らくらくサポート「グリップ背オール」

Created Date: 2025-09-01/ updated date: 2025-09-01
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    Summary
    北海道夕張郡栗山町にあるものづくり工房「ファブラボ栗山」と北海道介護福祉学校は、令和3年度より地域課題研究という2年次のゼミ活動において「ものづくり×介護福祉」をコンセプトに連携事業を行っています。令和6年度は「ファブラボと介護福祉士による生活支援技術の探求」というテーマのもと、生徒が実習など現場での活動を通じて感じた困難や改善したい点を基に、ファブラボのデジタルファブリケーション技術を活用し、生活支援の現場で役立つ道具や支援技術を提案することを目標とし、最終的に介護福祉士の現場で活躍できる実用的なアイデアの創出しプロトタイプを製作しました。
    今回製作したのは「グリップ背オール」という介護者が装着して使用する移乗補助道具です。高齢者が椅子やベッドなどに乗り移る際、介助者の背中に取り付けられたグリップを掴むことで力を加えやすくなり、介助者も安定した姿勢で高齢者の移乗をサポートすることができます。
    利用者の状態や体格に合わせて背中のグリップの位置や大きさを取り変えることができるのが特徴です。
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    北海道介護福祉学校 第36期生
    メンバー:桑嶋 大地、鈴木 なぎさ、前田 祥吾、新保 沙弥香、渡邊 謙慎、村本 華果
    担当教諭:藤田秀剛先生
    外部講師:ファブラボ栗山(合同会社ジモトファブ)

    Materials

      Tools

        Blueprints

          Making

          • 介護福祉士は、現場や在宅など幅広い場面で様々な身体的負担が発生する。特に「移乗」や「つかまり立ち」のサポートには腰への負担が大きく、長い介護士生活の中で体を壊してしまう方もいます。既存製品には「介護用ベルト」などの商品が数多く存在しますが、その多くが介助者側の使用を想定したもので、介護者と介助者両方をサポートする道具はありませんでした。そこで、介護士自身の「介護力」や「技術力」をうまく組み合わせられ、かつ介護士の身体的負担を軽減する道具の開発を行うことにしました。
            • 介護福祉士が現場で活用できる実用的なアイデアの創出を目指し、ファブラボ栗山が提供するリサーチ手法やデジタル工作機械を使いながら下記内容の作業を進めました。
              • これまでの実習経験や実習先の利用者や介護者のニーズ調査などから自分自身が感じた介護シーンの課題や「こんな道具があったらいいな」という視点でアイデアスケッチを行いました。
              • アイデアスケッチをもとに、段ボールや紙粘土、レゴブロックなどを使ってモックアップ制作を行いました。様々なアイデアをカタチにする中で、最終的に介助者の腰に巻き付けるベルト型の補助道具を改善する流れになりました。
              • モックアップ制作を進めていく中で、既存製品に「介護用ベルト」というものがあり機能性やデザインが酷似したものが多数存在することがわかった。しかし、「介護用ベルト」はあくまでも介助者側に装着するもので、介護士側に装着し介助シーンの負担軽減を目的としたものが見当たらなかった。そこで、これまで製作してきたモックアップに取り入れてきた持ち手等の形状を以下してアイデアをブラッシュアップすることにしました。
              • モックアップをもとにプロトタイピングを行いました。上半身に装着する部分については既製品からベースとなる商品を探しました。今回使用したのは「Besline チェストパック ベルトベスト(ナイロン製)」です。この商品に取り付ける持ち手となる部分をAutodesk Fusionで設計し、3Dプリンターで出力しました。男性でも女性でも肩、腰回りのベルトを調整することで緩みなく体にフィットさせることができます。移乗のサポートのシュミレーション時には、想定よりも介護者、介助者両方の負担軽減に寄与することがわかりました。しかし、何度が使用したときにPLAで出力した持ち手が壊れてしまいました。
              • 最終的にPETGで出力したパーツを取り付けました。また、学生たちが普段実習で使っている滑り止めシートを持ち手部分に張り付けることでグリップ力が増し、介助者がより持ち手を掴みやすくなりました。今回のプロトタイプを複数名の介護関係者に使用してもらったところ、「介助者の重さを感じにくくなった」「腰への負担が軽くなった」「狭い場所でも使える」という声がありました。また、介助者側の視点でも「掴まっていい場所がわかりやすくなったので安心感が増した」という意見が出ました。しかし、一方で手すりが外れた時の転倒リスクの高さや、道具の使用方法を利用者に説明するのが難しいなどの課題が見つかった。
            • 学生1:ものづくりを通じて自分自身の介護力が向上したように感じました。実習先での経験や他の学生との意見交換から出た介護シーンにおける課題や問題点を共有し、解決策のアイデアをカタチにする過程は自分自身の介護に対する意識や捉え方を把握するきっかけになりました。
              学生2:今回製作した道具で移乗シーンにおいて負担軽減になることがわかり、自分たちのアイデアでも大変な介護の現場を変えられることがあるんだと感動しました。しかし、その他の介護シーンにおける危険がなくなるわけではありません。今後も介護における正しい知識や技術を身に着け、今回の経験を活かし介助者の状態にあった福祉用具を活用していきたいと思います。
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