり止めを除き、 Uフレーム、安定板、指ホルダー、箸先側の枠の角を丸めます。
                  • Uフレームの外側にはみ出している安定板やクリップ下側を「プレス/プル」で見えなくなるまで押し込みます。

                    ※押し込みすぎてUフレームの内側に隙間ができないように注意してください。
                  • ※マージでエラーになったときはマージする順番を変えてみてください。どうしても特定のマテリアルでエラーがでるときはそのマテリアルのマージすると隠れてしまう部分を少し削除するとエラーが出なくなることがあります。
                    どうしてもエラーが出るときはエラーの原因となっているマテリアルを作り直してみてください。
                  • クリップのUフレーム外側部分の下面をすべり止めの上部ギリギリまで「プレス/プル」で下げます。

                    ※この部分が浅いとクリップの引っかかりが弱くなり、箸を挟んだときに外れやすくなります。    
                  • Uフレームを2つ「コピー」&「ペースト」して2つのクリップを「切除」します。
                    「移動」でUフレームから離すと図のようなクリップからUフレームと重なっていた部分が切除されたものができます。    
                  • クリップのUフレーム上部外側に接する部分を「フィレット」で0.5mm〜1mm程丸めます。

                    ※この部分がクリップで箸を挟んだときUフレームの縁に引っかかります。数値を大きくすると緩く、小さくすると固くなります。
                  • クリップ外側3つの角は1mm、他は0.5mm「フィレット」で丸めます。    

                  • クリップは図のように断面の広い方を下にして配置し、Uフレームとはファイルを分けます。

                    ※クリップには箸を挟むときにヒンジと直交した方向に力が加わります。最初に作成したままの向きではヒンジと同じ方向にフィラメントが積層されて割れやすくなります。このためフィラメントがヒンジと直交する方向にフィラメントが積層されるように向きを変えます。    
                  • 箸アダプター本体(Uフレーム側)とクリップを「3Dでエキスポート」で「STL」、メッシュ分割設定画面で「ファイン」を選択して3Dプリント用のSTLファイルで書き出します。    
                  • これが箸アダプター本体(Uフレーム)とクリップのSTLデータです。「アウトラインのみ」で表示しています。

                  • STLファイルを3Dプリンターに付属のソフトでプリント用データに変換します。このとき使用するフィラメントの種類(箸アダプターはABSをお勧めします)や積層ピッチ、密度、内部のパターン等を設定して3Dプリンターへ送ります。

                    ※使用するプリンターによって設定できる項目は違います。この画面はCube3用のソフトCube Printのものです。
                • プリントが終わった箸アダプターをプラットフォームから剥がして、ニッパーやカッター、ヤスリやカッターなどを使ってサポートを取り除ききれいに整形します。    

                    • 直径1mmのヒンジ穴はフィラメント積層タイプの3Dプリンターではどうしても潰れてしまいます。Uフレーム側とクリップ側のヒンジの穴を1mmのドリルを付けたピンバイスで開け直します。

                      ※クリップ側のヒンジ穴は、ずれるとピンがうまく刺さらなくなってしまいます。センターがずれないように慎重に穴を開け直してください。片側で半分ほど穴を開けたら、反対側から残りの半分を開けるとズレを少なくできます。    
                    • 市販の粘着剤付きスポンジゴムを図のようにくさび状にカット(厚さ4mmから5mm程)してクリップ内面の上部とヒンジ側に貼ります。

                      *良く使う箸がしっかりと固定されるようにスポンジゴムの厚さを調整します。
                    • 直径1mmのステンレス線またはピアノ線をクリップの巾に切り、ヒンジ部の穴に差し込んでクリップをUフレームに取り付けます。

                      ※最初に安全ピンのような先が尖ったピンでうまく差し込めることを確認することをお勧めします。    
                  • 上は市販の箸、下は割り箸を取り付けています。
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