デカホッチは段ボール固定用具として被災場所で活躍します

Created Date: 2024-08-30/ updated date: 2024-08-31
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北海道夕張郡栗山町にあるものづくり工房「ファブラボ栗山」と北海道介護福祉学校は、令和3年度より地域課題研究という2年次のゼミ活動において「ものづくり×介護福祉」をコンセプトに連携事業を行っています。令和5年度は「ものづくりから変える防災の意識」というテーマのもと、北海道介護福祉学校が災害時に避難場所として活用された場合を想定し、学生たちが校内の調査から問題点や課題などを発見し、デジタルファブリケーション技術を活用し、ものづくりを通じて課題解決を行いました。
今回製作したのは「デカホッチ」という段ボール固定用具です。校内の備品、消耗品や備蓄食料などを梱包している段ボールを活用し、だれでも簡単にベッドやソファなどの家具を組み立てることができます。
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北海道介護福祉学校 第35期生
メンバー:須河内 奏太、中林 聖翔、野呂 瑠斗、向平 広真、谷口 陽菜、米澤 蘭
担当教諭:藤田先生
外部講師:ファブラボ栗山(合同会社ジモトファブ)

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • 対象者1:避難所にいる人
          対象者2:北海道介護福祉学校
          ※「災害発生から避難所解消までの4つの段階」における「②生命確保期」における使用を想定しており、できるだけ校内の備品や消耗品を活用することで物資の到着や救助までの期間を無事に過ごすことを目指す。
          • 自然災害時の初期段階から学校施設が活用されている一方、教育施設としての設計が主であるため、避難所としての利用には不具合や不便が発生することが多々あります。近年、学校施設の防災整備が必要と認識されていますが、十分な設備投資が進められていません。そして、栗山町が災害に見舞われた際に、北海道介護福祉学校も避難所のひとつに選ばれる可能性がありますが、実際に避難場所に選定された場合、現在の環境で多くの避難者を問題なく受け入れることができるのかを調査し、ものづくりを通じて課題解決を行いました。
            (イメージ画像:Yahoo!ニュース「ざこ寝、プライバシーなし「避難所の劣悪な環境」なぜ変わらないのか)
            • 学校の安全な避難環境づくりに向けて、ファブラボ栗山が提供するリサーチ手法やデジタル工作機械を使いながら下記内容の作業を進めました。
              • まず初めに、栗山町が発行している「防災ガイドブック」から町内における防災時の避難場所の確認や基本的な行動指針、ハザードマップを確認したところ、北海道介護福祉学校は「洪水」「土砂崩れ」「地震」「火災」「河川の氾濫」すべての災害時における指定避難場所に指定されていました。
                また、災害時の備えや防災グッズなどのキーワードをもとにトレンドスクレーピングを行ったところ、多種多様な段ボールベッドがありましたが、基本的に値段が高いことがわかりました。
                校内が避難場所というシチュエーションでロールプレイングを行ったところ、介護実習用のベッドが複数台ありましたが、受け入れる避難者の数によっては全く足りません。
              • 調査によってみつけた課題や問題点を解決するためのアイデアをイラスト化しました。
                アイデアスケッチによって「休息」「プライベート」「こじんまり」といったキーワードを抽出しました。
              • 「段ボール結合アタッチメント」のアイデアスケッチをもとに、紙粘土を使って数種類のモックアップを作成しました。突起部分の先端を鋭利にし、根元を太くすることによって紙粘土の強度でも段ボールを貫通させ接合する機能を持たせることができました。
                しかし、道具を差し込んでも段ボールが動くのに合わせてどんどん緩まっていくなどの問題がありました。
                また、避難所での使用シーンを想定したロールプレイングを行ったところ、高齢者やリウマチなどの障害を抱える人にとっては力が入らず、この道具を段ボールに刺しこむことが難しいことがわかりました。(スタッフのサポートが必須)
              • 前回のモックアップの課題から「とげを短くする」「持ち手を細くし長くする」「磁石を使って固定する」といった修正・改善案をイラスト化し、再度紙粘土を使って立体化しました。
              • Autodesk Fusionを使って紙粘土のモックアップをベースに数種類のプロトタイプの3Dデータを作成しました。実際に段ボールに刺しこんでもらいどの形状が最も差し込みやすいかを検証しました。写真2枚目の一番右にある赤い色のデザインが最もスムーズに段ボールに刺しこめたのですが、段ボールが動くたびに若干浮き上がり固定している保持力が下がってしまいました。このデザインをベースにさらにブラッシュアップすることにしました。
              • 前回最も差し込みやすく段ボールの固定が安定したモデルをカタカナの「キ」のような形状に修正したところ、差込後も段ボールを固定する保持力が強くなり、アタッチメントが段ボール上部にぴったりと張り付くようになりました。アタッチメント上部には、段ボールベッドの土台の上に重ねる段ボールシートがずれないように滑り止めを貼り付けました。
                また、アタッチメントを上から均等に押し付けられるように持ち手を製作したところ、小さい力でもスムーズに押し込むことができました。

              • 実際に段ボール箱を組み立てた状態でベッドにする流れを実演しながら検証しました。女性一人でも5分かからずベッド形状に段ボールを組み合わせることができました。また、段ボールベッド自体も男性一人座ったり寝転がったりしても問題ない強度を保つことができました。
            • 対象者1:避難所にいる人>>>小さな力で誰でも簡単に段ボール家具(主にベッドなど)を組み立てることができるので、自分の必要な環境整備に活用できます。
              対象者2:北海道介護福祉学校>>>校内の消耗品等購入時に梱包された段ボールなどを活用することで、防災設備への投資が難しい場合でも避難時に必要な家具の機能を維持することができます。また、組み立て方も複雑ではないため、学校職員や学生、避難者への説明もスムーズにできます。
              • 学生1:今回のゼミ活動のテーマが「防災」になるまで、その知識がほとんどなく改めて常に私たちのそばに潜む地震などの災害への意識を持つことが大切だと強く感じました。何度も試作を繰り返し、だれもが使えるユニバーサルデザインを目指すなかで自ら主体的に行動することができた。
                学生2:普段私たちが生活している中で障壁だと感じていないことが、災害発生時だけでなく、対象者が変われば様々なことが障壁に感じてしまうことがわかった。普段から防災グッズを準備しておくことは大切だが、今回3Dプリンターで防災グッズを作れるのかを知れてよかったです。
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                  • デカホッチ説明書

                    デカホッチを使った段ボールベットの組み立て方法
                    1)ベッド型に段ボールを並べます。
                    2)段ボール同士の接合部分にデカホッチを差し込みます。
                    3)すべての接合部分にデカホッチを差し込んだら、上に段ボールを敷きシートのようにして完成です。

                    また、デカホッチを使えば段ボールベッド以外にも椅子やパーテーションにすることもできます。
                    自由に組み合わせて、段ボール箱を避難所に必要な機能に合わせて活用しましょう。

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