みんなで買い物!

Created Date: 2025-06-20/ updated date: 2025-06-20
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    Summary
    主に手足を動かすのが難しい人が買い物を自主的に行うための自助具です。

    Materials

      Tools

        Blueprints

          Making


          • 私は重症心身障害児が通う放課後デイサービスでアルバイトをしています。今回はその利用者であった手に拘縮があり大きな動きが難しい、座位保持を利用している 21歳の女性の方のために作成しました。 手の動きは限られていますが、頭を動かすことは得意で、ヘッドバンドや棒を用いた操作が可能です。
            普段からおしゃれや買い物を楽しみたいという気持ちが強く、休日は移動支援を利用し外出しています。

            • この自助具は、生活の中で欠かせないことを補助するというより、その人が「やりたい」と思ったことを実現するための道具として考えました。
              一般的に「自助具」というと、どうしても生活の最低限必要な行為を補助するものというイメージが強いと感じています。けれど実際には、「こうしてみたい」「もっと楽しみたい」「おしゃれもしたい」というような気持ちがたくさんあること、そしてそれが表に出せないままでいることに、日々利用者の方と関わる中で気づかされました。
              そのようなチャレンジしたい気持ちやプラスアルファの楽しさまで拾える道具はまだまだ少なく、そういった部分をもっと形にしたいと考えたのがきっかけのひとつです。
              • 今回買い物をテーマに選んだ理由は、私自身が彼女と一緒に買い物に行った際の出来事にあります。私は20歳、彼女は21歳。ほとんど年も変わらず、これが可愛いよね、あっちの方が可愛いよとまるで友達のように買い物を楽しみました。そこで「介助者と利用者」という関係性ではなく、「友達同士」として買い物を楽しみたいという気持ちを持ちました。
                そのとき、彼女が自分のペースで商品を選び、自分のお金で支払い、買い物という行為そのものを楽しめる道具があれば、社会とのつながりや達成感がより大きくなるのではないかと考えたのがきっかけです。
              • まず目的を定めるため「買い物」の過程を
                1. 選ぶ
                2. 商品を手に取る
                3. お金を支払う
                4. 商品を受け取る
                と分解して考え、これらを自力で行う方法について考えました。

                次に形状について考えました。
                手に取り付ける形状は拘縮の加減によってオーダーメイドが必要だと考えたため、彼女の長所を生かすという意味でも頭に取り付ける形状を採用しました。これらを考え、まずは軽く試作を作成してみることに。

              • 実はこれまでも活動の中で買い物をしたり絵を描いたりと、介助なしで自分自身で行動を起こす場面は何回かありました。その時に取った方法は主に以下の3つに分類できます。
                • 手の中に使いたい物体をはめこみ、腕の動きを使って行動する。(例:ものを切る)
                • リストバンドに穴をあけ、その穴の中にペンなどを通すことで行動する。(例:絵を描く)
                • 棒を頭に固定し、その棒に使いたい物体を取り付け行動する。(例:袋を取り付け商品を受け取る)

                しかしこれにも問題があり、安定性の不足に加え、即席の用具なので他のスタッフから「もう二度と再現できない」という声や、髪に刺す方法や物体が直接肌にあたる構造が痛いかもという懸念点がありました。
              • 対象者とは週に一回しか会えないため、まず試作は自分で使用し、納得するものが出来上がってから対象者に使用してもらう形式を取りました。
                【試作1で考えたこと】
                1. 選ぶ(伝える)→本人の意思決定とそれを相手に伝える指示棒的な機構
                2. 商品を手に取る→フック式にして商品をひっかける
                3. お金を支払う→介助必要?考えが浮かばない
                4. 商品を受け取る→袋をひっかけてそこに入れてもらうことで自身で受け取り

                まずは問題点を参考にカチューシャに棒を取り付けたシンプルな試作からスタートし、紙粘土や段ボールなどを使って形状や長さ、重心などを盛り付けながらより使いやすく自然な動きができる形を探る調整を行いました。
              • 大きさ長さの調整が大事だと特に感じました。耳の付け根くらいまでカチューシャがないとずれやすさがあったため改良する必要が。また棒の長さは最小でも30㎝は欲しいと感じました。30㎝で絵を描いたり近くのものを取る操作をすることが可能となりますが袋を付けると少々圧迫感があったためもう少し長さが必要だと考えます。しかし3Dプリンターでは強度上問題があるかもという感想を残して1回目の試作を終えました。
              • 何度か試作とモデリングを繰り返したのち、納得するものが出来上がったので実際に本人に使用してもらい使用感を聞きました。
                前回からの改善点は以下の通りです。

                長さを補強するアタッチメント(袋用)を作成した。
                長さがあるとなお良いと思った。白一色、無機質な感じで可愛くない
            • この自助具によって、自分のお金で支払いをする体験ができるようになります。 それによって、これまで「してもらう」ことが多かった買い物の場面が、本人が「自分でできた」と感じられる大切な時間へと変わります。 また、友達との買い物のなかで、「これが欲しい」「自分で払いたい」という気持ちを自然に表現できることで、対等な関係の中にいる楽しさ社会とのつながりを感じやすくなると考えています。
              こうした経験が少しずつ積み重なることで、自分から社会に関わってみたい、もっとやってみたいという気持ちがさらに生まれ、それを表に出すことが出来るきっかけになることを願っています。
              • 本作品に再現性があるかどうかを調査すべく、別の利用者に使用をお願いしました。

                この通り頭さえ動けば使える用具のため、体が動かない人のためだけではなく骨折している人など一時的なサポートとしても活用できるのではないでしょうか。

                また今回は買い物に的をしぼって制作したましたが先端の機能は買い物だけでなくペンを使用したりなど様々な汎用性があると考えます。またアタッチメント式にすればより高度な行動も可能になるのではないでしょうか。
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            References

              Usages

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