シールド立て

Created Date: 2020-08-23/ updated date: 2020-10-22
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Summary
2020年、世界はコロナ禍にある。私は、3月からの閉校期間中にフェイスシールドの公開モデルDoyo-fastを使用し3Dプリンターでフェイスシールドを制作し、病院や学校に無償で提供する活動を行いました。この活動を通して、社会で必要とされている”もの”の誰もが使える3Dデータの重要性を学びました。緊急事態宣言が解除された今、コロナ対策のグッズのニーズが変化してきています。学校では、対面の授業や面談を行うために、ついたてのようなシールドが必要になりました。また感染が広がるにつれ家庭内感染を予防する必要性が出てきました。市販のついたて式のアクリル板のシールドは高価で多くの数が必要な学校や家庭用には向いていません。このプロジェクトは学校現場や家庭でのニーズに答える形で進めたため様々なバリエーションが生まれ進化しました。

Materials

    Tools

      Blueprints

        Making

        • 対面で授業を行う時、フェイスシールドを使って授業を行う方法がとられていたが、現実はフェイスシールドが曇ってしまったり、蒸れて集中力が長時間持たなくなることが多く、良い方法ではなかった。そこで考えられたのが、ついたて式のシールドだ。まず考えたのは両サイドに2本の棒を立て、そこにラップを巻く方法だったがラップのしわで反対側がよく見えず実用的ではない。そこで、フェイスシールド作成時にシールドの部分の材料候補だった再生PETに白羽の矢が立った。この素材は棒に貼り付けることでシールドとして使うことができたが、片付け、移動などの面を考え3Dプリンタでスタンドを作ることにした。

            • 材料の消費を考えて、三角形を選択した。
              シールドと水平面との筋交いとしての働きをもたせるため、また、強度と安定性を考え、スタンドの底辺の角度を45°とした。
              幅25mmと設定したのは、シールドがない状態でも自立できるようにするためである。
              問題点
              1.隙間が広かったためシールドを差し込んでも斜めになってしまった。
              2.充填率10%としたため強度は出たが、時間がかかった。
              3.縦方向に積層したため時間がかかった。
            • 試作1号の以下の問題点を改善したものである。
              1.シールドを差し込む隙間の幅を狭くしたので、シールドにフィットして安定性が増した。
              2.充填率は10%のまま材料の節約とデザイン性を考慮し筋交い機能を曲線とした。
              3.隙間を作ったのでプリントアウトの時間は減った
              新たな問題点
              1.縦方向に積層したため材料のほつれ、特に先端部分に発生しやすかった。
              2.デザイン性は増したが、デザイン的に先端部分が痛みやすい形状になってしまった。
            • 3Dプリンターの可能性を追求するため、遊び心を持ったデザインも試作した。
              工夫したところ
              1.底面に立たせる形で文字をプリントアウトした。
              2.文字の隙間を直線的にすることでシールド安定して立つようにした。
              問題点
              1.サポート材があちこちに入っているので、取り除く作業が大変だった。
              2.A3のシールドで試用した時には、耐久性に問題はなかったが、大きなアクリル板を使用した際に”中”の下の部分と”原”の払いの部分が割れてしまった。
              わかったこと
              デザインに工夫を施す場合には、耐久性に問題が発生しないように基本のデザインを規格化する必要がある。
            • 強度を保ち、かつフィラメントを節約するためのデザインを考案した。
              基本の直角二等辺三角形のデザインに加え、三角形のトラス構造を用いた。
              プリントアウトは縦方向に積み上げたので底面がはがれやすいという欠点が見つかった。
            • 理科室での使用イメージ
              サランラップのものよりも透明性が高く、お互いの表情をうかがえる。
              サランラップを万力にとりつけたものは、移動が難しいが、このシールド立てならプラスチック板または、アクリル板を抜き取ることで簡単に取り外せるので、実験を行うことができるようになった。
              実験のまとめの時などの話し合い時にはまた、シールドを立てることができる。。
              透明板は、折りたたんで机の下に収納可能なので実験時にも足元の邪魔にならない。

              市販のアクリル板のシールドは、重く脚部が固定されているので収納には不向きであるのでこの手軽さがよい。
            • 家庭での使用イメージ
              理科室のシールド立てを見た方から、高齢の家族と一緒に食事をするときのために使用したいと、作成依頼があった。実際の使用イメージを送っていただいた。座卓に向かい合わせに座ると、安心してお互いの食事を挟んで会話ができる距離になるのがわかる。高齢者は耳が聞こえにくくなることもあるのである程度の距離(近距離)をシールドによって保つことも可能になる。シールドの高さはA3のハードケースの高さで十分だったそうなので、安価で機能的なシールドと利用できる。その後、小さなお子さんのいる家庭からも依頼があった。

          • シールド立ての隙間の両側に穴をあけた。支持する高さを保つために菜箸や、ストローを立てるためのものである。写真は、クリアファイルの表紙にに使うような100円均一で売っているプラスチック素材(サイズは四つ切)である。縦方向に直立させようとするとたわんでしまうが、菜箸やストローを立てることでまっすぐに立つようになった。この機能は、薄めのアクリル板でも機能を発揮する。
            シールドを立たせるためには、厚いアクリル板を使うことが望ましいが、厚みがでると重く、シールドの向こうの人の声の大きさによっては聞こえにくくなってしまう。
            薄めのシールド材がうまく立たない時の補助として機能する。
            • シールドが垂直方向に高さを持たせたいとき、柔らかい素材や厚みの薄い素材ではたわんでしまうことがあった。シールド立てに穴をあけて強度の強い支持棒をたてることも一つの案であったが、蛇腹にヒントを得てシールド面のたわみが気にならない程度に、シールド立てをハの字に設置することでシールドがうまく立ち上がることに気づいた。
            • 横方向に積み上げことによりフィラメントの繊維方向による強度を増し、プリントアウトの最中に倒れるなどのトラブルが少なくなった。これにより生産効率を上げることができた。また、製作時間が大幅に短縮できた。使用してみてわかったことだが、洗濯ばさみ状に使用できるためシールドの厚みが隙間とピッタリでなくても使えるという汎用性が生まれた。
            • シールド立てをご家庭用に作り始めたところ、「デザインは好きなものにできますか?」という問い合わせがあった。そこで一定の強度を保ちつつ、デザインを表面にプリントアウトする形を考案した。直角二等辺三角形のデザインでは、装飾できる面積が少なくなってしまうため半楕円の基本形に装飾をする基本パターンを考案した。上記の写真は、剣道愛好家からのオーダー。北条家の家紋のオーダー(このデザインは三角形のままできた)。シールドはうっとうしいものだが、安心して距離を保つための手段としてお気に入りのものとして使ってもらえればと考える。
            • 試作4号の底辺部分をなくし、横方向に積みあげ、面取りをした。サイズの大きなシールドに対応するために穴をあけストローなどの支持棒を差し込める仕様にした。1.5㎜の厚みの550㎜×650㎜のアクリル板を立てることができた。スタンドの標準モデルが完成。アクリル板の透明度が高いため、面談用にも使用したいという要望があったため増産。使用中に扇風機の風にあおられて移動してしまうという状況も発生することがわかったため、スタンドの底面部に滑り止めを貼り付けることにした。
            • 安価で手軽に使えるシールドとしてスタンドが使えることがわかった。家庭内での仕様なのでA3またはB2(四つ切)程度の大きさのシールドを使用することを想定している。
              「家庭にいてあまり人と交流のない父と、毎日同じ食卓を囲むことに不安がありましたが、スタンドのおかげで会話をしながら食事をすることができるようになりました。ミツウロコのデザインも素敵です。」
              「子供と一緒に食事をするときに、シールドを立てるようにしましたがデザイン付きのスタンドなので子供たちのお気に入りです。」
              思わぬ依頼を受けたことから始まった家庭用のシールドスタンド作りだったが家庭内での安心要素につながっているものが作れてよかった。
            • アクリル板の縦方向が65㎝で、机の天板が75㎝のため理化学研究所のスーパーコンピューターの富岳の計算結果による床上から140㎝※1という飛沫防止シールドとしての機能を満たすと考えた。アクリル板は高価だが、板状のものを購入することでコストが半分ほどに抑えられる。また、スタンド部分を取り外すことができるので使用しない時には、アクリル板を重ねて収納することができる。このため、収納スペースの問題や、収納時にアクリル板がゆがむなどの問題も最小限に抑えることがでて便利であるとユーザーからの感想をいただいた。
              ※1室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策,2020.6 理化学研究所/神戸大学 坪倉誠
            • ここまでのプロジェクトでは、ユーザーの要望にこたえる形で製品を作ってきたが、フェイスシールドのDoyo-fastモデルのような誰もが簡単に制作できるようなシールド立てベーシックモデルを考案してゆくことである。そのためのポイントは以下のとおりである。
              1.プリントアウトの時間の節約をするための形状の考案
              2.材料の節約と強度のベストなバランスのためのデザインの考案
              3.シールドの厚みの違いに対応したモデルを作成し提供すること


          • このプロジェクトは、現場のニーズにこたえる形で進行した。作成の要望に対し改良を重ねてモデルが完成した。ユーザーの要望をメイカーがすぐに反映できることも3Dプリンタの良さであったが、ユーザーの要望をモデルに反映させるためにCADの技術も向上した。また、たくさん作成したことでプリントアウトの時間や材料の使用量、強度とのバランスも考えることができるようになり3Dプリンタの特性を理解しメンテナンス技術も磨くことができた。必要とされる場所に必要とするものを提供することはメイカーとして貴重な体験ができたと思う。今後もユーザーのニーズに応じたものづくりができるように技術を磨いていきたい。
            • このプロジェクトは、市内の中学校の先生からの要望とご意見を基に進みました。
              貴重な機会を与えていただいた。イメージやアイデアをくださったり、生徒の安全を最優先に考え、高価なアクリル板の購入を提案いただいた学校の先生に感謝いたします。また、使用状況の写真を提供していただいたユーザーの皆様ありがとうございました。
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              References

                Usages

                • 使用法は簡単!差し込むだけ

                  使用方法
                  ①シールド(アクリル板)にシールド立てを差し込む。
                  ②シールドがたわむ素材の場合φ6㎜の棒2本を穴に差し込む。
                  ③風に対応する必要がある場合は底面に滑り止めのジェルを貼り付ける。
                  ※ 工作用紙などの厚紙を差し込んで使用すると、目隠しシールドになる。
                    また、使い捨てシールドとしても使用できるので消毒の手間が省ける。
                  ④収納時は、シールド立てをはずし、シールド(アクリル板)平面を保つことのできる場所に収納する。

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